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第四十三話  依頼


海翔と白夜は役場の前に来ていた。


「俺が依頼を引き受けてくるから、お前は此処で待っていろ。」

「わかった。」


頷いて白夜は海翔に言われた通り役場の外で待機した。

しばらくして、海翔が役所から出てくると白夜はしゃがみ込んで何かを見ていた。

不思議そうに海翔が白夜に近づいた。


「何を見てるんだ?」

「ん?もう終わったのか?・・・いや、暇だったのでな。死んでる虫に群がってるアリを見ていた。」

「・・・なんで、そんなモノを見てるんだ?」


海翔は半分、呆れた表情を浮かべて白夜の顔を見た。


「特に意味はない。さてと、何時までも此処にいたら、また、何人かに声をかけられるからな。・・・そろそろ行くか?」

「そうだな。さっさと行って、終わらせてくるか。」


白夜は立ち上がりながら服を払って、先に歩み出した海翔の後ろを付いて行くように彩葉山に向かって歩き出した。


彩葉山にて・・・―――


「どうした海翔?もう息が上がってるのか?まだ歩き出したばかりだろ?」

「う、うるさい。・・・人間には、この山道は堪えるんだ。」


山の急斜面を、木々に掴まりながら登る海翔をしり目に、白夜は影から出した大きな狼にまたがってスイスイと進んでいた。


「しかし・・・妙な雰囲気だな・・・この山全体から、濃く嫌な霊圧を感じるな。」

「あぁ・・・方向感覚が狂いそうなほど、重苦しい霊圧だ。」


ようやく、二人は祠のあった作業現場に到着した。

先に到着した白夜は顔をしかめた。


「ひどい有様だ・・・。まさに、血生臭いっと言ったところか。」


回収に来られないだけあって、休憩小屋や重機に生々しく残った大量の血痕と元・人間だった腐った肉塊が散乱していた・・・。まだ、山道を歩いて疲れが残っている海翔が、腐臭の漂う肉塊に近づき調べた。


「鋭い断面だな・・・しかし、妙だな・・・」

「どうした?」


死体を調べてる海翔に寄り添って、鼻を押さえながら白夜が尋ねた。


「これだけの死体が転がってるのに、霊魂の気配が全く感じない・・・まるで、切られた断面から根こそぎ魂を喰われた感じだな。」

「妖刀の類か?」

「多分な。」


海翔はゆっくりと立ち上がると、辺りを見渡した。


「禍々しい霊気の痕跡がまだ残ってるな・・・コレを辿れば、目当てのモノにぶつかるだろう。」


海翔は持参していたペットボトルの水を少し飲み、息を整えてから霊気の痕跡を辿るように歩き出し、白夜は狼にまたがったまま海翔の後を付いていった。


しばらく歩いていたら、昼間なのに光が余り差し込んで来ないほど、森の深くまで着た。


「大分・・・目標に近づいて来たな。」


そう呟いて、海翔が足を進めていた時・・・何処からか、乾いた堅いモノが擦れる音が、カシャ・・・カシャ・・・と音を立てて段々近づいて来ていた。

やがて、木々の隙間から白骨化した動く骸が現れた。


「こいつが・・・祟りの正体か。」


海翔は札を取り出して臨戦態勢に入った瞬間、まるで邪魔な草木を払うように海翔を払い飛ばして、一直線に白夜の懐に潜り込んだ。そして、骸の後から遠心力で弧を描くような斬撃が白夜に襲いかかった。

振り下ろされた攻撃は地面を大きく割り、土埃が舞い上がった。

その土埃から、攻撃をかわして白夜が飛び出してきた。


「大丈夫か?海翔。」

「あぁ・・・なんとか。」


避けたはずの白夜の胸元は、服を着られて肌から血がにじみ出ていた。

よろめきながら立ち上がる海翔がお札を投げ飛ばし、それを骸が腕で防ごうとした瞬間に爆発した。


「お前こそ大丈夫なのか?」


足を引きづりながら、白夜に近づいた海翔が尋ねた。


「問題ない・・・かすり傷だ。しかし、用心しろ。あやつは、見た目以上に強いぞ。」


爆風で舞い上がった土埃の方向を睨み付けたまま、白夜は身構えていた。

やがて土埃も収まり・・・爆発を受けても無傷で立っている骸が、まるで笑っているようにカラカラと骨を鳴らしていた。


「お主の補助だけの簡単な仕事だと思ったのだが・・・厄介なヤツが相手のようだ・・・。」


白夜は冷や汗を流しながら、そう呟いた。

早すぎて見えなかったが、今、骸が手にしている武器は大きく異形な大剣だった。

それは、二本の日本刀の(ミネ)(ミネ)を不気味に脈打つ肉塊で繋がっている武器で、それを片手で軽々振り回す骸に畏怖さえも感じた。

その時、森がざわめきだし、微かな低い声が骸から聞こえてきた。


「・・セ・・・コ・・セ・・・コロセ・・・殺セ、殺セ殺セ殺セ・・・闘エ!!」


妖気の昂ぶりを感じたその時、骸の体から青黒い炎の様な妖気が吹き出し、その衝撃が白夜達の下まで届き腕で目を護った瞬間、骸は再び白夜に攻撃を仕掛けてきた。

鋭い連続攻撃を紙一重で躱しながら、再び骸から距離を取り、すかさず影から分身を三体呼び出して、骸に仕向けたが・・・一振りで三体とも斬り捨てられた。


「やはりダメか・・・。」


白夜は骸と間合いを取りながら、海翔に近づいた。


「どうやら、あやつの狙いはワシのようだ。すまんが、コレを持っていてくれ。」


そう言うと、おもむろに服を脱ぎ始めた。

海翔は赤面し、慌てて目を覆った。


「バ?!な、何故脱ぐんだ?!」

「着替えを持って来てないからな。少し本気にならないと、勝てそうにないのでな。」


脱いだ服と下着を海翔に渡し、何も身につけない格好で骸の前に立った。


「律儀なヤツだな。服を脱ぐまで待ってくれたのか?」


茶化す白夜に、今まで構えず攻撃してきた骸が初めて武器を両手で構えた。


「なるほど、お主も本気をだす・・・っと言ったところか?」


白夜も身を構え、身体がみるみる巨大な獣人に変化していった。

骸は素早く白夜に斬りつけたが、それ以上の早さで避けてからカウンターを打ち込み骸を吹き飛ばしたが、その際に吹き飛ばされながらも白夜に斬り傷を負わせた。


「タダデハヤラレンカ・・・シカシ、厄介ナ刃ダ・・・。」


白夜は傷口を押さえながら、その傷の異変に気付いた。

骸の持つ刃に斬られた場所から、少しだが霊力を奪われていた。


「魂ヲ喰ラウ刃カ・・・斬ラレタ者ハ体力(タイリョク)ヲ消耗シ、逆ニ斬ッタ本人ハ回復スルノカ。」


骸は立ち上がり、再び笑うように骨を鳴らしてから武器を構えた。そして・・・また、間合いを詰めてきたが、白夜は斬られないように避けながらスキを狙っていた。

妖同士の壮絶な戦いに、海翔は呆然と見ているしかできなかった。


「俺は・・・あんな化け物と闘っていたのか・・・。」


白夜がどれほど手加減していたのか、痛感して自分が如何に弱いかを思い知った。

無力に打ちしおれている海翔の近くに白夜が吹き飛ばされてきた。



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