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第六十八話  紋章


「えへへへ・・・。」


嬉しそうにクルクル踊りながら喜ぶ夕紀を見て、白夜と夏希は苦笑いをした。


「ところで・・・夕紀にまで契約して大丈夫なの?」


心配そうに尋ねてきた夏希に白夜は微笑んで、


「まぁ・・・夕紀のは御守りみたいなモノだ。心配するな。それより・・・契約は済んでも、現実問題が残ってるぞ。」

「え?なにかしら?」

「養子か何かの手続きが必要だろ?今の世の中は・・・。」


白夜に言われて、夏希はあぁ。っと言った表情で手を叩いた。


「それなら、大丈夫よ。そう言う書類製作するのが上手な人が居るから。」

「ほぉ?そうなのか?」

「えぇ。」

「あ!パパのコトね?」


夏希と白夜の会話の間に、勢いよく割ってきて答えた夕紀に、夏希は微笑んだ。


「多分、明日には帰ってくると思うから、その時に頼みましょうか。」

「だね。」

「しかし・・・ワシを素直に受け入れてくれるかな?」


心配する白夜に対して、夕紀が抱きついて、


「な~に、言ってるの!私がそんなこと言わせないわよ!」

「そうね・・・。大丈夫よ。私からも事情さえ話しておけば、問題ないわよ。」

「・・・そうだな。じゃぁ、改めてよろしくな。」

「こちらこそ。」


改まって挨拶する夏希と白夜だったが、次第に笑いがこみ上げてきて互いに笑い始めた。


「恥ずかしいモノだな。なんだか。」

「良いじゃない。家族なんだし。・・・コレからも仲良くしようね?白夜。」

「あぁ。そうだな。」


夏希は二人を見て、微笑んだ。


「フフフ・・・本当に、仲の良い姉妹みたいね。」

「まぁね!白夜は妹みたいで可愛いモノ!」

「以前から言っているが・・・ワシの方が遥かに年上なんだがな。」

「そうね・・・しっかり者の妹とおっちょこちょいな姉ってところかしら?」

「ちょっと!ママまでひどい!」


  ちょっとお怒り気味の夕紀に笑う夏希と白夜の声が家を包みながら夜が更けていった。


夏希は寝室で布団の準備をしていると、ドアをノックする音が聞こえた。


「あら?夕紀。どうしたの?」


ドアを開けると、寝間着姿で枕を抱えて夕紀が立っていた。

夕紀はもじもじと、恥ずかしそうに


「あのね・・・ママ。一緒に寝ても良い?」

「フフフ・・・可愛い娘のお願いを断る親はいないわ。いらっしゃい。」

「やった!あっ!ちょっと、まっててね。」


夕紀は慌てるように何処かに走り去っていった。一人残った夏希は、ヤレヤレとした表情を浮かべて、もう一つ布団を床に敷いた。しばらくすると、何処かの部屋で暴れる音と白夜の嫌がる声がしたので、夏希は心配になって、


「夕紀?どうしたの?何かあったの?」


と、叫ぶと・・・息を切らしたような声で


「え?ううん!大丈夫!今から降りるよ!」


そう言って、重い足取りで夕紀が降りてきた。


「ごめんごめん。ちょっと、手間取っちゃった。」


そう答える夕紀に抱えられた白夜の目は、まるで死んだ魚のように虚ろだった。


「どうしたの?そんな顔して・・・夕紀になにかされた?」

「うむ・・・まぁ・・・もう、諦めた。」

「えへへ・・・・。」


何かを悟ったように黄昏れてる白夜とは対照的に、活き活きしている夕紀の表情を見て、何かをされたのは明らかで、夏希は怖くて内容が聞けずに、ただ、笑うぐらいしかできなかった。


  夕紀は夏希の部屋に入ると白夜を放してから布団に入り込んだ。


「ほら!二人とも早く!」

「はいはい。すぐ行くわ。・・・でも、部屋狭いから布団二つしか敷けないわよ?」

「大丈夫、大丈夫。ほら!白夜もここにおいで!」


夕紀は、自分と夏希の間に寝るように白夜を手招きをしたが、かたくなに拒む白夜に、業を煮やした夕紀は白夜に飛びつき、敏感で弱い箇所を集中的に攻め始めた。

悲鳴にも似た笑い声に、とうとう白夜は断念、夕紀に引きずられて布団の中に連れ込まれた。


「大丈夫?」

「・・・・。」


心配して声をかけた夏希に、言葉が出ないほど疲れてる白夜は、潤んだ瞳で何かを訴えかけていた・・・が、怯えた子犬の様な姿の白夜に夏希は、胸をときめかせた。


「夕紀がいじめたくなる気持ちが・・・何となくわかるわ。」

「でしょ~♪」

「?!!」


共感する二人に、味方がいないことにショックを受けた白夜は、頭まで布団を被った。


「冗談よ。白夜。公認の家族になったんだしさ・・・もう、何もしないから出てきなよ。」


夕紀になだめられ、はぁ・・・とタメ息を漏らして、布団から顔を出した。


「家族が増えたから、友好を深めようよ。」

「ハハッ。くさい台詞だな。」


カラ笑いする白夜に、夕紀はガッチリと抱きついて、


「うっさいな!そんなこと言うと・・・抱きついて寝ちゃうぞ!」

「すでに、抱きついてるし!やめんか!暑苦し!」

「あ!ひど~い!良いじゃない!減るもんじゃないんだし。」


二人のやりとりに我慢できず、夏希も混ざって抱きついてきた。


「ぬぁ?!えぇい!抱きつくな!!」


左右から抱きついてくる二人を、引き離すのに必死になる白夜。


「もう。まんざらでもないんでしょ?本当に嫌なら、力ずくでも放せれるでしょ?」

「むぅ・・・。」


夏希の台詞に白夜は、反論できず。タメ息を漏らして、諦めた。


「わかった。大人しくするから、離れてくれ。寝づらくてかなわん。」

「ふふ・・・ハイハイ。・・・ほら、夕紀も離れて。」

「は~い。フフフ・・・。」


母親の言うことに素直に従う夕紀だったが、何故かニヤついた表情を浮かべていたので、思わず白夜が、


「何、ニヤついてるのだ?気持ち悪いぞ?」


と、ドン引きしていた。


「もう!何よ!嬉しいんだから、仕方ないじゃない。こうやって並んで寝るのも久しぶりだし。」


嬉しそうにしてる夕紀に、目を細めて白夜は笑うと


「まだ子供だな。」

「うっさいなぁ。良いじゃない。こんな時って、滅多にないんだから。」

「ハハハ。悪かった、明日学校だろ?早く寝ろ。」

「は~い。」

「フフフ・・・。」


イキナリ笑い出した夏希に、驚いた白夜が、不思議そうに尋ねた。


「どうしたんだ?イキナリ笑って・・・。」

「あ・・・ごめんなさい。・・・あ~あ、なんだか妬けちゃうわ。まるで、私の出番がないみたいね。」

「何を言っておる。今も昔も夕紀の母親はお主だ。代わりなどおらん。」


白夜の言葉に、少し目頭が熱くなった夏希は、それを隠すように微笑むと、


「ありがとう・・・。本当に貴方に会えて、感謝してるわ。」


そう言って、夏希は目を閉じるて、


「今更、言えた義理じゃないけど・・・夕紀のことをお願いします。」


その瞬間、夏希の額を白夜が平手で叩いたので、驚いて白夜の方へ向くと、


「辛気くさいことを言うな!その紋章がある限り、ワシ等は家族だ。いらんことで、気を遣う必要はない。」

「・・・。」


夏希は無言で白夜に抱きつき、


「貴方に会えて本当に良かったと思うわ。・・・白夜。」

「・・・フッ。やっとだな、ちゃんとワシの名前を呼んでくれたのは。」

「あら?そうだった?」

「あぁ。やっと、受け入れてくれたんだな?」

「ふへへへ・・・。」


和やかなムードが漂い始めた時、それをぶち壊すような不気味な笑い声で驚いた白夜に、背後から夕紀も抱きついてきた。


「ん~・・・その和やかなムードに私も混ぜて~。」

「えぇい!それを、見事にぶち壊したではないか。暑苦しいから離れろ!」

「良いじゃない?家族でしょ?仲良く引っ付いて寝ましょうよ~。」

「い・い・か・ら。離れろ!」


暑がる白夜を挟んだまま、夕紀と夏希は抱きしめて放さなかった。



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