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第七十四話  予定


夕飯を食べながら、夕紀の家族全員が揃っている食卓は、いつも以上に賑やかだった。


「明日、白夜に学校へ来て貰うことにしたの。」

「え?大丈夫なの?」

「うん。放課後だし、千歳が居るから問題ないしね。」

「そう。千歳ちゃんが居るなら安心ね。・・・でも、何するの?」

「え~とね。学祭でやるバンドの練習。」

「え?夕紀がバンドやるのかい?」

「うん。バッチリやるから。だから、二人には来て欲しいんだけど・・・。あっ!も、もちろん、無理なら別に良いんだよ?ハハハ。」

「・・・心配しないで夕紀。昔ほど忙しくもなくなったし、絶対に見に行くから。」

「本当?!」

「えぇ。約束するわ。」

「やったー!!」

「落ち着け。」


夕紀は両手を挙げて喜びはしゃいだ。それを見ていた、白夜は苦笑いを浮かべて夕紀をなだめた。

白夜になだめられ、取りあえず落ち着いた夕紀は何かを思い出したかのように、手を叩いた。


「そうだ!ねぇ、ママ。白夜に携帯持たせて上げられない?」

「携帯?」

「そう。白夜と連絡取れないのは何かと不便だからさ。お願い!」

「別に良いけど。白夜はどう?携帯持ってみる?」


白夜は腕を組んで、考えると


「・・・夕紀や千歳が持ってる小型の電話機か?ん・・・興味はあるな。」

「そう。じゃぁ、明日にでも携帯を購入しましょうか。そんな訳だから、あなたお願いね。」

「え?僕?」


イキナリ話を振られて驚く章仁に、夏希は当然っと言った態度をとり、


「そうよ。どうせ暇でしょ?良い機会だし、白夜と親睦を深めてきたら?」

「・・・うん。そうだね。よろしくね。白夜ちゃん。」

「あぁ。こちらこそ頼むよ。」


笑顔で握手を交わす白夜と章仁の間に夕紀が割り込み、


「私の方の用事も忘れないでよ?白夜。」


と顔を近づけて来たので、白夜は少し身を引いて頷いた。


「そう、そう。学校で思い出したけど、白夜ちゃんは学校どうする?」

「え・・・?がっこう?」

「だって、見た感じ小学生位かな?一応、義務教育って制度があるからさ。」

「え?いや、しかし・・・見た目だけであって、今更、子供の中に混ざる事なんて出来る訳が・・・。」

「あら、良いわね。社会勉強にもなるし、是非そうしなさい。」


笑いながら命令する夏希に、嫌そうな表情で白夜が睨みつけて、


「お主・・・絶対、楽しんで言ってるだろう?」

「そ、そんなことないわよ。良いじゃない学校。通ったこと無いでしょ?」

「う・・・むぅ・・・、確かに無いが・・・。」

「だったら、折角だし、楽しんでみたら?結構楽しいところよ?学校は。」

「むぅ・・・。」


上手いこと夏希にはぐらかされたが、白夜自身も学校自体には少し興味を持っていた。

悩む白夜を章仁が一押しするように、


「まぁ、いろいろな知識も手に入るから、行って損は無いよ。」

「しかし・・・上手くなじめるかどうか・・・。」

「そんなの、行ってみないとわからないでしょ?何事も経験よ。ケ・イ・ケ・ン。」

「ハァ・・・わかった。学校とやらに行ってみるよ。」


結局、夫婦に押し切られて白夜が折れる感じで、話がまとまった。その横で、妄想が膨らんでいる夕紀の姿があった。


「何、アホっぽい表情浮かべてるのだ・・・夕紀。」

「はぅ?!」


白夜に声をかけられて、夕紀は正気に戻った。


「えへへへ・・・一緒に登校する姿を妄想してしまった。」

「大丈夫か?主に頭の方が・・・。」

「ひど?!」

「言い過ぎよ白夜。夕紀のそんな、ところが可愛いんじゃない。」

「え?ママ・・・それ、フォローになってない・・。」

「心配するな夕紀。パパは何時までも、夕紀の味方だぞ。」

「ありがとう!パパ!」


抱き合う娘と父親の姿に、思わず微笑んでしまった白夜を見て、フフッと夏希も笑った。


「そうだ夕紀。今日は僕と一緒に寝ないかい?」

「えぇ~?今日は、白夜と一緒に寝る~。」

「なん・・・だと?!」


夕紀は章仁の願いを即答で断り、激しく落ち込む姿にあまりにも不憫に思えてきた白夜は章仁の肩を叩き、


「仕方ない。今日は、お主と一緒に寝てやろう。」

「え?」

「そうすれば、夕紀も一緒に寝るのだろ?」

「白夜が一緒なら良いよ~。」

「あら?じゃぁ、私も一緒に寝ようかしら?」

「よ~し!じゃぁ、今日は居間で布団を敷いてみんなで寝よう!」

「いいね。じゃぁ、片付けして布団を持ってこようかな。」

「賛成!」


ご飯も食べ終わって、家族全員で食器を片付けたので早く終わり居間の机を片付けると、各々部屋から自分の布団を運んできた。


「へへぇ。なんか楽しいね。こういうの。」

「そうね。こうする機会が無いから、新鮮ね。」

「家族団欒っやつだね?」

「そうだよぉ。滅多にないんだからね。」


夕紀の本音とも取れる言葉に、両親の胸が少しチクリとした。


「本当にごめんなさい。コレからは・・・もっと、この時間を作るようにするから。」 「・・・そうだね。」


暗い顔をする両親に、夕紀は慌てて弁明した。


「やだ!そんなつもりで言った訳じゃないからさ。そんな、顔しないでよ。そ、そうだ!まだ、寝るには早いからさ。テレビでもみんなで見ようよ。」


夕紀は、この重い空気を打開するためにテレビをつけると、核家族についての特番をしていた。


「いやぁぁ!空気読んでよねぇ!!」


別の意味で空気を読んだテレビの番組に頭を抱えて絶叫する夕紀の姿に、白夜は思わず吹き出してしまった。



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