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第五十五話  廃屋


犯人達が隠れている廃屋が一望できる木の枝に、一羽の白い鷹が静かにたたずんでいた。


廃屋の中、沙耶は男達の会話がボンヤリとだが聞こえてきた。

何かを話している様だが、意識がもうろうとしてハッキリしない。

やがて、徐々にだが男達の会話が聞き取れるようになってきた。


「―――・・・に、これでいいのか?」

「なんだ?今更、びびったのか?」

「そうじゃねぇけどよ・・・。」

「なら、口出しするな。用が済めば、このガキだって・・・。」


男は会話の途中、沙耶が目を覚ました事に気づいて、近づいて来た。


「目が覚めたか?お嬢さん。」


青ざめて震える沙耶に男が触れると、身をすくめて怯えた。


「ハハハ!すっかり怯えてしまってるなぁ。・・・まぁ、無理もないけど。だけど、お嬢ちゃんが悪いんだぜ?一人で歩いてるんだからな・・・まぁ、俺たちは遊ぶ金が欲しいだけだからさ。用が済んだら帰してやるよ。」

「・・・」


涙を流しながら怯えてる沙耶を一人残して、二人は部屋を出て行った。


その頃、白夜達は犯人達が居る廃屋が見える物陰に隠れて様子を見ていた。


「あそこに・・・白夜ちゃんが囚われてるのね?」

「ぬぅ・・・ワシが捕まってるのか・・・ワシの身が心配だ。」


真剣な表情で言う千歳と白夜に、いい加減夕紀がツッコンだ。


「もう良いよね?ツッコンで良いよね?・・・白夜ずっと此処に居るじゃん!」


それを聞いた二人は、何言ってるんだ?って言った表情で見ると、千歳がタメ息混じりに、


「はぁ・・・ダメね・・・夕紀は。」

「だからお主は、夕紀なのだ。」

「えっ!?意味わかんないし?!なんで、私が悪い事になってる訳?」

「まぁまぁ・・・それより、警察に連絡しますのでお嬢様方は此処でお待ち下さい。・・・くれぐれも、妙な気は起こさないで下さい。良いですね?お嬢様。」

「あら?今まで、私が妙な気を起こしたかしら?」

「・・・起こさなかった事の方が少なかったと存じております。」

「心配しないで、怪我はしないようにするわ。」

「左様でございますか。」


不敵に笑う千歳に、諦めにも似た表情を浮かべた中村はタメ息を漏らし、


「わかりました。・・・私めは警察に連絡してきます。」


そう言って、中村は車の所まで戻って行った。


「中村も居なくなったし・・・どうしようかしら?」


白夜は三方向に配置した鷹の目を中継して、建物の犯人達の配置を確認した。


「ふむ・・・割と手薄だな・・・どうやら相手は武装もしてない素人みたいだし、人数も少ないな。・・・中には四人、入り口付近に二人いるぐらいだ。」

「じゃぁ・・・入り口の二人を倒したら、簡単に侵入できそう?」

「うむ。・・・ワシ一人で行こう。」

「まぁ?私達も付いていくわよ?」

「いや。中村殿も言ってた様に、もしもの時があっては・・・。」

「大丈夫!白夜が居るから安心!」


千歳と白夜の間に割ってはいるような夕紀の発言に、白夜はヤレヤレッと言った表情で、


「はぁ・・・どうせ、止めても無駄か・・・わかった。じゃぁ、危険の無いように付いてきてくれ。」

「は~い。」


白夜との約束に、夕紀と千歳は声を揃えて返事をした。そして、白夜達は静かに移動して、建物の付近まで近づいた。

三人は身を潜めて様子を伺っている時、夕紀は小声で白夜に尋ねた。


「バレないように近づくなら、動物か何かで注意を引けないかな?」

「ふむ。なら、ワシの分身で注意を引こう。」


白夜は影から犬の分身を出した。影から出てきた犬は三人が隠れている場所から遠回りして、見張りの立ってる場所へ向かった。


・・・―――ガサガサッと草が揺れ動いたので、見張りの二人が警戒した。


「誰だ?!」


見張りの一人が怒鳴るように問いかけると、野良犬とは思えないほどの白い犬が草陰から現れた。


「何だ・・・犬か。」


ホッとした見張りの一人がしゃがみ込んで舌を鳴らして犬を呼んだ。


「お前・・・ホント、犬好きだな。」

「まぁな、それに見ろよ。こいつ、野良犬の割には小綺麗だぜ?」


犬は呼んでる男の元へ、ゆっくりと近づいて来た。


「お?こいつ、結構人に慣れてるんじゃないか?」


大分、接近してきた犬の頭を撫でようとした瞬間、犬はイキナリ突進して男の無防備な股間に容赦無い頭突きをした。その余りにも高い威力で、男の腰が宙に浮くと、そのままの格好で後ろに倒れて気を失っていた。

そのコント張りの出来事に、もう一人の見張りが大爆笑した。


「クソ!!美味しすぎるなお前!・・・しまったぁ!携帯で撮影すれば良かっひょぉ?!」


見張りの背後に回り込んでいた千歳が、大爆笑して無防備になっていた股へ向けて、バールのようなモノでフルスイングして、鈍い音と共に見張りは崩れ落ちた。

それを見ていた白夜が物陰から出てくると、


「容赦無いな・・・お主。その見張り死んでないか?」

「あら?大丈夫でしょ?手加減はしましたわ。ウフフ。」


ダークに笑う千歳の横で倒れているバールのようなモノで殴られた見張りを、白夜は軽く突いていた。


「辛うじて、息はしてるが・・・男として終わったかもしれんな。」

「白夜ちゃんも似たような事したでしょ?それに・・・これにこりて、反省するはずよ。」

「ま、まぁ・・・潜入しよっか?」

「そうね。」


千歳のダークな部分を垣間見た夕紀は、苦笑いしながら二人を建物内に進ました。

順調良く三人は奥に進んでいた。途中、遭遇した犯人達は、三人の見事なコンビネーションで各個撃破して縛り上げてきた。


「こんな事があろうかと、中村に用意させていたロープが役に立ったわ。」

「潜入する気満々だったんだな・・・お主・・・。」

「もちろん!白夜ちゃんにもしもの事があったら、大変ですもの。」

「まぁ、ワシ一人捕まってる方が、此処まで被害は出なかったかもな・・・。」


そう言って、白夜は後ろを振り向き、苦悶な表情で白目をむき、口から泡を出して縛り上げられてる犯人達に同情した。


「悪い事をしたから罰ね。・・・さっ、早く捕まってる子を助けないと。」


活き活きとして進む千歳の後ろ姿を見つめながら、夕紀と白夜は苦笑いをした。


「・・・なんだか、いつもの千歳と違う。」

「案外、こういう状況が千歳の能力を発揮させてるのかもな。」

「ほら!二人とも、何話してるの!急ぎましょう。」

「あ!まって!」


二人は駆け足で、千歳の元へ向かった。


「なんか・・・下が騒がしいな。・・・ちょっと見てくる。」

「あぁ。・・・どうせ、下の奴らが暇だから遊んでるんじゃないか?」

「ハハハ・・・かもな。」


そう言って、沙耶が捕まってる部屋に見張り一人残して、犯人の一人が様子を見に降りていった。


「やば!誰か降りてきた。早く隠れて。」


夕紀が降りてくる犯人の足音に気付いて、小声で二人に知らせ、各々が慌てて物陰に隠れた。

降りてきた男は奇妙な違和感を感じた。


「あれ?おかしいな・・・他の奴ら何処行ったんだ?」


他の仲間を捜して、男は辺りを見渡しながら進んでいた。その時、夕紀達三人は無防備な男の背後から飛びかかった。

男は悲鳴を上げる間もなく気絶させられ、千歳によって縛り上げられた。


「コレで・・・残り一人かな?」

「うむ。・・・しかし、こいつ等はタダのゴロツキのようだな。随分と油断しまくってるな。」

「そうね。だから、此処まで来られたんだけどね。・・・プロだったら私達じゃぁ無理ですもの。」

「そう言う千歳の顔・・・物足りなさがにじみ出てるんだけど?」

「え?・・・そ、そうかしら?」


夕紀の鋭いツッコミに千歳は慌てていた、ヤレヤレといった表情で二人を見ていた白夜の背後から、男の手が伸びてきて白夜を捕まえると首にナイフを突き付けた。


「帰ってくるのが遅いと思って降りてきたら・・・テメェ等何者だ?何で此処に居る?」

「え?何でって・・・ねぇ?」

「私達、タダの女子校生ですよ?そうだなぁ・・・しいて言うなら、可愛い女の子を助けに来ただけです。」


質問にどや顔で答える夕紀に、男はキレた。


「ふざけるな!お前等、今の状況がわかってないのか!このガキ殺されたくなかったら、俺の仲間の縄をほどけ!」


怒鳴る男に、千歳と夕紀は顔を見合わせてから、白夜を人質にとってる男を素通りして、階段を上ろうとした。


「ちょ、お、お前等!何処行くんだ!」

「え?女の子が一人だと可哀想だから助けに行くんだけど・・・何か問題でも?」


不思議そうに答える夕紀に、男は驚いた表情を浮かべて、すぐさま、白夜の首にナイフの先を突き付けた。


「ば、馬鹿にしてるのか!ガキ一人殺す事が出来ないと思ってるのか!」


興奮する男に対して、千歳が可哀想な人を見る様な表情で答えた。


「あなた・・・人質にする子を間違えたのよ?・・・その子、あなた達が束になっても倒す事は不可能なんだから。・・・じゃぁ、女の子助けてくるから、後お願いね?白夜ちゃん。」

「うむ。」


そう言って、白夜に手を振ると、千歳と夕紀は上の階へ駆け上った。取り残された男は、完全にブチ切れて白夜に向けてナイフを振りかざした・・・が、その瞬間、白夜は男の耳を叩いた。

驚いた男はよろめいて、白夜を捉えていた手が緩みすかさず抜け出すと男のみぞおちに肘を打ち込むと、くの字に曲がった男のアゴを掌底で打ち抜いた。

男はそのまま後ろに倒れて、完全に伸びた。


「千歳の言う通り、ワシを人質に取ったのが失敗だったな。」


白夜は格好良く台詞を決めると、夕紀達の後を追った。



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