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第七十二話 家族

夏希は感動の余り、目から大量の涙を流していた。


「ちょっと・・・いい話じゃないの・・・。」

「取りあえず・・・顔でも拭いて落ち着こうか?」


余りにもひどい夏希の顔に白夜は苦笑いしながら、タオルを渡した。

夏希もタオルで涙を拭き取った後に、白夜がティッシュも渡してくれたので、それで鼻を勢いよくかんだ。

落ち着いてから、夏希は白夜に尋ねた。


「そう言えば・・・さっき話にも出てたけど、その老夫婦のお墓って・・・まだあるの?」

「ん?あぁ。最近は行ってなかったが、まだあるぞ。」

「へぇ~。結構、昔のお墓なんでしょ?」

「まぁな、一応、ワシが手入れしてたからな。綺麗な方じゃないか?」


夏希は、白夜の話を聞いて、少し・・・そのお墓に興味を持ってきた。


「じゃぁ・・・今度、墓参りをかねて、みんなでいってみる?」


夏希のイキナリの提案に、少し面をくらったような表情の白夜だったが、すぐ微笑んで、


「そう・・・だな。お主等が良いのなら、ここからだと少し遠いが・・・老夫婦も喜ぶだろう。」

「じゃあ。決まりね。今度の休みでもみんなで出かけましょうか?」

「あぁ。楽しみにしておくよ。」

「ただいまぁ。・・・誰か居るのかい?」


玄関の方から、誰か帰って来た。そして、二人がいる部屋に顔を出した。


「あれ?その子・・・夕紀の友達かい?」

「あら?お帰りなさい。早かったわね。この子は、新しい家族の白夜っていうの。」 「へぇ・・・そうなんだ。僕は、章仁アキヒトよろしくね。・・・っと、荷物が一杯だったんだ。ごめんね。ちょっと、置いてくるよ。」


と、両手一杯のお土産を置きに一旦部屋を出た後、章仁は物凄い勢いで戻ってきた。


「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って!!家族ってどういう事?!誰の子なの!ままままままさか・・・夕紀の子なのか?!うぉぉぉぉぉ!!夕紀ぃ!!相手は!相手は誰なんだぁぁぁ!!」

「ちょっと、落ち着きなさい。」


暴走する章仁に夏希はスリーパーホールドを決めて、軽くおとした。

夏希の腕の中で力なく完全に落ちてる章仁を見て、


「大丈夫なのか?」


本気で心配する白夜に、夏希は笑いながら、


「大丈夫、大丈夫。何時ものことだから。」


とは言うが・・・とても大丈夫そうには見えなかった。

・・・しばらくして、章仁が目を覚まして起きた。


「あら?起きた?」

「ああ。うん。久しぶりに、対岸で手を振る祖母の姿を見たよ。」

「ハハハ。そうなの?(・・・ちょっと、強く絞めすぎちゃったかなぁ。)」

「少し、やり過ぎじゃ無いのか?」

「ちょっとね・・・。ごめんなさい。あなた。」

「いや、少し取り乱した僕が悪いからね。まぁ・・・イキナリ、家族って言われても状況を説明してくれるかな?・・・白夜ちゃんだっけ?君の親御さんの事は聞いても良いかな?」


神妙な面持ちで尋ねる章仁に白夜は、頭を掻きながら、


「いや・・・親はいないな。」

「そうか・・・なるほど・・・。いや、辛いことを聞いて申し訳ない。」

「あ~・・・そう言う意味じゃないのだが・・・。」


頭を下げる章仁に、苦笑いする白夜の横で笑っていた夏希が


「この子は、人じゃないの。でも、生活する上で不便だから、養子って事にしたいのよ。」

「え?人じゃないってどういう事?どっから、どう見ても可愛い女の子じゃないか。」 「ん~・・・口で言うより、実際に見た方が良いかもね。」

「そうだな。」


白夜は見えやすく腕を出すと、徐々に変化させた。


「へぇ・・・コレは、すごいなぁ。」


眼鏡をかけ直して、白夜の腕をじっくり見ていた。真剣に見られてるのが、少し恥ずかしくなった白夜は腕を元に戻すと、あっ・・・と思わず声に出した章仁が白夜の顔をみて、しまった、と言った表情を浮かべた。


「ごめん、ごめん。つい好奇心が上回っちゃって・・・なるほど、理解した。じゃぁ、書類作らないといけないね。」

「頼むわね。あなた。」

「あぁ、任せておいて。」

「すまない。迷惑をかけるな。」

「大丈夫。遠慮しないで、可愛い子が増えるなら大歓迎だよ。」


張り切る章仁に、夏希は笑いながら、


「あまりに可愛いからって、手を出しちゃ駄目よ?」

「なっ?!し、しないよ!そんなこと!」

「フフフ。冗談よ。」

「まったく・・・じゃぁ、ちょっと待ってて。すぐ仕上げてくるよ。あ・・・そうだ。君の組織の方で、出処届けの協力頼んで貰える?流石に、養子取るのに証明できるモノが欲しいからさ。」

「あ・・・そっか。うん。わかったわ。・・・あまり連絡したくないんだけどね。」

「まぁ、この子のためだよ。頼むよ。」

「えぇ。わかってる。」


苦笑いしながら、頷く夏希に章仁は微笑んで書類を書くため書斎へと向かった。


「わかっていたが・・・面倒をかけるな。」


申し訳なさそうに謝る白夜の頭を撫でて、


「大丈夫よ。あなたにかけた迷惑に比べたら、些細な事よ。さってと・・・じゃぁ、ちょっと連絡してくるから、また後でね。」

「うむ。」


夏希も部屋から出て行き、ひとり部屋に残った白夜は、その場で寝転がると、


「・・・また・・・家族が出来たな・・・。」


と呟き、嬉しさのあまり顔がほころんでいた。



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