第二十七話 相談
白夜は、ヒロミと千歳の間へと移動していた。
「え~?!なんで、そっちへ連れてっちゃうのぉ?!」
「あら?白夜ちゃんはみんなのアイドルよ?公平にしなきゃ。」
「ぬ~・・・。」
不服そうに見る夕紀をしり目に、千歳は白夜の頭を撫でていた。
「あ!そうそう、アイドルで思い出したんだけど・・・あなた達、バンドしてみない?」
「え?バンド?」
「そっ!今度、学校祭あるじゃない。それで、バンドやってみようと思って、メンバー探してるのよ。」
「あら?おもしろそうね。」
「えー・・・でも、私、楽器使えないよ?それで、間に合うの?」
興味津々の千歳に対して、夕紀は少し乗り気ではなかった。
「大丈夫よ。ベースくらいならしばらく練習すれば弾けるようになるし、歌だって・・・。」
ヒロミは言葉の途中で、少し考えた。
「そうだ!今度、みんなでカラオケ行かない?」
「突然ね。」
ヒロミの提案に、夕紀が苦笑いした。そして、白夜が『カラオケ』の単語に興味津々だった。
「からおけ?なんだ、それは?」
「みんなで歌って楽しむ場所よ。」
「ほほぉ・・・おもしろそうだな。」
尋ねる白夜の問いかけに、微笑みながらヒロミが答えた。
「本当にこの子、可愛いわね。」
ヒロミは、白夜に抱きついて、
「この子にも歌って貰おうかな。」
と、頬をすり付けながら、ヒロミは提案した。それに同意する感じで、
「いいわね。白夜ちゃんの歌声が聞きたいわ。」
「私は、白夜が行くなら大賛成よ。」
そう言って、皆が白夜に注目した。無論、興味津々の白夜に断る理由もなく、
「是非、行ってみたい!」
と、即答で承諾した。それを聞いたヒロミは手をポンッと叩いて、
「決まりね!じゃぁ・・・今度の日曜日駅前に集合ね!」
「了解。」
「わかったわ。じゃぁ、帰りましょうか?」
予定も決まって、丁度、皆も食べ終わった様なので、全員が席を立った。
その時、店内での視線が白夜に集まっており、少しザワついてた。
話に夢中で、結構、白夜が見られていた事に気づき、千歳は慌てて白夜に帽子を被せた。
「ははは。白夜が今、有名なの忘れてたよ。」
「話に夢中で忘れていたわね。・・・次の日曜までに何か対策を考えないとね。」
三人は、白夜を隠すようにカウンターまで歩き、千歳がお金を払って店を出た。
「なんか・・・不思議な感じね。まるで、アイドル警護のSPみたい。」
そう言ってヒロミが笑い出すと、千歳と夕紀もつられて笑い出した。
「本当ね。あ!千歳ご馳走様。悪いわね。私たちの分までおごってもらって。」
「あら、気にしなくていいのよ。今回、お金払っても惜しくないほど、いい物も見られたから、私は満足よ。」
満足そうな表情を浮かべる千歳を見て、夕紀は苦笑いしてた。
雨も止まずに、四人が店前で話していると、高級車が止まり、中から傘をさして中村が降りてきた。
「お待たせしました。お嬢様。」
微笑みながら中村が近づいて来た。
「タイミングがいいわね?どこかで見てたんじゃないの?」
「ハッハッハッ。とんでもございません。偶然通りがかっただけですよ。お嬢様。」
「そう?なら良いんだけど・・・。」
腕を組んで疑いの眼差しを向ける千歳と、目を合わさずに笑う中村だった。
「それはそうと、皆様お帰りですか?もし良ければお送りしますが?」
「あっ!じゃぁ・・・私頼もうかなぁ・・・。夕紀は?」
「んー・・・私たちは歩いて帰るよ。折角、白夜が傘持ってきてくれたし。」
そう言って、夕紀は白夜が持ってきてくれた傘を見せた。
中村は後部座席のドアを開けて千歳が先に乗り、ヒロミは中村に
「よろしくお願いします。」
っと、頭を下げてから乗り込んでから、窓を開けて二人は顔を見せてた。、
「じゃぁ、先に帰るわね。」
「うん。」
「じゃぁ、白夜ちゃん。またね。」
「今度の日曜日楽しみにしてるよ~。」
そう言って、千歳とヒロミは手を振って、夕紀と白夜も手を振りながら見送った。
車が見えなくなるのを確認してから、二人は持ってる傘を開いた。
「じゃぁ・・・帰ろうか?白夜。」
「うむ。そうだな。」
夕紀は微笑みながら、白夜の方に手を差しのばしてきた。
夕紀の手を取り、白夜は少し照れながらも手を繋いで雨の降る中、傘をさして帰路についた。