日記『ナラタージュ』より 二〇〇七年 五月一二日
日記を書こうと思ったのは、僕の心境が変わったからだろうか。
まだ一六歳だが、それまでの僕は惰性のままに生きてきたと思う。
中学を卒業して、高校に入学して、と周りの多くの人が歩む道と同じ道を歩いている、ただそれだけなのだ。
一日一日に意味を見いだせていない。
いや、意味を見いだせている人の方が少ないのかもしれない。
それでも僕は意味を見出さなければならないのだと思う。
必要不可欠だとは思わないが、そうすることで僕の願いを叶えたいんだ。
この――『叶えたい』という意識がいつの頃からか、僕の中ではっきりとしてきた。
そのように、心境が変わったのはやっぱり、
『自分の行く先』
が分かったからだろう。
今でも分からなければ、知らなければ良かったと思う時がある。
知らずに、その時を迎えられたらと何度も思った。
けれど教えてくれたのは、それを二人が望んでいなかったからなのだろう。
時々そう考えるようになった。
そのことについて僕はまだ何も感謝の気持ちを伝えられていない。
口下手な僕は面と向かって、はっきりと言えるかが分からないのだ。
昔からそうだ。
大切な想いを伝えることが、苦手だった。
それは恐らくこれからも変わらないだろう。
後になって後悔するのではなく、僕はそのことを今後悔しているのかもしれない。矛盾だが、それに間違いはないような気がした。
これが、僕がこの日記を書き始めた理由の一つでもある。
その時伝えられなかった想いを、後から見てもらえるように――。
これを読んでいる人には、僕が小心者に映るだろう。
それはそれで構わない。事実そうなのだから。想いを伝えることを、こうして日記に頼っている時点で、そうだろう。
それでも伝わることを願って。
これは僕の――読み返す物語。
これからの日々が、良い日でありますように――。
二〇〇七年 五月一二日