第七十六話 訪問
「携帯電話と言うヤツは種類が多いのだな。ワシ一人だったら、絶対決められなかった。」
「確かに、種類は沢山あるけど基本的には大体似たような物だよ。」
「へぇ、そうなのか?でも、説明聞いてたらいろいろ、小難しかったぞ?」
「あぁ、聞き流してたらいいよ。それに、限定したらそんなに種類も多くないし。」
「う~む。でも、薦められた子供用の携帯は・・・妙に派手な色が多いな。後、おもちゃみたいだ。」
「まぁ、防犯用と可愛い外見の要望が多いからね。それに、機能も単純だから使いやすいはずだよ。でも、支払い方法は君の通帳で良いの?」
「あぁ、そこまで世話になれないし、お金ぐらいは自分でも稼げる。心配するな。」
「そう?遠慮はいらないんだよ?君はもう、僕たちの家族なんだから。」
章仁の言葉に一瞬、ぽかーんと口を開けて驚いた表情を浮かべたと思うとクスリと笑った。
「ありがとう。だが、その気持ちだけでも十分だ。それに、頻繁に使用することもないしな。」
「まぁね。でも、本当に頼っても良いんだよ?仮にも君の父親なんだから。」
「フフフ。その時には頼りにするよ。」
二人は話をしながら他の店を見て回って時間を潰していた。
「そろそろ、夕紀の学校に向かうかな。」
白夜は店の中に備え付けられてる大きな時計を見て呟いた。
「それなら送ろうか?久しぶりに夕紀の通う学校も見ておきたいし。」
「それは構わないが・・・捕まるなよ?」
「な?!や、やましい気持ちなんて無いよ。」
「ハハハ!冗談だ。さて、行こうか。」
白夜は意地悪な冗談を言って、やや必死で弁解する章仁の言葉を聞きながら笑っていた。
二人は、夕紀の通う学校の門まで辿り着いた。
「さて、此処までで良いぞ。後はわかるから。」
「そうかい?じゅぁ、僕はもう帰るけど、二人気を付けて帰るんだよ。」
「あぁ。大丈夫だ。お主も気を付けてな。」
「うん。ありがとう。じゃぁ、後でね。」
章仁は手を振って白夜と別れた後、大きな犬を連れて散歩している人とすれ違った際、犬に吠えられて驚きのあまり腰が抜ける章仁を見て、
「本当に大丈夫か?」
と、章仁の方が無事帰れるのか心配になる白夜だった。
まぁ・・・取りあえず、それは置いといて白夜は校内に入った。
すると、群がるように帰宅途中の女子生徒が寄ってきた。
「きゃぁ-!可愛い!!」
「ね?どうしたの?迷子?」
好奇心旺盛な女子中学生に、白夜は圧倒されていたが、取りあえず夕紀達が居る場所を尋ねた。
すると、その中から一人の生徒が名乗りをあげた。
「はいはーい!私、夕紀のいる場所知ってるから、案内して上げる。」
女子生徒が白夜の手を引っ張り、生徒達の群れから抜け出した。
「こっちにいるから着いてきて。」
女子生徒に手を引かれながら、歩いていたが白夜の後をさっき囲んで居た生徒達が全員着いてきていた。
あまりにもの多い視線に、白夜は恐る恐る振り向くと・・・最初に群がった生徒より遥かに多い人数が着いてきてたので、思わず声を出して驚いた。
「あはは。ごめんね~。うちの生徒暇だからさ。すぐ集まるんだ・・・っと、此処だ。此処に居るから、早く入って。」
案内してくれた女子生徒が教室の戸を開けて、白夜を先に入れて中に入った。
「は~い。夕紀~可愛いお客さんだよ。」
「え?!あっ!白夜!わざわざ連れてきてくれたの?ありがとう。」
ベースギターの練習をしていた夕紀が二人に気付き、途中で手を止めて二人の方へ駆け寄ってきた。
「あ~いいのよ。それより、こんな野獣が群がる学校に可愛い子を一人で来させちゃ駄目よ?」
「あはは。いや~、つい熱中してたから、忘れてた。」
「さすが、夕紀ね。それより、他の子は?」
「あっ。今ちょっと、用事があるからそっちに行ってる。もう少ししたら帰ってくるかも。」
「そうなんだ・・・。ん~ついでだから、あなた達の衣装のことで話そうと思ったけど待たせて貰うかな。それに・・・今、この教室から出られなさそうだし。」
教室の窓という窓から内部を覗く生徒で埋め尽くされていた。
その光景に、三人は乾いた笑い声しか出なかった。
「ところでさ。夕紀・・・この子をこんなところに呼び出して、どうするつもり?」
「え?どうって・・・、ん~まぁ、マキにも頼むからいいかな。」
夕紀はそう言うと、マキを近くに呼んで耳元で話した。それを聞いたマキは、思わず声を出して驚き、慌てて夕紀がマキの口を押さえた。
「バカマキ!まだ秘密なんだから、大声出さないでよ。」
「ごめんごめん。」
舌を出して謝るマキに、夕紀はタメ息をついた。