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第二十三話  退魔師  ※注意!挿絵が有ります

「うへぇ・・・終わったぁ・・・。」

「まさかの不意打ちテスト。運が悪かったね・・・夕紀。」

「うん・・・。」


夕紀は机に伏せたまま、力なく頷いた。

そこへ、笑いながら千歳が近づいて来た。


「テストご苦労様。二人とも。」


夕紀は顔を起こして、千歳を見上げた。


「問題どうだった。解けた?」

「もちろんよ。」

「うへぇ・・・流石、才女。勉強出来る人は違うなぁ・・・。」


夕紀は再び机に伏せると、千歳は不服そうな顔で


「それは違うわよ夕紀。勉強は出来るんじゃなくてするの!」

「へいへい。」


二人を傍目から見ていたヒロミは笑っていた。


「二人のやりとり見てると、なんだか笑える。」

「むぅ・・・。あっ!」


少しふくれっ面の夕紀だったが、何か思い出したように声を出した。


「そう言えば、今朝言ってた。凄い情報って何?」

「え?何のお話?」


ヒロミに対しての夕紀の質問に、千歳も興味を持って体を乗り出した。

ヒロミは顔を近づけて、二人だけに聞こえるように小声で話した。


「実は・・・警察も知らない情報で、強盗事件の時に私のお姉ちゃんが居たの。」

「え?!ほ、本当に?」

「うん。しかも、白髪の少女以外にも、もう一人居たんだって。」


夕紀は、それを聞いた瞬間、気まずい顔で嫌な汗が流れた。その横で、笑いを必死に堪える千歳が居た。

夕紀の異変に気づいたヒロミが、心配そうな顔で尋ねた。


「どうしたの夕紀?顔色悪いわよ?まだお腹痛いの?」

「う、ううん。違うの。大丈夫よ・・・そ、それで?」

「う、うん。」


夕紀の顔色を心配しながら、ヒロミは話を続けた。


「お姉ちゃんが言うには、赤ちゃん助けてくれたお礼が改めてしたいって言ってたの。だから、聴取も具体的に答えてないんだって。」

「そうなんだ・・・。(アノ人・・・ヒロミのお姉ちゃんだったんだ・・・。)」

「ねぇ?何で夕紀笑ってるの?ちょっと気持ち悪いわよ?」

「ひどっ!気持ち悪いって何よ?!ねぇ・・・ちと・・せ?」


不機嫌そうな顔で夕紀は、千歳に同意を求めようと振り向くと完全に声を殺して笑いこんでる姿を見て、夕紀は殴りかかろうとしたが、笑いを堪えながらの千歳に両手を止められた。


「ぬぐぐぐ・・・、離しなさいよ!千歳!」

「・・・イヤよ・・・フフフ・・・。」


相当、千歳のツボに入ったようだ。

二人の行動を眺めながら、ヒロミはもう一つの情報を思い出した。


「あっ!そうだ!もう一個情報有って、最近、ここら辺に変質者が出るらしいよ?」

「え?」「え?」


それを聞いた二人は動きを止めて、聞き返した。


―――その頃、白夜は・・・背後から付いてくる人の気配を感じていた。

白夜は気づかないふりをしながら、人気の無い路地裏へ身を隠すように曲がった。

背後から付いてきてた者が、白夜の後を追って路地裏に入った。


「お主は誰じゃ?タダの変質者ではないようじゃが・・・。」


白夜は、壁を背に追ってきた者に尋ねた。


「尾行は下手じゃな。どうせ付けるなら気配ぐらい消したらどうじゃ?そんなに殺気立って・・・ワシは、恨まれる様なことをした覚えはないのじゃがな?」


終始無言だった追跡者が口を開いた。


「我らは、魔を退ける者。お前が、悪事を働いたかどうかは関係無い。人に害を出す前にお前のような者を滅するのが我らの役目。」


睨みつける退魔師に、白夜はヤレヤレっといった感じで笑った。


「穏やかでないのぉ・・・しかし、ワシはお主を相手にしてるほど暇ではないのだが・・・どうしても相手をしたいのなら、追ってくるがいい。」


そう言うと、白夜の影から白いオオカミのような顔をした鎧武者が現れ、白夜を片手で抱きかかえると、空高く舞い上がった。


それを見上げていた退魔師は表情を崩さず、一枚の札を取り出して馬の式神を召喚した。


「なめるなよ・・・アヤカシが!」


退魔師は式神に跨ると、白夜を追って空高く駆け上がった。


空を飛ぶ白夜の背後から、退魔師が追いかけてきた。


「ほぉ・・・やるではないか。どれ・・・約束は約束だし、相手をしてやるかな。」


そう言って周りを見渡し、使用されてない採石所付近に降り立った。

それを見た退魔師も白夜について降りてきた。

そして、退魔師は不機嫌そうな声で白夜を睨みつけながら質問した。挿絵(By みてみん)


「どういうつもりだ?」


白夜はクスクスと笑いながら、茶化すように答えた。


「なに、本当に追ってきたから、約束を守ったまでだ。」


そう言った瞬間、退魔師が攻撃をしかけてきた。が、オオカミ頭の鎧武者が片手でその攻撃を払い退けた。

白夜はタメ息をついて、


「短気じゃのぉ・・・相手をしてやると言ってるのじゃ。もう少し待たないか。」


白夜は鎧武者から降ろして貰うと、少し離れた場所に移動して退魔師に話しかけた。


「此処なら、人目も気にせず戦えるじゃろ?ワシも急いでいるのでな手早く済ませよう。相手は其奴だがな。」


そう白夜が言うと、鎧武者は剣を抜いた。それを見た退魔師は、札を数枚取り出し臨戦態勢を取った。


「ふざけた事を・・・二匹まとめて、消滅させてくれる!」


  先制攻撃を仕掛けたのは、退魔師だった。

  地鳴りがするほどの爆発が採石所で起きていた。

  その退魔師の爆破攻撃を受けながら、懐に潜り込もうとする鎧武者を手際よく、結界で退けていた。

  しかし、互いに決定打も無く同じ事を繰り返してるようにも見えた。

しばらくして、退魔師が動きを止めるのを確認した白夜が、声をかけた。

「どうした?息巻いてた割には、もう息切れか?」と、笑う白夜を睨み付けながらも、事実、手持ちの攻撃手段も残りわずかになってきていた。


一方、鎧武者の方は息切れもなく、ほぼ無傷で弱ってる気配も無かった。


(おかしい・・・アレだけの攻撃を受けながらも一向に弱る気配も無い・・・もしや・・・。)


退魔師は、強力な札を白夜の方へ向けて投げ飛ばした。

それに反応するかのように、白夜を守る形で鎧武者が直撃を受けた。その時、ようやく鎧が吹き飛び、傷らしい傷を負わせることが出来た。

それを確認した退魔師が、うすら笑いを浮かべた。


「やはりな・・・その鎧武者は、お前を守るように戦ってたから・・・もしやと思ったが・・・弱点は、貴様自身のようだな。」


そう言って、白夜の方を指さすと、白夜は両目を閉じて深いタメ息をした。


「お主・・・こんな、か弱い少女を攻撃するとは・・・恥ずかしく思わんか?」

「黙れ!いくら姿形が少女であっても、貴様は妖だろう!」


退魔師の罵声に、白夜は片目を開き真っ直ぐ退魔師を見つめた。


「ワシが弱点だと思うのなら、好きなだけ攻撃するがいい・・・本当に倒せると思うのならな。」


白夜はそう言って、退魔師を挑発した。


「上等だ!望み通り、貴様にとっておきを喰らわせてやろう。」


退魔師は、残りの札を全て出し、呪文を唱え始めた。

白夜と鎧武者は、タダその場で立ちつくしたまま、その術の完成を待っていた。

そして、術式が完成して白夜の方へと狙いを定めた。


「二匹まとめて、永劫の闇へと還れ!」


退魔師は術を放つと、四方霊獣が現れて空間が歪み、強力な光が白夜達を包んだ。

周りの雨は蒸発し、地面はえぐれて正面は蒸気で生死は確認できなかった。

強力な術の代償として、退魔師の腕がボロボロになっていた。



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