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第四十六話  就寝


ご飯を食べ終えて、夕紀が居間に戻ってくると・・・白夜が横になって寝ていたので、少し心配になって夕紀が尋ねた。


「どうしたの?白夜・・・調子が悪いの?」

「・・・いや、今日は疲れているだけだ。心配するな。」

「・・・そう?」


不安そうな声になる夕紀に、白夜はゆっくり立ち上がると


「風呂行ってくる。・・・一緒に来るか?」

「行く!」


白夜の問いかけに即答で答えた夕紀は、上機嫌に白夜の背中を軽く押しながら風呂へと向かった。


二人は話をしながら服を脱いで、浴場へ入っていった。

早速、お湯で二人は身体を洗い流した後、白夜の髪を夕紀が丁寧に洗っていた。


「かゆいところ無い?」

「うむ、大丈夫だ。」


夕紀は白夜に話しかけながら髪を洗い流し、先に白夜が湯に浸かり夕紀が頭を洗っている時、浴槽にもたれかかって、ウトウトしていた。

髪を洗い終わった後に夕紀が白夜の方に振り向くと、浴槽に白夜の姿が無く慌てて湯の中を覗き込むと白夜が沈んでいた。


「ちょ!白夜!何してるの?!」


そう言って、白夜を引き上げると、力なく半分寝ていた。


「もう!そんなに眠いんだったら、身体拭いて寝室に連れて行ってあげる。」

「・・・うみゅ・・・。」


白夜は力ない返事をして頷いた。夕紀は白夜を抱えて浴場を出ると、床に白夜を座らせてから急いで自分の身体を拭き終えて着替えた後、床で力なく倒れてる白夜を起こした。


「もう・・・今日の白夜は変よ?ほら、起きて。」

「・・・う~・・・。」


目を擦りながら人形の様に無抵抗で座る白夜に、張り合いが無い夕紀は残念そうにタメ息をすると取りあえず身体を拭き、服を着させてから白夜を背中に担いで自分の部屋まで向かった。

夕紀は部屋のドアを開けてから、電気を付けて白夜を自分のベッドに寝かした。

ベッドの上で、スッカリ寝てしまった白夜の顔にかかる髪をかき上げて、夕紀はつい微笑んでしまった。


「本当に・・・寝顔が可愛いなぁ。」


夕紀は白夜に布団をかけてから、電気を切って白夜の横に寄り添うように布団へと潜り込んだ。

白夜の顔を眺めながら寝息を肌で感じて、夕紀はたまらず白夜のおでこにキスをした。 そして、夕紀も目を閉じて眠りについた。


――――・・・・夕紀は猛スピードで空を飛んでいた・・・しかし、不思議と怖いと感じなかった。何となくだが、コレは夢なんだ―――そう感じていた。

そうすると、厚い雲を抜けて小さいがのどかな村の上に出た。


―――何処だろ?此処・・・私の記憶にもない村だ・・・。


そう思い、ゆっくりと村に近づいて降り立った。

その村は、ボロボロに着尽かされた布の着物を着ている貧しい村だったが、村人の笑い声や子供が元気に遊び回る暖かい何かを感じる村だった。

その時、遊んでいた一人の子供が何かに気付いて夕紀の方へ手を振りながら近づいてきた。


・・・え?私に気付いた?


そう思った時、子供は夕紀をすり抜けて後ろに立っていた青年に飛びついた。


「おぉっと・・・良い子にしていたか?」

「うん!お兄ちゃんはお仕事終わったの?」

「いや、これから村を降りて隣町に行ってくる。」

「えぇ?やだよ~・・・アタイと遊ぼうよ。」

「そう言うな。ちゃーんとお土産を買ってくるから、良い子にしてろよ。」

「本当に?絶対だよ?約束だよ?」

「あぁ・・・約束だ。」

「やったー!!」


兄と思われる青年の周りを回りながら喜ぶ光景がとても微笑ましかったっと同時に、リアルすぎる夢に夕紀は、少し疑問に思った。

すると、辺りが暗くなり電気の通ってない時代なのか、家に灯る小さな光以外、外は真っ暗でほとんど見えなかった。


やがて・・・静寂な暗闇を真っ赤に照らす炎が村を襲った。それは、武装した鎧武者達が小さな村を襲ったのである。

武者達は逃げ惑う村人を捕まえては、笑いながら容赦無く切り捨てていた。

その光景はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図のようだった・・・夕紀は直視出来ず目を背けていた。


やがて・・・村を壊滅させ、村は静寂を取り戻した・・・道や家に転がる死体は、老若男女問わず殺されていた。その中で、夕紀が最初に見た女の子の無残な死体が転がっていた。

夕紀はその光景が胸を締め付けるほど悲しく、その場で力なく座り込んでしまった。


―――・・・なんなの?この夢は、ひどすぎる・・・もう、見たくないから・・・夢なら早く覚めて・・・。


そう思ったとき、背後で何かを落とす音が聞こえた。

夕紀が振り向くと、背後には女の子のお兄さんが立っていた・・・そして、落としたモノは妹の為に買ってきていた、お土産の木で出来たおもちゃだった。


「な・・・なんだよ・・・これ・・・。」


急いで帰ってきたのか・・・呼吸は乱れたまま、その場で座り込んでしまった。

その時、妹の死体に気付いて這いずるように駆け寄った。


「おい!サヨ!起きろ!こんな処で寝てたら風邪をひくぞ?そうだ。お土産を買ってきたんだぞ。珍しいおもちゃなんだ。お兄ちゃんと一緒に遊ぼう。だから、だから・・・目を開けてくれ・・・。」


必死に妹に声かけて身体を揺する兄は、力なく目を覚ます事のない妹の身体を強く抱きしめてから夜の空に向けてやるせない絶望を咆哮にしてあげた。



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