第四話 ショッピング(前編) ※注意!挿絵が有ります
二人の乗ったバスは、街へと到着した。
バスが停車し先に下りた夕紀、手渡されたお金を不慣れな手つきで払い、降りてきた白夜の姿に、周りの人々は注目した。
「白髪の・・女の・・・子?」
「外国の子かな?」
「・・・染めてるのかな?」
「可愛い。」
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周りの声がイヤでも二人の耳に入った。
「あちゃー。やっぱり、その髪の色が目立つか・・・。」
「大人しく姿消した方がよかったか?」
「ダメよ!その姿で買い物つきあってほしいの!」
「そ、そうか?」
夕紀はどうやら少女の姿で居てほしいらしい。まぁ・・・特に断る理由もないし、白夜は夕紀の願いに従うことにした。
「でも・・・流石にその髪色は目立つか・・・よし!」
夕紀は何か思い立った様に白夜の手を引っ張った。
「お、おい!どこに向かうのだ?」
「帽子を買いに行こう!それ被ればたぶん目立たなくなるかも」
そう言って、二人は百貨店に駆け込んだ。
やはり、百貨店内でも白夜は注目の的だった。
流石の白夜も人の目線が気になるようで、夕紀の後ろに隠れるように歩いてた。
「流石に・・・。ちょ、ちょっと視線が気になるな・・・。」
「もう少しの辛抱よ。我慢して・・・。」
ふと、夕紀の目と白夜の目が合った。すぐに、夕紀は顔を背けた。
「どうした?笑ってるのか?!」
「ち、ちが・・・な、何でもない!」
「そ、そうか?」
夕紀は、赤面して恥ずかしそうに歩く白夜の姿が可愛すぎてたまらなく・・・『このままでもいいかなぁ』と思う自分と葛藤していたのだ。
行く途中途中で色んな人に声をかけられ、断りながらも、帽子を販売してる店舗に辿り着いた。
「や、やっと着いたぁ・・・。」
「なぜ・・・こうも、人が集まってくるんだ?」
「目立つって割と損だね」
普段行きなれてる筈の百貨店で、目的地まで時間がかかったのは初めてだった。まぁ・・・移動中に、白夜がエスカレーターで悪戦苦闘してたのもあったが・・・可愛かったから良しとする。
・・・・なんだか、お姉ちゃんになったような気分の夕紀だった。
「妹って・・・こんな感じなのかなぁ?」
「ん?なんか言ったか?」
「うんん!別に!」
夕紀は、慌てて帽子を取って白夜に被せた。
「あ、この帽子似合うなぁ・・・これでいいかな。」
ツバの広い麦わら帽子を被せて夕紀は、白夜の周りを一周した。
腕を組み一回頷くと、帽子を被せたまま白夜を連れてレジカウンターまで移動した。
「すみませーん!この帽子お願いできますか?」
「あら?お連れ様の帽子ですか?」
「はい。このまま被って行きたいので、値札とかも外してもらえますか?」
「わかりました。お預かりしますね。」
店員に帽子を渡し会計を済ませて、再び白夜に被せた。
「よく似合ってますね。」
店員の言葉に白夜は照れくさそうに軽くお辞儀した。店員と夕紀はその仕草に、頬をゆるませて、つい見とれてしまった。
帽子も購入したので取りあえず、今は百貨店に用がないので外に移動した。
外に出て夕紀は大きく腕を伸ばした。
「さーて・・・次はどこ行こうかなぁ?」
「特に予定は無いのか?」
後ろから付いてきた白夜が夕紀に質問した。その問いに夕紀は、腕を伸ばしたまま首をかしげて、
「親からの仕送りがきてる筈だから、それ取りに行くのと・・・夕飯の材料とあなたにお礼もしたいから・・・。」
そう言って白夜の方に振り向き、
「ね!あなたの好きなモノって何?」
いきなりの問いかけに、白夜は目を丸くして少しうつむいて考えこんだ。
しばらくして顔をあげた。
「好き・・・と言うのでは無いが、食べてみたいモノがあるな・・・。」
「なになに?」
白夜は、少し照れくさそうに
「そ、”そふとくりーむ”とやらを食べてみたい・・・。」
夕紀は言い知れぬ衝撃が身体全身を駆け巡った。そして、フラフラっと白夜に近づいた。
「ど、どうしたんだ?夕紀?フラフラじゃないか。」
白夜の可愛さにとうとう我慢できず、夕紀は白夜に抱きついた。いきなりの夕紀の行動に白夜は驚いた
「うわっ!どうした?!」
「あぁ!もぅ!!可愛すぎるよぉ、白夜は!」
夕紀は白夜の行動に魅了され、必要以上に頭を撫でて頬ずりにをした。
「うわっぷ!は、はな、離せ!」
困惑しながら夕紀を何とか引き離したが、その弾みで白夜と夕紀は尻餅をついた。
「ハァハァ・・・ち、血迷ったか?お主!」
「もう・・・あなたが可愛すぎるのがいけないのよ・・・。」
完全に夕紀の目が据わってた…白夜は身の危険を感じおびえていた。
その時、誰かが夕紀の頭を軽く叩いた。
「コラッ!何、幼い子を襲おうとしてるのよ。夕紀」
「え?」
その声に夕紀は正気を取り戻し、声の主の方へと振り返った。
「え?なんで?」
そこには、夕紀と同年代だが、少し大人びた顔の少女が・・・腕を組んで呆れた顔で立っていた。