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第二十六話  寄り道


――千歳が呼んだ車に四人が乗り込み、和風の雰囲気が漂う甘味茶屋的な店へと到着した。


「では、お嬢様。また後ほどお迎えいたしますので、ごゆっくりどうぞ。」


そう言って、四人を降ろすと中村さんは車に戻り、その場を後にした。


「じゃぁ、行きましょうか。」


千歳の後を三人がついて行った。

店に入ると店員が出てきた。


「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

「4人です。」


千歳が対応している後ろで、白夜は興味津々に店内をキョロキョロと見ていた。

それに気づいたヒロミが白夜に問いかけた。


「こういう処は初めて?」

「うむ!なんかこう・・・ワクワクする!」


目を輝かせて答える白夜の姿に、ヒロミは鼻血が出そうになった。

その前で夕紀と千歳が、必死に自分の中の何かを堪えていた。

店員も初々しい白夜の姿に、一瞬目を奪われていたが、我に返って空いてる席へと四人を案内した。


「注文が決まりましたら、お呼び下さい。」


そう言って、微笑みながら店員は席から離れた。


「あ!誰のおごりかな?」


ヒロミが皆の顔を見渡して聞くと、クスクスと笑いながら千歳が答えた。


「私が支払いますわ。だから遠慮しないで。」

「助かったぁ・・・私、お金持ってきてなかったんだ・・・。」


夕紀がホッとしている横で、白夜は帽子を脱いでメニュー表に釘付けだった。


「おぉ・・・結構種類が沢山あるんだな。」

「あれ?白夜、帽子脱いだな?」

「うむ。食べるのに邪魔だし。」

「そ、そう・・・。」


苦笑いする千歳と夕紀だったが、白夜の嬉しそうな顔を見ていると、『ま、いいか。』っと思えてきた。


「で?白夜は、どれにするの?」


夕紀の問いかけに白夜は、真剣に考え込んでいた。

三人はその姿を、ただ見守っていた。


「んー・・・。やはり、『ちょこぱふぇ』が気になるから、それを頼もうかな・・・。」 「あ!じゃぁ・・・私も白夜と同じで。」

「私も~!」

「じゃぁ・・・みんな同じでいいわね。」


白夜の注文に、つられて応えた二人に千歳はクスクス笑いながら、店員を呼んだ。


「ご注文はお決まりですか?」

「はい。チョコパフェ四つお願いします。」

「ご注文は以上で?」

「他にある?」


千歳の質問に、皆は横に首を振った。


「じゃぁ・・・取りあえず、それで。」

「かしこまりました。」


そう言って店員が離れた。

その間、皆で雑談しながら料理が出来るのを待っていたが、白夜は妙に落ち着きがなかった。


「どうしたの白夜?そんなにソワソワして・・・。」

「ん?いや・・・こういった場所は初めてだから、落ち着かなくて。」


苦笑いする夕紀の顔を見て、ちょっと緊張した感じの表情で微笑んだ。

二人の様子を見ていたヒロミが、千歳に近づいて耳元で尋ねた。


「なに?アノ可愛い生き物は?小動物みたいで抱きしめたいわ。」

「ダメよ。私も夕紀も我慢してるんだから。」


丁度その時、チョコパフェが二つ到着した。


「お待たせしました。残りもすぐお持ちいたしますので。」


店員はそう言って、 先に二つだけ机の上に置き、残りを取りに戻った。


「じゃぁ・・・お先にどーぞ、白夜ちゃん。」

「あ、ありがとう。」


千歳に進められて、チョコパフェを受け取った白夜だが、チョコパフェを見つめたまま食べようとしなかった。


「あら・・・どうしたの?食べていいのよ?」

「う、うむ。でも、皆のが揃ってから食べようかと・・・。」


白夜の純真な心に、一人で食べようとしたヒロミは無言で、スプーンを置いた。

そして、残りのチョコパフェも到着した。


「お待たせしました。ご注文は以上ですね?」

「はい。」

「ごゆっくりどうぞ。」


店員が離れると、千歳は微笑んで


「じゃぁ・・・頂きましょうか。」

「お待たせ白夜。食べよっか?」

「うむ!いただきます!」


白夜は嬉しそうに一口食べた。すると、満面な笑みでゆっくり味わうかの様に飲み込んだ。


「はふぅ・・・おいしぃ・・・」


幸せそうな表情を浮かべる白夜の姿を見て、他の三人も自然と顔が緩んだ。


「ね!写メ撮ってもいい?」


と言いつつも、すでに携帯片手に撮り続けてるヒロミを気にせずに、美味しそうに白夜は食べ続けていた。


「ちょっと、ヒロミ!撮り過ぎよ。」

「ご、ごめん。余りにも可愛すぎたから、興奮しちゃって・・・。」

「気持ちはわかるわ。取りあえず・・・その画像後で送って頂戴。」

「あ!ズルイ!私にも送って!」

「ハイハイ。後で送ってあげるわ。二人とも。」

「やった!」


三人が盛り上がっている中、白夜一人だけがチョコパフェを完食した。


「はふぅ・・・おいしかった・・・。」


満足そうな顔の白夜だが、鼻の先にチョコクリームが付いていた。

それを見た三人は、思わず笑ってしまった。

何故、笑われてるの分からず、不思議そうにキョロキョロしている白夜を見かねて、夕紀がおしぼりを手に取り、


「ほら、鼻先にクリーム付いてるから取ってあげる。こっち向いて。」

「ぬ?そうだったのか・・・すまぬ。」


白夜は夕紀の方に向いて拭いて貰った。


「まさか・・・リアルで鼻先にクリーム付ける子が居るなんて・・・」

「あの天然さが可愛いのよねぇ・・・白夜ちゃんは・・・。」

「あなた達が守りたいのも分かる気がしてきたわ。」


ヒロミと千歳が話してる間に、夕紀は白夜の顔を拭き終えた。


「ハイ!綺麗になったわよ。」


白夜は少し頬を赤らめながら、


「あ、ありがとう。」


その姿に我慢できず、とうとう夕紀は白夜に抱きついた。



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