第八話 仲良し?
停車したバスから、白髪の少女が逃げるように降り、それを追いかけるように、もう一人の少女が降りてきた。
「ハハハ・・・仲が良いねぇ。」
初老の運転手は優しい笑顔で二人を見送り、昇降口のドアを閉めてバスを発車させた。
「ちょっと待て!お主は何を考えておるのだ?!乗り物の中で、ずっと引っ付いたままではないか。」
「ぇー。逃げ無くてもいいじゃない。それに・・・減るもんじゃないし・・・。」
白夜は夕紀と少し距離をとって、歩いてた。
「ずっと、ニヤけた顔して引っ付いてたら気持ち悪かろう!」
「そんなに・・・ニヤけてた?」
「うむ・・・不気味なほどにな・・・。」
夕紀は突然足を止め、泣き始めた。
「ひどいよぉ・・・何もそこまで言わなくても・・・。」
「ぬ?す、すまん・・・言い過ぎたか?」
白夜が慌てて駆け寄ってきた時、夕紀はすかさず白夜の腕を掴んだ。
「へっへー・・・・つ~かまえた!」
「お、お主・・・騙したな!」
夕紀は舌を出して白夜にウィンクをした。白夜は諦めたのか、ため息をついて肩を落とした。
「さーて!家まで帰ろうか!」
「はいはい・・・まったく・・・。」
上機嫌な夕紀の横顔を見て、白夜はヤレヤレっと言った感じで微笑んでいた。
二人は仲良く帰宅した。玄関の戸を開け、荷物を下ろして靴を脱いだ。
白夜はすぐさま荷物を持って台所の方に向かったが、夕紀は靴を脱いで腰掛けたまま、
「あぁ・・・・疲れたぁ!」
と、一言もらしてからその場で寝転がった。なかなか来ない夕紀を心配して、白夜が台所から顔を出した。
寝転がってる夕紀の姿を見て、白夜が近づいてきた。
「ふぅ・・・お主、そんな処で寝転がってたら服が汚れるぞ?」
腰に手を置き、あきれ顔で見下ろしてる白夜を見上げて夕紀は、
「あっ・・・パンツ見えてる。」
「な?!ば、馬鹿者!何を言ってるのだ!いいから手伝え!」
そう言って、赤面し慌てて白夜は夕紀から離れた。
「はいはーい。」
夕紀はゆっくりと起き上がって、先に台所へ向かう白夜の後を追った。
二人で手分けして、今回使用する『肉じゃが』の材料だけ机の上に並べて残りを冷蔵庫の中へと分けた。
「さて、この服のままでは調理も出来ないから・・・着替えるかな。」
白夜がそう言って、夕紀の方を向くと
「先生!お風呂に入りたいです!」
夕紀は手を挙げて白夜に言った。
「ふむ・・そうだな。汗もかいただろうし・・・先に風呂にするか。」
「じゃぁ・・・準備してくるね」
夕紀は風呂場に向かい、その間、白夜は麦わら帽子を玄関の帽子かけにかけて、台所に戻り野菜を洗っていた。
準備が出来た夕紀が、風呂場から戻ってきて、
「準備出来たよ~。一緒に入ろうか?白夜。」
「な、何言ってるのだ?お主は?」
唐突な夕紀の質問に、白夜は驚いた。
「大体…昨日は恥ずかしがってたではないか。お主。」
慌てる白夜に、夕紀はゆっくり近づいて
「昨日は昨日!今日は、女の子同士だから大丈夫!おねぇちゃんが洗ってあげる!」
と、訳のわからない事を口走って、白夜を捕まえたまま脱衣所へ向かった。
「わ、わかったから・・・離さんか。服ぐらい一人で脱げれる。」
半分諦めてる白夜だが、その横でどんどん服を脱いでいく夕紀が居た。
「さぁ!はやく入ろうか。」
「お主は、何をそんなにうれしそうにしてるのだ?」
「んー・・・普段一人だったから・・・新しい家族が出来て嬉しいからかな!」
「・・家族か・・・。」
一人でいる寂しさの反動だろうか・・・夕紀はうれしさは、白夜にも少し理解できた。
そして、白夜を家族として向かい入れてくれた夕紀に心地よささえ感じ始めていた。
この日の風呂場は、悲鳴や笑い声で賑やかだった。