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第八十話  練習


千歳に連れられ屋敷内を全員で移動していた。その中、夕紀を除けた他のメンバーはもの珍しそうにキョロキョロと周りを見ていた。


「ふわぁ~・・・実際お金持ちの家に入ってみると、想像以上にすごいなぁ。」

「本当、ドラマかアニメでしか見た事無いけど、やっぱすごいね。」


ヒロミとレンの会話に白夜は頷きながら興味津々で屋敷内の装飾品を見ていた。


「ここよ。みんな入って。」


千歳が足を止めて豪華な両開きのドアを開けると、映画とかで見た事のあるグランドピアノが中央に一つだけ置いてある大きな部屋だった。


「ちょ!なに?!この無駄に豪華なスペースの部屋は?!」

「でも、音量を気にせずに使えるから練習には最適な環境よ。」

「ふーむ・・・じゃぁ、準備しようか。あ、ドラムはどうしようか?重い物だから簡単に持ち運べないからなぁ。」

「そう言うと思って、あらかじめ用意していたわ。」


千歳が手を叩くと、使用人が現れてドラムを組み立て始めた。


「うわ!本当に手を叩いたら出てきた!アニメみたい!何処でスタンバッてたの?!」


夕紀は使用人が出てきた場所を見渡しながら尋ねた。


「わかってないわね。夕紀。それを明かさないから夢があるんじゃない。」

「確かに・・・。」

「え?納得するの?!」


夕紀と千歳の会話に思わずレンがツッコミを入れた。


「さて、準備も出来たし練習しましょうか?」


そう言って千歳が仕切っていると、ドアをノックする音が聞こえた。


「失礼します。お嬢様。中村でございます。」


中村さんがドアを開けて入ってきた。


「あら?中村。丁度良いわ。みんなはちょっと練習してて。・・・中村、こっちへ。」

「はい。かしこまりました。お嬢様。」


千歳は中村を手招きすると、その後から中村が付いていき部屋を出て行った。

それを見ていたヒロミが呟いた。


「二人の会話が気になるなぁ。」

「ん~・・・私は、何となく想像出来るなぁ。」

「へ~。どんな感じで?」

「ん~とね・・・。中村さんの生死に関わる・・・かな。」

「え?そんなに重い話なの?」

「あははは。あくまで想像だよ。想像。」

「そ、そうだよね。そこまで重い話じゃないよね。」

「そうそう。あっ。そうだ。ヒロミ。白夜に歌詞を渡して上げて。」

「あっ。OK。ちょっと待って。」


ギターの音量調整をしていたヒロミは、持って来た自分のカバンを漁り歌詞を渡した。


「はい。なくさないでね。」

「うむ・・・。コレはお主が書いたのか?」

「そうよ。」

「・・・ワシに歌えるかな?」

「大丈夫。曲に合わせてコレから歌うんだから、練習していけば歌えるようになるよ。・・・そうだ。出来るだけ大人っぽい声で歌ってみてね。」

「大人っぽく・・・か。」

「振り付けの方はどうする?」


少し難しい顔をする白夜に夕紀が近づいて、白夜が持ってる歌詞を見ながらヒロミに尋ねた。

ヒロミは少し考えたが、首を横に振って


「そりゃぁ、振り付けがある方がいいけど・・・。今は歌うことだけ集中したらいいし、無理に振り付けを入れる必要はないわ。」

「ん~・・・そうだね。あっ。じゃぁ、千歳が居ないけど曲だけ流してみる?それに合わせて、歌詞を見ながらでいいから白夜も軽く口ずさんで。」

「そうね。一度、流しで弾いてみようか。・・・じゃぁ、レン君。合図お願い。」

「うん。わかった。」


レンはスティックを鳴らしてカウントを取った。

演奏が始まると、その迫力に白夜は身体をビクッとさせ驚き、歌うことを忘れていた。

歌わずにただ聞き入り、格好良く演奏が終わると白夜は感動して拍手を送った。


「すごいな!!感動したぞ!」


白夜の歓声に少し照れる三人だったが、夕紀が白夜に肝心なことを聞いた。


「そ、それより。歌えた?」

「あっ・・・思わず聞き入ってて、歌い忘れてた・・・。す、すまん。」

「可愛いから許す!」


謝る白夜を快く許す夕紀に、他のメンバーは苦笑いをした。

ふと、楽譜を見てアッという表情を浮かべて白夜がヒロミに尋ねてきた。


「そうだ。演奏を聴いてて思ったのだが、歌い始めを教えてくれないか?」

「ん~・・・確かにそうか。わかったわ。見本で歌うから聞いてて。」

「いぇ~い!じっくり聞こうかなぁ。」

「別にあんたに歌う訳じゃないんだから、練習もかねて演奏しなさいよ!」

「チェッ!ケチ!」


チャチャを入れる夕紀にヒロミが怒りながらもレンに合図を送り、再び演奏を始めた。



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