表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/84

第六十七話  契約

「あら・・・美味しいわ。凄いわ。夕紀。」

「エヘヘヘ・・・もっとあるから沢山食べてね。」


母親におかずを勧める夕紀を見ていた白夜が、箸の進んでない海翔に気付く。


「どうした?余り、箸が進んでないではないか。」

「ん?あぁ・・・とても、横から突けそうじゃないからな。」

「ふむ。まぁ、一人が食べきる量ではないからな。どれ、ちょっと貸してみろ。」

「え?あっ、おい!」


白夜は海翔のお皿を取ると、夕紀の作ったおかずをドンドン盛っていった。


「あっ!白夜!何してるの?!」

「ん?・・・いや、その量を一人に食わすのは酷だろ?」

「うっ・・・そうだけど・・・。」

「まぁ、良いじゃないか。こいつも働いたんだし。」

「むぅ・・・。仕方ないなぁ・・・。」


渋々承諾する夕紀に、微笑えむと白夜はおかずを海翔に渡した。


「ほれ、夕紀が一生懸命作ったモノだ。残さず食えよ。」

「あ、あぁ。しかし・・・。」

「良いから食え!」


海翔も渋々受け取ると、無言で食べ始めた。

黙々と食べる海翔に白夜は


「うまいか?」


と、尋ねると、海翔はチラッと白夜の顔を見て、


「あぁ・・・悪くはない。」


と、素っ気なく答えた。


「ふん。別にあなたに作った訳じゃないんだから、美味しくて当たり前じゃない。」


悪態をつく夕紀に、海翔は鼻で笑い。


「ハッ。自意識過剰なんじゃないか?俺は、一言も”うまい”なんて言ってないぞ?」 「な、なんですってぇ?!」


無用な火花を散らしながら睨み合う二人を見て、夏希は


「あなた達、仲が良いのね。」

『何処が?!』


二人は声をハモらせて否定したが、白夜は笑いながら、


「仲が良いと言うか・・・似たもの同士だな。」

「えー?全然似てないって。私の方が可愛いし。」

「俺もお断りだ。俺は此処まで馬鹿ではない。」

「何よ!」

「何だ!」

「お主等・・・同族嫌悪って言葉を知っておるか?」


白夜の言葉に、夕紀と海翔は露骨に嫌そうな顔をしていた。


「ハァ・・・。」


海翔は深いタメ息をついた後、箸を置いて立ち上がると、


「此処でいがみ合っても仕方ない・・・話す事があるんだろ?俺は帰るぜ。」

「あら?もっとゆっくりしていけばいいのに。」

「ありがとうございます。・・・しかし、あなたの娘には嫌われてるみたいなので、早々に退散しますよ。」


そう言って、足早に海翔は玄関に向かった。


「わざわざ来てくれて、ありがとな。」


玄関で靴を履いていた海翔の後ろから、白夜がお礼を言っが、海翔は振り向かずに、


「別に・・・たまたま近くに居たから、寄ったまでだ。礼を言われるほどでもない。」

「クックックッ・・・。まぁ、そう言うことにしておいてやろう。」


無愛想に答える海翔に、白夜は意味ありげに笑うと、


「チッ・・・。じゃぁな!」


と、海翔は照れ隠しで舌打ちをすると、足早に出ていった。


「やれやれ・・・せっかちなヤツだ。もう少しゆっくりしていけばいいものを・・・。」


白夜はそう呟いて、二人が居る食卓へと戻ってきたところ、あらかた食べ終えて、久しぶりの親子水入らずで話していた。

しばらく、遠目に眺めていた白夜に夕紀が気付いて、手招きをした。


「そんなところで突っ立って、どうしたのよ白夜。」

「いや、親子で久しぶりに話す事もあるだろうから、間に入るのも悪いと思ってな。」

「何言ってんの!白夜も家族のようなモノじゃない!ほら、こっちに来て座って、座って。」


夕紀は自分の横に座るよう、椅子を叩いて催促した。白夜は苦笑いしながら、夕紀の横に座ってから、頭を掻くと真っ直ぐに夏希の方を向いた。


「いろいろ考えたのだが・・・。正式に契約を交わさないか?」

「契約?・・・何の契約?」


質問する夕紀に白夜は優しく微笑むと、


「あぁ。ワシとの契約だ。・・・まだ、ちゃんとした契約を結んでいないからな。コレを気に、やっておこうと思ってな。」

「・・・貴方との契約は悪い話じゃないわ。・・・でも、貴方ほどの霊位になると、リスクも高くなるんじゃない?」

「クックックッ・・・まぁな。しかし、それほどの霊位をもったモノと話し合いで契約できるのだ。悪い取引ではないと思うぞ。」

「確かに・・・そうね。契約内容次第かしら。」

「え~!私だったらすぐにでも、白夜と契約するよ。」


夕紀のお馬鹿な発言に夏希はタメ息をつくと、


「何を言ってるの。この子は・・・。いい?契約は解約できないの。慎重に考えないと、お互いが大変なことになるのよ?」

「ほほぉ・・・私は、白夜となら良いけど、迷惑かけたくはないなぁ。」


真剣に悩む夕紀に、白夜は笑いながら、


「お主がワシに迷惑をかけなかったことがあるのか?」

「な!そ、そんなこと・・・あるかも・・・。」


反論できずに口をつぐんだ夕紀を見て、夏希も笑った。


「さて・・・本題に入るかな。契約内容なのだが・・・。」


神妙な面持ちで、迫る白夜に夏希と夕紀は息を呑んで、次の言葉を待っていた。


「ワシを家族として向かい入れることだ。」

「へ?」


予想外の内容に、一瞬理解できず二人は聞き返した。


「いやな・・・やはり、コノ姿で生活する以上、身元が不明のままでは何かと不便だと思ってな。これを機会に、正式に住まわせて貰おうか。」

「契約内容は、それだけ?」

「ん?他に何がある?」

「え?いえ・・・それは、私達にとっては願ってもないことだけど・・・。」

「あぁ・・・リスクの方か。・・・そうだな。ワシの霊気に引き寄せられるモノがあるかも知れないが。それは、自分で何とか出来るし・・・特に気にするモノでもないだろう。」

「本当にそれで良いのね?」


夏希の確認に白夜は少し笑い、


「妥当な内容だと思うぞ?お主等で、ワシの願いを叶えることは難しいと思うしな。」

「それもそうね。」


と、少し意地悪に言う白夜に、夏希は苦笑いした。


「いいわ。じゃぁ・・・契約しましょう。」

「うむ。よろしく頼むぞ。」


夏希が握手を求めると、白夜はそれに答えた。


「よし。では、コレが契約の証だ。受け取ってくれ。」


そう言うと、夏希の手の甲に小さな紋様が浮かぶとすぐ消えた。


「うっわー!!いいな!格好良いなぁ!ネッ、ネッ!私にも頂戴!」


ハイテンションではしゃぐ夕紀をみて、白夜はヤレヤレ・・・と言った表情で夕紀の手も握った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ