第三十二話 コーディネイト
「ねぇねぇ。コレなんてどう?」
「良いわね。こっちもどうかしら?」
「あっ!これなんかも良いんじゃない?」
盛り上がる三人の中・・・一人、その中に入れずにいた。
「あら?どうしたの?白夜ちゃん・・・そんな顔して。」
千歳は、呆気にとられた様な表情を浮かべる白夜に気づいた。
「いや・・・なんと言うか・・・お主等に、なんだか圧倒されてな。ついて行けてないとと言うか・・・」
「何言ってるのよ白夜は・・・。あなたの服選んでるんだから、こっちに来て一緒に選びなよ。」
白夜は夕紀に手を引かれて輪に加わった。
「ほ~ら!どれがいい?」
「う、うむ・・・しかし、どうもこう言うのは苦手で・・・。」
「もう!仕方ないなぁ。じゃぁ、さっき私たちが選んだヤツを順番に試着してみて。・・・はい!私が選んだヤツ。」
そう言って夕紀は、さっき自分が選んだ服を白夜に渡した。
「あっ!ずるいわよ夕紀!」
「そうよ!そうよ!」
「へっへー。早いモノ勝ちよ!あっちに試着室有るから、着替えてきてね。」
「ぬ?わかった。」
白夜は渡された服を持って、試着室に向かった。
着替えを終えた白夜が試着室のカーテンを開いた。
猫耳の様な物が付いた大きめのパーカーを着た白夜が立って居た。
「大き過ぎる様な気もするが・・・どうだ?」
「あら?良いじゃない。」
「おぉ?!可愛いじゃない!」
「私が選んだのだから、当然でしょ!」
自信満々の夕紀に対抗意識を燃やす千歳とヒロミは、服を選び始めた。
「はーい!二番手は私ね!」
白夜に着せる服を持って、ヒロミが手を挙げた。
「はい。これ、着方がわからなかったら手伝ってあげる。」
「ふむ・・・じゃぁ、手伝って貰おうか?」
「あ!ズルイ!!個室で二人っきりなんて・・・不潔よ!」
「あなたじゃないんだから、変な事しないわよ!」
「むぐぅ・・・。」
あきれ顔で反論するヒロミに言い返す事の出来ない夕紀は、二人が試着室に入っていくのを羨ましそうに眺めていた。
しばらくして、試着室のカーテンが開いた。
「ジャーン!!お待たせ!」
「おぉ?格好いいじゃない。」
「あら、そう言う服も似合うわね。」
「パンク系で選んでみたの。」
「ヒロミらしいわね。」
ドクロプリントにラメが散りばめられた黒いトップスの上に、アンバランスな長さで袖が分離している黒いジャケットを羽織り、赤いチェック柄のミニスカートをはいた白夜はスカートの長さを気にしながら、恥ずかしそうに
「ちょっと派手すぎる気がするが・・・。」
「そんな事はないわ。白夜ちゃんって何着ても似合うのね。羨ましいは・・・本当にこんな可愛い妹居たら自慢よねぇ・・・。」
ヒロミの言葉に首を傾げながら、千歳が問いかけた。
「あら?あなた・・・確か三姉妹よね?一番下に妹居るじゃない?」
ヒロミは手を振り、
「あー・・・、ダメダメ。ウチの妹は生意気だし全然可愛くないよ。」
と、苦笑いして若干諦めにも似た表情を浮かべていた。
質問した千歳は、クスクスと笑いながら白夜の前に服を持ってきた。
「じゃぁ・・・次は私ね。はい。」
「うむ。ありがとう。」
千歳は服を渡して、白夜は軽く頷いて服を受け取って、再びカーテンを閉めた。
白夜が着替えている間、三人が会話してる途中でカーテンが開いた。
「すまぬが・・・コレは何処に付けるのだ?」
「あぁ・・・それは、此処に付けるのよ。」
千歳は白夜からボレロを受け取ると、ちゃんと着付けてくれた。
「はい。出来上がり。」
「ありがとう。」
着替えた白夜の服装に、皆が絶賛。
「おぉ・・・清楚で可愛い!」
「クッ・・・やるわね・・・千歳。」
重ね着風ニットワンピにリボン付きの白いボレロを着た白夜が、恥ずかしげに立っていた。
「それでいいんじゃない?」
「う-・・・。悔しいけど可愛い。で、でも・・・値段次第!高かったら無理だからね!」
負け惜しみする夕紀に、千歳は微笑みながら
「フフフ・・・全部含めても、結構安かったわよ。夕紀。」
「ふ、ふふーん。貴方の言う安いってのが疑わしいわ。」
「あら?心外ね。ちゃんと貴方の資金内に納めてあげてるわ。」
「・・・ホント?」
「えぇ、ホントよ。」
「じゃぁ・・・白夜、その服脱いでレジに持って行きましょ。」
「うむ。わかった。ちょっと待っててくれ。」
そう言って、白夜は試着室のカーテンを閉めた。その時、夕紀は無性にカーテンを開けたい衝動に駆られた。
「えい!」
イキナリ試着室のカーテンを開いたのだ。突然の事に白夜は脱ぎかけのまま、硬直した。
「な?!なにをしてるのだバカモノ!!」
白夜は慌てて着直して、夕紀を怒鳴りつけると急いでカーテンを閉めた。
あきれ顔で千歳が夕紀に話しかけた。
「イキナリ何してるの?夕紀は・・・。」
「エヘッ♪ついやっちゃった。」
千歳はタメ息をこぼすと、
「やっちゃったって・・・また、白夜ちゃんに怒られるわよ?」
「でも・・・やりたい気持ちは、わかるわ・・・。」
「ヒロミはわかってくれると思ってた!」
そう言ってヒロミの手を取る夕紀の背後から、着替えを終えた白夜による垂直チョップが夕紀の頭を襲った。
「あいったぁ~・・・!」
「お主は・・・好奇心が旺盛すぎる!」
「いやぁ・・・それほどでもぉ。」
「褒めとらん!」
白夜に怒られてる夕紀を見て、苦笑いする千歳と爆笑してるヒロミ。
「あははは!どっちがお姉さんかわからないわよ。」
「本当ね。」
「ほら、頼んだぞ。」
「ぬぃ・・・。」
夕紀は頭をさすりながら、白夜から服を受け取った。
「さぁ!夕紀が精算してきたら、カラオケいこうか?」
「賛成!」
「ちょっと、レジに行ってくる。」
「うむ。」
夕紀は服を持って駆け足でレジに向かった。その姿を三人は見届け、白夜がタメ息をついた。
「はぁ・・・もう少し、おしとやかに育ってくれないものか・・・。」
感慨深く肩を落とす白夜の台詞に二人はクスクスと笑った。