第五十二話 提案
四人はファーストフード店に足を運んだ。各々が席について、最初にジュースを頼んだ。
「じゃぁ、最初に一番聞きたい事があるんだけど・・・。」
店員が離れた後に、最初に会話を切り出したのは夕紀だった。
「それは、白夜!」
「はい?」
イキナリ名前を呼ばれたので、キョトンとした顔で思わず返事してしまった白夜に夕紀は一瞬、言葉を詰まらせた。
「クッ・・・油断したわ。余りの可愛さに聞く内容を忘れるところだった。」
夕紀は気を取り直して、改めて白夜に尋ねた。
「あの大金をどうやって手に入れたか聞かせてくれる?白夜。」
「あ!それ、私も気になるわ。こんな幼い子が稼げる金額じゃ無いモノね?」
「うふふ・・・どんな事したの?白夜ちゃん。」
詰め寄る三人に白夜は困った表情を浮かべて、頬を軽く掻いた。
「んー・・・とある男の依頼で引き受けた仕事の報酬・・・かな?」
それを聞いた三人は、様々な反応で返してきた。
「『とある男』って誰よ?!こんな幼女に何やらせたのよ!!」
「犯罪のニオイがするわ・・・。」
「ダメよ白夜ちゃん!もっと、自分を大切にしないと!!」
本当の事は言えないし、苦笑いして誤魔化すしかできなかった。
それでも、三人は更に詰め寄り声を揃えた。
「何されたの?」
「い、いや・・・ちょっとした仕事の手伝いで・・・変な仕事ではない・・・。」
「それで、その大金?おかしいわよ!」
「あ~う~・・・(困ったな・・・無関係の人間が居るから、正直に話せないし・・・。)」
説明に困ってる白夜は、ふとテレビを見て、お化け屋敷のCMで閃いた。
「え~と・・・そう、ちょっとした、お化けの仕事で貰った報酬なんだ。」
「えー・・・?お・ば・け~?本当に~?」
疑念の眼差しで見る夕紀とは違い、千歳は何となく白夜の意図を理解したのか納得したように、軽く手を叩いた。
「あーあー、なるほど。白夜ちゃんがした仕事・・・何となくわかったかも。」
「え?千歳には心当たり有るの?」
「何となくよ?」
そう言って、千歳は白夜の隣に行き耳元でささやいた。
「ヒロミが居ると言いにくい事なのね?」
千歳がそう聞くと白夜は頷いた。それを見て、千歳は納得した表情でニコッと笑って席に戻ると、ヒロミと夕紀が聞いてきた。
「どんな仕事?」
「うふふ・・・そうね。白夜ちゃん位しか出来ない仕事かもね。」
「そうなの?」
「えぇ。白夜ちゃんも困ってるし、本題に入りましょう。」
「うぅ・・・ものすっごく気になるけど・・・千歳がそう言うなら、わかったわ。」
こうして、千歳のフォローで難を逃れた白夜はホッと胸をなで下ろした。
丁度、その時に店員が人数分の飲み物を持って来た。
全員に飲み物が行き渡り、それぞれがコップを持った。白夜も周りの雰囲気に合わせて、取りあえずコップを持ったままの状態で待機した。
「じゃぁ・・・バンドの成功を祈って・・・乾杯!」
「かんぱ~い!」
「か、かんぱい!」
ヒロミの合図で皆がグラスを合わせ、白夜も遅れてグラスを合わせた。
それそれが一口ジュースを飲んでから、今年の学校祭の話を始めた。
「ねぇ、ねぇ、所でさ。クラスでの出しモノで、何か良いアイデアない?」
「あ。そう言えば、ヒロミは実行委員もしてたんだっけ?それ、今から決めるの早くない?」
「そんな事無いわよ。早めに決めた方が準備も余裕もって出来るし、他のクラスと被らなくて済むでしょ?」
「なるほど・・・じゃぁさ。メイド喫茶とかはどう?」
「んー・・・それだと、もう、在り来たりじゃない?」
「そっか・・・。」
「もっと、インパクトのある出しモノが良いなぁ。」
「例えば?」
「えーと・・・来てくれた人達がもう一度来たくなるような所かな。」
「なるほど・・・折角さ、可愛い子が多いんだから活用しないとね。」
「ほほぉ。自分で言いますか?」
「んー・・・ぶっちゃけ、レン君の女装姿が見たい!」
「ぶっ!・・・・相変わらず、腐ってるわね・・・夕紀。」
「いやぁ・・・それほどでも。」
「褒めてないわよ。」
照れ笑いする夕紀に、苦笑いしながらヒロミがツッコンだ。
「・・・ったく、ねぇ、千歳?あれ?千歳?」
ヒロミは隣に座っていたはずの千歳の姿が無く、周りを探してみると、白夜の横に座り込んで何かを話していた。
「ちょっと!千歳!何やってるの!」
「あら?ごめんなさい。ちょっと、白夜ちゃんと話し込んでいたわ。」
「もぉ・・・しっかりしてよ。生徒会長なんだから。」
「うふふ・・・だって、白夜ちゃんが可愛いんですもの。」
そう言って、千歳は白夜に抱きついて頬ずりをした。それを見た夕紀が阻止しする為、千歳から白夜を離そうとしていた。
ヒロミはタメ息をついて、
「あなた達・・・その子が本当に好きなのね?いつも生徒会長として、毅然とした態度の千歳も・・・その子の前じゃ、デレデレになってるし。」
「ホント・・・私の白夜にベタベタしすぎ!」
「あら?あなただけの白夜ちゃんじゃないのよ。」
「ハイハイ。そこ、ケンカしない。」
睨み合う夕紀と千歳の仲裁にヒロミが入った。
「そんな事より、何か良い案を出してよ。」
「やっぱり・・・メイド喫茶ね。」
「そう?白夜ちゃんの話でも出てたけど、お化け屋敷も良いわね。」
「メイド喫茶だって!」
「お化け屋敷もおもしろそうよ。」
「メイド喫茶!」
「お化け屋敷よ!」
再び対立する二人に、ヒロミは諦めににたタメ息をした。ジュースをストローですすりながら、三人のやりとりを見ていた白夜がボソリと呟いた。
「合わせたらどうだ?」
「?!」
何かの衝撃に撃たれたような表情で、三人は白夜の方を向き、一瞬、白夜は驚いて身をすくめた。
「良いアイデアだわ!白夜!」
「お化けにコスプレするのね?バリエーションが豊富で退屈しないわね。」
「お化け喫茶か・・・いいわね。この案は通したいわね。」
案がまとまり盛り上がる三人を見守りながら、ふと、白夜は太陽光が差し込む窓に目をやった。
「今日も良い天気だ。」
サンサンと照り続ける日の光を浴びながら、物思いに更ける白夜だった。