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第五十四話  探し人


「え~と・・・確かこの街にいるのよね?」


一人の少女が辺りを見渡しながら、夕紀達の住む街に降り立った。

その少女の片手には、白夜の画像が載っている携帯電話を握りしめて・・・。


「・・・って、来たのは良いけど・・・よく考えたら、必ず会える訳無いモノね。ハァ・・・。」


街に到着してから後悔している少女がこの街に来たキッカケは、ある友達の一言だった。

さかのぼる事、数日前・・・。


「ビッグニュース!ビッグニュース!!」

「へ?どうしたの?」

「コレ見て!コレ!」


慌てて駆け寄ってきた友達が、差し出して見せた携帯電話に自分の画像が写っていた。


「え?わたし?」

「だと思うでしょ?実はこの子、目が赤いの。」

「あ!本当だ。」

「前にあった噂の少女よ。この子。」

「へぇ・・・本当にそっくり・・・何処で撮ったの?」

「市内の楽器専門店で偶然見かけたの。急いで撮ったけど綺麗に撮れたわ。」

「なるほど。」


マジマジと携帯電話の画像を見ている沙耶に友達は、一つの提案をした。


「ねぇ、ねぇ。この子を見つけてさ。一緒に写真撮ってきてよ。」

「え?」

「だって、此処まで似てるのよ?偶然じゃないわよ。きっと、出会えるわ。」

「んー・・・そうかなぁ?・・・まぁ、会えたらいいなぁ。」

「じゃぁさ。今週の日曜日に市内まで行ってきたら?」

「へ?そんな、結構広いんだから会える訳無いじゃない。」

「大丈夫!ほら、アニメやゲームであるみたいに、似たもの同士は引き合うはずよ。」

「そんなの、アニメやゲームの中での話でしょ?リアルは違うのよ。」

「良いじゃない。どうせ、日曜日暇でしょ?行ってきてよ!」

「・・・はぁ・・・。わかったわよ。もし会えなくても、文句言わないでよ?」

「大丈夫、大丈夫!会える会える!」

「はぁ・・・。」


何処から出てくるのか・・・根拠のない自信満々の表情で沙耶に詰め寄る友達に、沙耶はなくなく承諾してしまった。

承諾した事を後悔しながら、街の中をあてもなく歩きながら沙耶はタメ息を漏らして、一応、白夜を撮した店に立ち寄ってみたが・・・収穫は何もなかった。

しばらく歩いてると、大きい家が並ぶ住宅街に入り込んでいた。


「うわ・・・大きい家が沢山並んでるなぁ。」


キョロキョロと辺りを見回しながら歩いてると、イキナリ背後から襲われ口に布を当てられると、薬品が染みこんでいたのか・・・意識が遠のいていった。

気を失った沙耶を急いで乗り付けた車に乗せる男達を、偶然通りかかった千歳がその現場を目撃した。


「アレは・・・白夜ちゃん?・・・大変!」


千歳は携帯電話を取り出して、中村に電話した。


「あ!中村?急いで警察に連絡して!白夜ちゃんがさらわれたわ。・・・えぇ、夕紀にも教えないといけないから迎えもお願い!」


沙耶が落とした手荷物を回収した千歳は、車の到着をウロウロしながら待ちつづけ、ようやく到着した車に急いで乗り込み、夕紀の家に直行した。


その頃、夕紀と白夜は居間で茶菓子をつまみながら、仲良くテレビを見ていた。

そのひとときの中、千歳が慌てた様子で滑り込むように入ってきて夕紀達に


「大変よ!夕紀!白夜ちゃんがさらわれた!!」

「へ?」


呆然とする夕紀に、白夜はくわえたての煎餅を床に落とした。


「な、なんだって?!ワシがさらわれただって?!」

「そうなの!急いで探さないと!!」

「・・・クッ、ワシとした事が・・・不覚な。わかった!早く助けよう!」

「え?えぇ?!」


戸惑う夕紀を余所目に、二人は慌てるように外に向かった。


「ちょ、ちょっと待ってよ二人とも!!」


状況が理解できないまま、夕紀は急いで二人の後を追った。

玄関を出た白夜が立ち止まった。


「どうしたの?」


白夜の手を引いてた千歳が不思議そうに尋ねた。


「うむ。ちょっと待ってくれ。捜索用の分身を出す。」


そう言うと、白夜の後ろから三羽の鷹が飛び立っていった。


「よし。コレで良いだろう。・・・さぁ、急ごうか。」

「えぇ。」

「ちょ、待って!私も付いてく!」


慌てて玄関から飛び出てきた夕紀を連れて、三人は車に乗り込んだ。

その時、白夜は千歳の横に置いてある荷物に気付いた。


「その荷物は?」

「え?あぁ・・・そう!これ、白夜ちゃんがさらわれた時に落とした荷物なの。」

「貸して貰えるか?」

「えぇ。どうぞ。」

「ありがとう。」


白夜は千歳から荷物を受け取ると、ニオイを嗅いでから荷物を千歳に返した。


「もういいの?」

「うむ。」


白夜が返事した後に、外で携帯電話を使用していた中村が運転席に座った。


「お待たせしました。お嬢様。・・・申し訳ございません。全力で捜索しているのですが、有力な情報がまだ入手出来ておりません。」


申し訳なさそうな表情をする中村に、白夜が声をかけた。


「中村殿。すまんが、ここら一帯の地図を出して貰えないか?」

「?・・・地図・・・で、ございますか?・・・わかりました。少々お待ちを・・・。」


白夜に言われ、中村は不思議そうな表情を浮かべながらも指示通り、タッチパネル式のカーナビを起動させた。


「おぉ?!凄いな、それは!」

「おや?こういうモノは、初めてですか?」

「うむ!」


中村の操作を興味津々で眺める白夜の姿に、思わず全員がキュンとした。


「この手のモノに興味がおありなら、今度の機会に教えいたしましょう。・・・どうぞ、この地域一帯の地図でございます。」


中村は地図を表示させて白夜に見せると、白夜は身体を乗り出して、山の方に指をさした。


「此処に進んでくれ。」

「此処に・・・ですか?」

「うむ。」

「・・・なんと言いましょうか・・・ピンポイントに正確ですな。何か根拠でも?」

「・・・ワシの勘だ。」

「勘・・・ですか?・・・確かに、女性の勘は恐ろしいですからな・・・ガタガタガタ・・・。」


深く追求されなかったのは有り難かったが、中村の怯え様は尋常がなかった・・・過去に何かトラウマになる事があったのか、追求は避けた。そして、車は白夜が指した山に向けて移動を開始した。



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