魔王を滅ぼした魔法
昨日の作品『最強の魔法のその結末』のほんのり続きとなっています。
併せてお読みいただくと楽しめるかもしれません。
勇者だと呼ばれて生きてきた。
事実、自分の力には自信があった。
魔王軍の強者と称される者達と戦ってきたし、その全てに勝利してきた。
だから、勘違いしていた。
世界を救うことが使命だと。
「致命的な勘違いをしていたな」
その結末がこれだ。
「世界征服はその気になれば俺一人で出来る」
圧倒的な力の差に傷一つつけられない。
私に出来るのは最早、睨見つけることだけ。
「手がないのならもう終わりにしよう」
迫る死。
確実な結末。
最中、ふと思い出したのは。
とある、場所で見つけた人間と魔族が共同で作った魔法。
手を取り合うようにして骨となった二人の傍らにある魔法が浮かび、私は最後の力を用いて詠唱する。
首に刃がかかる。
しかし、詠唱は間に合っ……。
*
首と体が離れた勇者の遺骸を見つめ、魔王は呆然とする。
最期の最期に唱えられた魔法の正体を魔王は知らなかった。
ただ、ただ、その効果だけを実感するばかりだった。
「なんだ……この感情は……」
遺骸を見つめ、魔王は泣き続けるばかりだった。
*
勇者との戦いで魔王は相打ちになったと後世は伝える。
それはおそらく正しいのだろう。
しかし、その詳細までは伝わっていない。
世界が秘匿した魔王が滅びた真実。
援軍に来た勇者の仲間が発見した光景。
勇者の遺骸を抱きしめ続ける魔王の姿。
最早、戦う意思も、抵抗する意思も、それどころか生きる意思さえ奪われた魔王はその後10日ほど勇者の遺骸を抱きしめ続けた後に死んだ。
衰弱死である。
勇者の放った最後の魔法。
それが『誰かを強く愛する魔法』であったのを知る者は今やこの世に居ない。
お読みいただきありがとうございました。
元々『最強の魔法のその結末』のオチとして採用するエピソードでしたが、掌編としては長すぎる気がしましたので別の話として書いてみました。




