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第七十八話  集合


千歳は会議が終わり夕紀が待つ教室に向かい、廊下を歩いてる途中でヒロミとレンに合流した。


「あら?あなた達も今終わったところなの?」

「そっ。途中でさ、聞いた話なんだけど・・・。小さい女の子が夕紀のところに来てるんだって。」

「ほんと?じゃぁ、急がないと。」

「あっ。ちょっと、待ちなさいよ。千歳!・・・全く、あの子のコトになると周りが見られなくなるんだから。」


話を聞いた千歳は居ても立っても居られず、ヒロミの呼び止めも聞かずにレン達を置いて早足で向かった。

タメ息をつき、ヤレヤレといった表情を浮かべるヒロミに、レンが尋ねた。


「あの子・・・って言ってたけど、知ってる子?」

「あっ・・・うん。まぁね。あ~そうか、レン君は知らないんだよね?・・・まぁ、今回の学祭の隠し球って所かな。」

「へぇ~。どんな子かな?」

「可愛い子よ。それで、歌が物凄く上手いからボーカルになって貰ったの。今日はその練習に来て貰ったんだ。」

「そうなんだ。会うのが楽しみだね。」

「まぁねぇ。・・・さて、私達も千歳の後を追いましょ。」

「うん。」


千歳は待ち合わせの教室まで来たが・・・とても、教室の入り口に近づけないほど生徒達が群がっていた。


「何してるの?あなた達。関係者以外は早く帰りなさい。」

「あっ。やべっ!会長だ。」


千歳の顔を見て生徒達は教室から離れ、まるで蜘蛛の子が散るように去って行った。


「まったく・・・さて、白夜ちゃんは居るかなぁ?」


千歳は戸を開けて中に入ると、夕紀に後ろから押さえられてマキが服をたくし上げようとしている現場に遭遇した。


「な、何しているのあなた達!私も混ぜなさい。」

「ちょ、違うだろ?!助けてくれ!」

「あら?ごめんなさい。あまりにも羨ましい状況だったから・・・それで?二人は何してるの?」

「べ、別にやましい事してる訳じゃ無いわよ。ただ、白夜の衣装を作るためにサイズを測ってただけなんだから・・・ねっ、マキ。」

「そ、そうね。嫌がる顔があまりにも可愛かったから、無理矢理襲ってる訳じゃ無いわよ。」

「本音が漏れてるわよ。まったく、見なさい。白夜ちゃんがすっかり怯えてるじゃない。」


白夜を夕紀達の魔の手から救うと、千歳の後ろに逃げてからしがみついて離れなかった。


「いい加減にしないと、本当に白夜ちゃんが愛想を尽かすわよ?・・・それで私の下に来てくれるなら、大歓迎だけど・・・。」

「あなたも本音が漏れてるじゃない。ほら、おいで白夜。」


差し出す夕紀の手に白夜は千歳の後ろから出てこず、夕紀の方をジト~っと蔑むような目で見ていた。


「あん。そんな目で見られたら・・・興奮しちゃう!」


身悶える夕紀に、白夜は呆れかえっていた。


「さっ。白夜ちゃん。夕紀は放っておいて向こうで、私が計って上げるわ。」

「あっ!ズルイ!あなたも白夜にいやらしいコトするんでしょ!」

「する訳無いでしょ。仮にも生徒を代表してる身なんだから。あなたと一緒にしない。さっ、行きましょ。白夜ちゃん。」

「うむ。」


教室を出ようと千歳が戸に手をかけようとした時に丁度、扉が開きヒロミと鉢合わせた。


「あれ?何処か行くの?」

「えぇ。ちょっと、この子の服を作るから、そのサイズを測りに行こうかと・・・。」

「あっ!君は!!」

「ん?お?お主は確か・・・。」


ヒロミの後ろから顔を覗かしたレンが白夜の顔を見て思わず声を出して驚き、白夜もレンに気がついた。


「あら?あなた達、もう知り合いなの?」


千歳の問いかけに、目が泳いで言葉が見つからないレンに白夜は微笑して、


「あぁ。以前、とある場所で出会ってな。まぁ、少しだけ面識がある。」

「そうなの?とある場所って?」

「それは、秘密だ。」


白夜は唇に人差し指を当てて、尋ねた千歳にウィンクをすると・・・その白夜の愛らしい姿に思わず千歳は抱きしめてしまった。

それを目撃した夕紀が怒った。


「コラー!!ドサクサに紛れて白夜に抱きつくな!!」

「もぅ!良いじゃない。さっ、お邪魔虫がいるから向こう行きましょ。」

「させないわよ!私も着いてく!」

「あなた達。練習は?」

「すぐ終わらせるから、先にしてて。」

「もう。その子が居ると、二人ともダメね。・・・いいわ。早く終わらせなさいよ。」

「はいは~い。」


そう言って、夕紀達三人は教室を出て行った。ヒロミは腰に手を当ててタメ息を漏らすと、机にギターケースを置いて椅子に座った。


「あの子達にとっては、あの子がアイドルなんだ・・・。」


笑いながら呟いたマキに、あきれ顔でヒロミが答えた。


「ホント。こんな調子で大丈夫なのかが心配になるわよ。」

「ホントよねぇ~。今、学校内で注目されてるバンドなのにねぇ~。」

「え?そうなの?なんで?」

「・・・え?本気で言ってるの?あなた達、もっのすごく注目されてるのよ?」


ヒロミの言葉に耳を疑ったマキはタメ息を漏らしてから説明しだした。


「いい?まぁ、千歳はわかると思うけど・・・全生徒からの憧れの的で、才色兼備を備えた上に一之宮財閥のお嬢様・・・非の打ち所がないわね。で、次に夕紀!この子は結構、男子生徒に人気が高くて花丸印の元気娘で隠れファンが多数居るのよ。この二人は学校内でもトップクラスの人気ね。」

「へぇ~。千歳はわかるけど、夕紀がねぇ~・・・意外だわ。それにしても・・・あんたの情報網は凄いわね。」


感心するヒロミにマキは鼻高らかに、胸を張った。横でその話をレンは興味有り気に聞いていた。


「ファッションデザイナーを目指してるんだから、最新の情報にも詳しくなくちゃね。それに、あなた達も自覚は無いだろうけどトップクラスにいるのよ。」

「え?ちょっと待って!レン君はともかく、私は関係無いでしょ?」

「え?何で僕は肯定なの?」


レンのツッコミはあえて無視して二人は話を続けた。


「ヒロミの場合は、下級生の女子に人気があるのよ。」

「え?何で女子なの?」

「そうね・・・主な理由として、『部活動してる時の姿が格好いい』とか、『男子より男らしい』とか・・・。」

「ちょ、ちょっと待って?男子より男らしいって何よ!」

「あははは。イメージが先行してるんだね。きっと・・・。」

「うっさい!・・・じゃぁ、こいつはどうなのよ?」


ヒロミは笑ってるレンに指さしてマキに聞いた。


「ん~、レン君はね。男女問わず、人気急上昇中よ。」

「へぇ。やっぱりね。」

「え?そうかな?全然そんな風には感じないけど・・・。」


ちょっと照れ気味だが嬉しそうだったレンに対して、ちょっとヒロミはムカついた。

マキは特に気にすることもなく話を続けた。


「ちなみに、主な理由が『あんなに可愛い子が女の子の訳がない』とか、『女だろうが男だろうがどっちでもイケる』とか、『お持ち帰りしたい』とか、『人気のないところへ連れ込みたい』とかかな?」

「ちょっと待って!後半、意味合いは似てるけど僕の貞操の危機を感じるのは気のせい!?」

「その時はその時。潔く操を捧げなさい。」


ヒロミは笑いを堪えながら、レンの肩を叩いて親指を立てた。


「人ごとだと思って・・・!」

「あっ、後・・・一部の人達の間では『レンキュン』って名称で呼ばれてる見たいよ。」

「そんな情報知りたくなかった・・・。何、その恥ずかしい呼び名は?!」

「気を落とさないで。レンキュン。」

「その名前で呼ばないでよ!」


目に涙を浮かべながら本当に嫌そうにするレンに、ヒロミは大爆笑していた。


「随分、賑やかそうじゃない。」


そう言って、千歳達が教室に帰ってきた。



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