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第四十九話  暇


夕紀を見送り、いつもの様に家の中を片付けたり掃除などをして家事仕事が段々板に付いてきた白夜は、要領も良くなり暇な時間が多くなってきた。


「さて・・・何をしようかな?」


白夜は日向に当たりながら、洗濯物をたたんでいると、小さい式神が白夜の側に降りてきたと同時に、手紙へと変わった。


「海翔からか?」


白夜は手紙を拾うと、封筒を開けて中身を確認した。


「ふむ・・・。昨日の報酬がもう出たのか。明日、持ってくる・・・と。」


その手紙を読みながら、白夜は腕を組んで考えた。


「今日は、暇だし・・・これから取りに行ってもいいな。」


そう言って、洗濯物をたたみ終えてから立ち上がると、白夜は早速出かける準備をした。

支度も済み、玄関を出て鍵を閉めると、先ほどの手紙を取り出して白夜はその手紙から出ている微かな霊力を辿り歩き始めた。

霊力を辿り、着いた場所はお世辞でも・・・余り綺麗とは言えないアパートだった。


「あやつは、こんな処に住んでるのか?」


白夜は取りあえず、海翔達が住んでる部屋を探した。


「ここか・・・。」


その部屋には標識は出ていなかったが、確かに海翔の霊力を感じた。早速、白夜はジャンプして呼び鈴を押した。

三回ほど鳴らしたときに、扉が開いた。


「誰だ?・・・まったく。」


寝癖のついた頭を掻きながら、海翔が扉を開けた。


「よう。・・・なんだ。寝てたのか?」


海翔は白夜の顔を見た瞬間、ゆっくりと扉を閉めた。


「コラ!わざわざ出向いてやったのに、閉めるヤツがあるか!」

「うるさい!明日、持って行くと書いてあっただろ!!」

「良いではないか。手間を省いてやったのだ。」

「わかった。わかった。金は渡すからさっさと帰れ。」

「まぁ、そう言うな。ついでだから、飯も作ってやるから中に入れろ。」

「構うな!そこで待ってろ。」

「お主・・・こんな幼い娘を外で待たせる気か?ひどいヤツだな・・・。」


白夜は夕紀達との付き合いで習得した嘘泣きを扉の前で始めた。流石に、気まずくなった海翔は扉を開けてから、白夜を中へと引っ張り込んだ。


「お前・・・俺を社会的に抹殺する気か?」

「それは、それでおもしろいな。」

「貴様ぁ・・・。」


拳を振るわせて怒る海翔に、白夜はクスクスと笑いながらはぐらかした。


「冗談だ。しかし、少しは掃除したらどうだ?」

「うるさい!用件を済ましたら、さっさと帰れ!」

「ふむ。そうだな、済ます用件が増えたから、取りあえず片づけるぞ。」

「はぁ??」

「はぁ?ではない!こんな処で飯が作れるか!さっさと顔洗ってこい!」


海翔は白夜の気迫に負けて、渋々顔を洗いに行った。

白夜は机の上に食材の入ったレジ袋を置くと、その場で散乱しているモノを片づけ始めた。海翔が顔を洗って帰ってくると、すぐさま白夜が質問した。


「お主・・・洗濯物はいつも何処でしているのだ?」

「あぁ、それなら、近くのコインランドリーで洗濯してる。」

「そうか、ならコレを洗濯してこい。」


そう言って、白夜はそこら辺に散乱していた衣類を袋に詰め込み、海翔に渡した。


「な、何故俺が・・・。」

「文句を言うな!お主等の服だろ?さっさと行ってくる!」

「わ、わかった・・・。」


海翔は白夜に押し切られ、ブツブツ文句を言いながら部屋を出て行った。


「まったく・・・よくこんな処で生活できるな。」


白夜は腰に手を当てて部屋を見渡してら窓を開けて、本格的に掃除を始めた。

海翔が乾いた服を持って帰ってきたときには見違えるような程、部屋の中が片づいていた。


「お?遅かったな。コッチはもうほとんど終わったぞ。」

「あ、あぁ・・・ついでに服も乾かしてきたからな。」


部屋の変わりように、海翔は少し驚いてその場に立ちつくしていた。それを見た白夜はタメ息をついてから腕を組んで、


「ワシばかり働かせないで、お主も手伝わんか。・・・ほれ、こっちに来て布団干すの手伝え。」

「あぁ、わかった。」


いつの間にか白夜に仕切られて、指示されるがまま海翔は動いていた。


「まったく・・・だらしないな。お主、それでは嫁なんてできないぞ?」

「なッ!?」

白夜の突然のキツイ一言に、海翔はムキになって言い返した。


「う、うるさい!貴様は俺の母親か?」

「そうではないが・・・お主の親が余りにも不憫で・・・。」

「余計なお世話だ!・・・ったく・・・。」


顔を赤くして、不機嫌そうに布団を叩く海翔の姿に、クックックッと白夜は笑っていた。

布団も干して、部屋も見違えるように片づいたところで、白夜は机の上に置いてたレジ袋を台所に持って行った。


「どうせ、冷蔵庫には何もないだろうと思って、買ってきてやったぞ。」


そう言いながら、台所にあった小さい冷蔵庫を開けた。


「うわっ!本当に何もないな・・・お主等の食生活が不安になってきたな。」

「お前に心配される筋合いはない!わざわざ、何故そんなモノを買ってきたんだ?」

「人様の家に行く以上は手土産が必要だろ?それに、お主を心配しているのではない。育ち盛りの弟が心配なだけだ。・・・だらしない兄を持って弟が可哀想だ。」

「本当に・・・お前は嫌なヤツだな・・・。」

「ふふ~ん。別にお主に好かれようとは思わん。」


そう笑いながら、白夜は料理を始めた。ムスッとした表情の海翔は、することが無いので座って料理が出来上がるのを待っていた。


「すまんが、皿を取ってくれないか?」


海翔は無言で立ち上がると、皿を取って白夜に渡した。


「コレで良いのか?」

「うむ、其処に置いてくれ。」


海翔は流し台の上に皿を置いて、白夜は皿の上に出来たてのおかずを移した。


「よし!我ながら上出来だ。」


出来上がったおかずに満足気な表情を浮かべる白夜、いいニオイに思わず海翔は唾を飲み込んだ。


「さて・・・どうせ、朝食べてないのだろ?」

「え?いや、俺は・・・。」

「遠慮するな。それを机に運んで食べていろ。ご飯は・・・無いか。まぁ、おかずだけでも大丈夫だろ。」


白夜は使った道具を洗って片づけていた。

その後ろで、無心になって海翔はおかずを食べていた。


「ご飯は炊けるのだろ?」

「・・・あぁ、それぐらいはできる。」

「なら、肉じゃがを作って置いてやるから、弟が帰ってきたら温めてやってくれ。」


そう言いながら振り向くと、すでに皿の中身は綺麗に無くなっていた。それを見て白夜はクスクスと笑いながら、


「相当、腹が減っていたのだな?」

「あ・・・いや、久しぶりにまともな飯だったので、つい・・・。」

「ふっ・・・まぁよい。その様子だと、まだ物足りなさそうだな。」


白夜は再びレジ袋から材料を取り出した。


「米はあるのか?」

「あぁ、台所の下に缶で入れてある。」


白夜は台所の下を探して、缶の中に入っていた米を取り出した。


「ついでだから、飯も炊いて置いてやる。」


そう言って、水を入れて手際よく米を研ぎ、炊飯器にセットしてスタートを押した。それから、二品目のおかずを作り始めた。



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