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第八十二話  音合わせ


  演奏がが丁度終わった時に、扉が開いて千歳が帰って来た。


「あら?もう白夜ちゃんは、歌ったの?」


残念そうに入ってきた千歳に、気づいた皆が首を振って答えた。


「おかえり。まだ、コレから合わせるところよ。丁度いいから、千歳も準備して。」

「そうなの?間に合って良かった・・・。ちょっと準備してくるわね。」

「あっ!ねぇ、千歳。中村さんは?」


夕紀の急な質問に千歳は足を止めると、振り向かずに


「今、お仕置き中よ。うふふふ・・・。」

「そ、そうなの。は、早くはじめよっか?」

「そうね。」


どうやら、相当千歳は怒っていたようで、詳しい内容は怖くて聞けなかった。

気を取り直して千歳を加え、練習を再開した。


「じゃぁ、本番と思って気合い入れて弾くよ!」

『オー!!』


ヒロミのかけ声に皆は拳を高くかかげて呼応した。

レンがカウントを取り演奏が始まった。それに合わせて白夜が歌い始めた。

曲とリンクする様な白夜の歌声はそれ自体が楽器のように鳴り響き、近くを通った使用人達は足を止めて仕事を忘れて、流れてくる演奏を聞き入っていた。


演奏もクライマックスになるにつれて、使用人の中にはリズムを取っている者もいた。 演奏が終わり一息を付いた時、周りから盛大な拍手が送られ、夕紀達はあまりの歓声に驚いた。


千歳は頬を赤らめながら咳払いをすると、それに気づいた使用人達は慌てて持ち場に戻った。 そして、頬を赤らめたまま千歳はみんなに謝った。


「ごめんなさい。普段はこんなコトは無いんだけど、恥ずかしいところを見せちゃったわね。」

「あはは。ちょっとビックリはしたけど、謝るほどでもないわよ。」

「夕紀の言う通り。喜んでくれたってコトは、大成功ってことじゃない。」

「そう?よかった。」


千歳は、安堵で胸をなで下ろした。


「それにしても、初めて、合わせたのに流石は白夜ちゃんね。良い声してるわ。」

「そ、そうかのぉ?」


褒めるヒロミに白夜はまんざらでもない様子で照れていた。


「でも、欲を言えば・・・もう少し低めで歌ってくれると嬉しいんだけど・・・。」

「ん?そうか?・・・あー、あー。うむ。わかった。やってみる。」

「OK。じゃぁ、もう一度合わせようか?」

「は~い。」


ヒロミの号令と共に練習が再開された。

・・・時が進み、いつの間にか外も暗くなってきていた。


「ねぇ。今何時?」

「ちょっと待って。」


時間を聞く夕紀にヒロミはポケットから携帯電話を取りだして時間を見た。


「うはっ、もう六時過ぎてる。この部屋、時計無いから全然気付かなかったや。」

「そうね。もう暗くなってきてるし、送ってあげるわ。」

「大丈夫だよ。歩いて帰るよ。」

「ダメ!襲われたりしたらどうするの!」

「あははは。私を襲う人なんて居ないわよ。それに、コンビニにも寄ってから帰ろうと思うし。」


心配する千歳に、 あっけらかんとヒロミは笑い飛ばした。


「じゃぁ、私は歩いて帰るけど、あんた達は千歳に送って貰うんだよ。」

「え?僕も?僕は、一応男だから大丈夫だと思うけど・・・。」

「あなた本気で言ってるの?ちゃんと鏡見た方がいいわよ?下手な女の子より、よっぽど女の子らしいわよ?」


ヒロミの言葉で激しく落ち込むレンは、置いて話を続けた。


「白夜ちゃんみたいな小さい子を夜道に歩かせるなんて物騒だわ。ちゃんと護ってあげなさいよ。夕紀。」

「そりゃぁ、言われなくてもわかってるわよ。」


夕紀はそう言って白夜に抱きつき、顔を擦りつけた。

嫌そう何している白夜を見て、苦笑いを浮かべた千歳はヒロミを見て、心配そうな顔で再度確認した。


「本当に大丈夫?」

「へーきへーき。それに、夜道を歩いてると、たまに良い詩が浮かぶのよ。」

「でも、あなたの家だってここから遠いでしょ?あなただって女の子なんだから、用心しなさいよ。」

「大丈夫だって!いざとなったら走って逃げるから。足には自信あるんだし。」

「そう?・・・わかったわ。門まで送るから、みんなで行きましょう。」

「了解♪」

「じゃぁ、みんな。片付けしたら移動しましょう。」

「は~い。」


歩いて帰りたがるヒロミに妥協した千歳は、タメ息を漏らして片付けを指示して皆はそれに従った。

片付けが終わり、千歳が最後の点検をすると門まで皆を先導した。

門前で待機していた車に白夜達が乗り込み、車に乗る前に千歳がヒロミにもう一度確認を取った。


「本当に良いのね?」

「もぅ。しつこいなぁ。本当に大丈夫だって!」

「何度でも言うわよ。大事な人なんだから心配もするわよ。」

「ハハハ。まさか此処で愛の告白が来るなんて。」

「茶化さないの!はぁ・・・じゃぁ、行くけど・・・気を付けて帰るのよ。」

「わかってる!じゃぁね。」


真剣な表情で心配する千歳に対して、照れ隠しに茶化したヒロミは手を振りながら逃げるように、その場を去っていった。


「何も逃げること無いじゃない。」

「ハハハ。照れてるんだよ。ヒロミも可愛いなぁ。」

「ね。だから心配なのよ。自分で思ってないだけで、本人自信は可愛いのにね。何事も無かったら良いんだけど・・・。」

「まっ、心配ないでしょ。私達よりしっかりしてるし。」

「そうね。少なくとも、夕紀よりは大丈夫ね。」

「なんだと?!」


千歳の言葉にくってかかる夕紀に、他の二人は笑いを殺していた。



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