間話(1) ~ ウェルカム・パーティ!
番外的で、短めです。
「それで、草がしゅるーっと伸びてきたところを、ミコトの魔法がぶああっと片付けちまって!」
「い、イーエンくん、あれ全然、私、制御できてなかったし……あ、あんまり話さないでってばあ」
食堂に近い場所にある、グループ単位で使用するのが主な大部屋。いくつかこのギルド支部に設置されているこの大部屋は、基本的にはお堅い目的で使われることが多いのだが、今宵『白刃』が借り受けたその用途は……歓迎パーティ。
とりあえず今いるメンバーをかき集め、事前に食堂に注文をしていたりと準備を整えたおかげで、大きな円卓と椅子ぐらいしかない殺風景な大部屋は、あっという間に和やかな雰囲気に包まれた。
『白刃』に所属するメンバーはそこそこにいるらしく、マコト達がすでに会っていたランギス、カミン、ブルブや今回所属する流れとなったティアゴ以外にも、六名ほどの人間が集まっていた。本当はあと二人いるそうなのだが、他のグループの人間と共に長期依頼に向かっているため、招集をかけられなかったとのこと。
「おいマコトー、お前何はしっこで黙々と食ってんだよ」
「んむ、お腹空いた」
「……いやいや、お前だって初めて会う奴らばっかりじゃねーの? 俺はうろちょろしてたから、ちょいちょい会ったことある奴らだけどよ。ほれ、挨拶ぐらいしてこい。先輩なんだからな」
「…………わかった」
ティアゴに追い立てられたマコトは酷く渋々といった様子で、椅子から立ち上がるとフラフラと人の輪に近づいていった。それに気づいた一人の青年が、声をかけてくる。
「やあ、君がマコト?」
「そう」
「初めまして、俺はフォートラン=バドリオ。『デルの2』で剣士なんだ。よろしくね」
「こっちこそ、よろしく先輩」
そうだよなー、先輩なんだよなーと先ほどのティアゴの言葉を思い出しながらマコトはにゅっと右手を突き出す。と、突然目の前でフォートランが崩れ落ちた。
「お、おい?」
これにはさしものマコトも少々驚かされ、思わずどもってしまう。
すると、床に伏したフォートランは次の瞬間がばりと起き上がり、しっかとマコトの手を握り返した。わざわざ両手で、顔面をぐしゃぐしゃにして。
「わ、わああああこっちこそホントよろしくよろしくよろしくねぇええええっ!!! せ、せんぱ、ぜんぱいなんで俺が言われる日がくるなんてぇええええ!!!」
「ちょ、落ち着け」
とりあえず、一発側頭部を平手打ちしておいた。本当はグーでやりたかったが、これでも我慢したのである。
また別の理由で床にうずくまったフォートランを見下ろしていたマコトは、ふらふらーっと見慣れた影が近づいてくるのを見て首をかしげる。
「カミン?」
「うっふっふー、なーんか下僕一号の幸せーな声が聞こえてきちゃったわよぉー?」
「誰が下僕かっ!!!」
とっさに回避行動をとったフォートランだったが、しかし魔導士であるカミンのほうが何故か動作が速かった。起き上がろうとしたフォートランの後頭部につま先で蹴りを放ち、悶絶した彼の背中にその足をどっかと乗せる。
「ほーっほっほっほ!!!」
「カミンどうした乱心か!? って酒クセェっ!? なんだこの酒乱!!!」
「う゛あああああああもうやだああああああ!!!」
酒瓶片手に赤い顔で高笑いをするカミンに、泣き叫びながらも彼女の足の下から逃れられないフォートランの図にドン引きしたマコトは、ツッコミもほどほどにそこから退散した。
「ああ、一体誰でしょう、あの人にあんな度数の高いお酒を飲ませるなんて」
「自分だが」
「何やってんですかお馬鹿ですかあなたは!」
退散した先には、酒乱カミンを見て何やら小声で言い争いをしている男女がいた。彼らは近づいてきたマコトの姿を認めると、口論を止めて彼女に向き合う。
「こんばんは、マコトさん。私はレイチェル=メルホルン。『ソロンの3』の神官ですわ。主にデスクワークをしていますの」
「自分はエウゲン=ポーラス。弓士で『ソロンの2』だ。ちなみに、君はあれの被害をほとんど受けずに済んだようだな」
あれ、とエウゲンが指さす先には、酒乱の光景。
「……ボーッと見てたら絡まれるってことですか」
「その通り、第一犠牲者になることを免れたなら、さっさと離脱するのが賢い。というわけで君は合格だ。まあ、フォートランが近くにいれば大体アイツに絡むからな。幸運だったな」
「全くもう、ほとんど確信犯ですわねコイツ……」
もしもし丁寧言葉のメッキが剥がれかけていますよ、とはなかなか言えないマコトだった。
「あ、お姉ちゃん!」
そこへ、イーエン達と会話をしていたはずのミコトが飛込んでくる。
「おっと、どーした」
「あのね、お姉ちゃんも頑張ったところ話したらすごいなーってみんな褒めてくれたよ!」
「なんて言ったんだお前」
苦々しい表情を浮かべたマコトの腕をとって、ミコトはずんずんと自分がいた集団へと戻っていく。その間にも、彼女のマシンガントークが止む気配はない。
料理と酒と喧騒に囲まれて、さしものマコトも、ようやく心からの笑みを浮かべたのだった。
メンバーがいっぱい出てきましたが、今記憶しなくても全く問題ありません。とりあえずフォートランは不憫という項目だけでいい気がします(オイ
次話は少し時間の流れをはやめて、次なるクエストにとりかかろうと思います。
そして、転換期です。
※ ここにて『現代っ子パーティ・クエスト!』のプロットおよびストックが完全に消えました! よって、ここからはまたストックが溜まるまでか、あんまりにも更新停止が長い場合は不定期更新となりそうです;
それでは皆様、しばしお待ちを。