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第七十九話  移動


「ねぇねぇ。何の話をしてたの?」


笑い転げてるヒロミの珍しい姿と正反対で、かなり落ち込んでるレンの姿を見て夕紀と千歳はこの展開の真相に興味を持っていた。


「ん~・・・別に大した話じゃないけど、あなた達が校内一有名なバンドグループって話をしてただけよ。」

「え?それだけで、こんなに落差あるの?確かに、生徒会長がバンドするから有名になってるのはわかるけど・・・。」


ヒロミと同じ様な事を言う夕紀に、苦笑いするともう一度面倒なのでマキは話題を変えた。


「それはそうと、その子のサイズ計ってきたんでしょ?渡してくれる?」

「あっ。そうだった。千歳、白夜のサイズを書いた紙は?」

「ちょっと、待って・・・はい。正確に記入したから間違いないわ。」

「ありがと。コレで全員分ね。」


マキの言葉に千歳は疑問を抱いた。


「あれ?私、まだ計ったのを渡してなかったわよね?」

「あっ。僕も渡してないはずだよ。」


千歳が言った後で、レンも手を挙げて尋ねた。


「あぁ~。うん。二人のサイズは貰ったから問題ないよ。」

「え?・・・今・・・なんて?誰から貰ったの?」


その一言で千歳の表情が一瞬で曇っり、マキに詰め寄った。


「え、あ、え~と・・・千歳の執事の人に貰ったんだけど・・・。」

「・・・そう、わかったわ。じゃぁ、今日は私の屋敷で練習しません?」

「え?なんで?」

「今日は見学の生徒も多いし、集中して練習したいでしょ?」

「あっ・・・うん、まぁそうだけど・・・。」

「じゃぁ、決まり!早速移動しましょう。」


千歳はさっきまで曇っていた表情から一転して満面の笑みを浮かべていた。

取りあえず千歳は車を呼び、全員教室を出て移動した。その時、再び野次馬が戻ってきていた。

千歳は大きくタメ息を漏らすと腰に手を当てて微笑みながら、


「あなた達。いい加減にしなさい。」


と、注意すると・・・千歳からは普段感じない静かな威圧に野次馬は逃げるように去って行った。

普段感じな千歳の雰囲気を感じ取った夕紀は、千歳の肩を叩いて尋ねた。


「千歳。怒ってる?」

「え?なにが?私は何時も通りよ。」

「嘘言わない。あなたとの付き合い長いのよ。」


夕紀に言われて、千歳が微笑んだ。・・・その微笑みはいつもの千歳の顔だった。


「本当に大丈夫よ。さっ、行きましょう。」


そのやり取りの後、白夜が夕紀に近づいた。


「よくわかったな。」

「まぁね。付き合い長いし。」

「それにしても、珍しいな。千歳が怒るなんて。」

「そんなこと無いわよ。・・・まぁ、いつも怒らせてるのは中村さんだけどね。」


そう言って、夕紀は笑った。

校門まで移動して、


「じゃぁ、私は此処で帰るけど。千歳。」

「何?」

「上質な生地をお願いね。良い物作りたいから。」

「何言ってるの。そんなに予算は下りないわよ。」

「えぇ?!そこを何とか!こ、この子の衣装を可愛く作るからさ。」


マキは白夜の両肩に手を置いてから頼むと、千歳は頬を赤らめて咳払いをすると、


「し、仕方ないわね。何とかしてみるわ。」

「やった!じゃぁ、頼んだわよ。ありがとう。白夜ちゃん。あなたのおかげで良い素材が手に入りそうよ。衣装期待して待っててね。」


マキは皆と別れ、鼻歌を歌い軽い足取りで帰って行った。


「まったく、あの子はこうコトには賢いから困るわ。」

「まぁまぁ、良いじゃない。良い衣装に期待しましょ。」


楽観的な夕紀の答えに千歳も笑いながら、


「そうね。楽しみに待つとしましょうか。」


やがて、校門に中村が運転する車が到着した。

車内で会話中、中村の問いかけに素っ気なく答える千歳とのやり取りに、ちょっと気まずい雰囲気が流れていたので、それを打開するため夕紀が会話を切り出して屋敷に到着する間、何とか間を持たすことが出来た。


屋敷に到着して、最初に驚きの声を上げたのはレンだった。


「おっきな門だね・・・。家が見えないや。」

「ははは。やっぱり、此処を見た感想はそれかな。」

「だよね~。人が住んでるとは思えないよ。」

「あら?失礼ね。私が住んでるのよ?」

「すなわち。人でないってコト。」

「ほんと!失礼ね。あなたは!」

「いたいいたいたい!ごめんなひゃい。」


夕紀の口をひねる千歳に、痛みのあまり涙を浮かべながら謝った。


「わかればいいのよ。」


千歳はつねる手を放してから、そっぽを向くと夕紀はつねられた頬をさすりながらあっかんべーをして、千歳が振り向くと吹けない口笛で誤魔化しながら夕紀はそっぽを向いた。

屋敷前に到着して、皆が車から降りると千歳は中村に声をかけた。


「中村。車を置いてきたら、少し話があるけどいいかしら?」

「お嬢様が私に?かしこまりました。後ほど伺います。」

「ええ、そうして。」


その会話を聞いていた夕紀はふと、『あれ?なんだか中村さんにフラグ立ってない?』っと頭の中をよぎった。



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