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第五十六話  救出 ※注意!挿絵が有ります

「・・・お家に帰りたいよぉ・・・。」


沙耶は一人、取り残された部屋で身体を震わせながら泣いていた。そんな時、外から物音がし、扉が開いた時に沙耶は身をすくませた。


「もう大丈夫よ。」


入ってきたのは、若い女性の声で沙耶は顔を上げると、見た事のない女性二人が立っていた。


「え?誰?」


意外な展開に驚く沙耶を、夕紀が抱きしめた。


「いや~ん。可愛いぃ!・・・縛られてる姿もそそるわね・・・。」

「止めなさいよ!それ以上したら、あなたも警察に突き出すわよ?」

「え?え?!」


状況把握が出来ずに戸惑う沙耶を抱きしめて離さない夕紀を千歳が引き離し、夕紀を正座させて千歳が説教していた。


「あのぉ・・・あなた達は?」

「あ・・・ごめんなさい。自己紹介がまだだったわね。」


沙耶の問いかけに千歳が気付き、夕紀を説教していた厳しい表情から、優しい微笑みに変わった。


「私の名前は一之宮 千歳・・・で、コッチが不本意ながら友人の碑宮 夕紀。」

「ひど!」

「で・・・後、もう一人が・・・。」

「どうだ?ワシをちゃんと助けたか?」

「え?」


入り口から白夜が現れた。その姿を見て、沙耶は思わず声を上げた。


「この子が白夜ちゃん。あなたと勘違いした子よ。」

「本当に私とそっくり・・・あ!私は、津田 沙耶です・・・あのぉ・・・良かったら、私と一緒に写真撮らせて!」

「は?イキナリ何を・・・そんな時間は無いぞ?」

「あら?良いわね。記念にみんなで撮りましょう。」

「え?せめて、縄ぐらい解いてあげようよ。」

「そうね。ちょっと待ってね。」

「はぁ・・・お主等、何のんきな事を・・・。」


呆れている白夜を余所に、千歳は沙耶の縄を解いて持っていた荷物を返した。


「この荷物あなたのよね?」

「はい!そうです。ありがとうございます!確か、この中にカメラが・・・あった。」


沙耶は荷物の中からデジタルカメラを取りだして、辺りを見渡して丁度良い高さの所へカメラを設置して、タイマーセットをした。

カメラの前に千歳達が集まった。


「ほら!白夜ちゃんも早く早く!」


千歳の手招きに、タメ息をつきながら白夜が並ぶとカメラのシャッターが降りた。


「ありがとうございます!」


お礼をする沙耶に、白夜は苦笑いをして、


「まだ礼を言うのは早いぞ?取りあえず、ここから出る事が先決だ。・・・礼はその後だ。」


そう言って、先に部屋を出ていった。


「それもそうね。さて、女の子も救出したし・・・戻りましょうか?」

「賛成!」

「はい。」


三人は、白夜の後を追って部屋を出た。・・・下に降りた時、白夜が立ち止まっていた。


「どうしたの?白夜。・・・あっ!!」


尋ねた夕紀が、白夜の目線の先に気付いた。其処には、気絶させていた犯人達が集まっていた。


「ふざけた真似しやがって・・・無事に帰れると思うなよ!」


殺気立ってる犯人達に、沙耶達が怯えてるのに気付いた白夜は、三人を下がらせた。


「此処はワシに任せて、お主等は下がっていろ。」

「で、でも・・・白夜。」

「心配するな。大丈夫だ。」


心配する夕紀に、白夜は微笑んで答えた。それを見た夕紀は、信用して二人を連れて白夜から離れた。

それを見届けた白夜は、犯人達を睨んで構えた。その時、


『イエス!ロリータ、ノータッチ!!』


奇天烈な叫び声と共に、最後尾に居た犯人の一人が何者かに殴られて、白夜の手前まで吹き飛んできた。白夜は驚いき、目を凝らしてよく見ると、暗闇の中から中村が現れた。


「貴様等、お嬢様方を数人で囲んで何をするつもりだ?」

挿絵(By みてみん)

中村から威圧的で強力なオーラを感じ、其処には一人の鬼が立っていた。

前に進む中村の気に怯えた犯人達は、道を空けるように避けた。

中村が白夜の前に立つと、いつもの笑顔で声をかけた。


「お嬢様方、此処は私めにお任せください。」

「う、うむ。」


中村の顔は笑顔だが、言い知れぬ威圧感があった。四人は中村に身を寄せるように犯人達の間を進んでいた。・・・犯人達はまるで銅像のように動けずにいた。

四人が犯人達の人垣を抜けた時に、中村が先に車へ戻るよう指示した。


「お嬢様。建物の前に車を待機させていますので、其処まで皆様をお連れして下さい。」

「そう・・・中村はどうするの?」


心配そうに聞く千歳に、いつもの落ち着いた口調で答えた。


「少々、用がございますので、それが終わり次第すぐ戻ります故、ご心配なさらずに。」

「別に、あなたの心配なんてしてないわ。運転手が居ないと帰れないから、それを心配してるのよ。」

「ハハハ・・・コレは手厳しい、わかりました。すぐ終わらせますので、少々お待ちを。」

「早く帰って来なさいよ。」

「承知しております。」


中村は微笑んで返事した後、建物の中に戻って行った。


「中村さん・・・大丈夫かな?」


心配する夕紀に、千歳は微笑みながら答えた。


「心配する事無いわ。早く終わらすって言ってたし、私達はゆっくりと車の中で待ちましょう。」


そう言って、千歳は一人で車の方へ向かって行った。


「本当は、心配なくせに強がっちゃって。」


夕紀はクスッと笑い、沙耶と白夜の手を引いて千歳の後を追った。

・・・一方、中村は慌てて追ってきた犯人達の前に一人で立っていた。


「あんた、一人だけ戻ってきてどうするんだよ?大人しく逃げれば良かったじゃないのか。」

「いいや・・・貴様等にはキツイ仕置きが必要だと思ってな。二度とお嬢様方に危害を加えないようにな。」


そう言って、中村は息を吸い込んでから、


「貴様等全員、ケツを出せ!!」

「なっ?え?!あっ、あっ、アーーーーーーーーッ!!」


建物内に、断末魔にも似た悲鳴が鳴り響き、辺りにはドドメ色の薔薇が咲き乱れた。


やがて廃屋に静寂が訪れ・・・服装が一切乱れず、心なしかテカテカと血色の良い表情で中村が出てきた。


「もう・・・遅いわよ!中村!」


一番最初に出てきた中村に身を乗り出して声をかけたのは千歳だった。

中村は微笑みながら謝った。


「申し訳ございません。お嬢様。・・・少々、手間取ってしまいました。」

「まったく・・・怪我はしてないのでしょ?なら、早く車を出して頂戴。」

「フフフ・・・本当は、一番心配してたクセに。」

「な、何言ってるの?夕紀。私は帰れるか心配して・・・。」

「ハイハイ。じゃぁ・・・中村さん。お願いできますか?」

「承知しました。」

「ちょ、私の話を聞きなさいよ!」


顔を真っ赤にして言い訳をしている千歳をよそに、夕紀は中村に頼んで街まで送ってもらった。終始、車の中ですねていた千歳も白夜と沙耶のおかげですぐに機嫌が戻った。



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