第二十二話 人影
「おっはよー!夕紀!千歳!」
「あっ!おはようヒロミ。」
「あら?ヒロミさん、おはよう。」
「二人が一緒なんて、珍しいわね。」
「まぁね。」
「昨日は、夕紀の家に泊まらせてもらったの。」
「へぇ。そうなんだ。」
三人は話しながら歩いていた。ふと、ヒロミが銀行強盗の事件について話し出した。
「ねぇ、ねぇ。夕紀は知ってる?学校内じゃ結構話題になってるけど、強盗犯捕まえた白髪の少女。格好いいよねぇ。」
「へ、へぇ・・・。凄い子もいるよね。」
とぼける夕紀の横で千歳は、クスクスと笑っていた。それを見た夕紀は、ヒロミに聞こえないよう小声で、千歳に話しかけた。
(ちょっと・・・何笑ってるの?)
(ごめんなさい。当事者だと思うと、可笑しくって・・・。)
「ちょっと?二人で何コソコソ話してるの?」
「え?な、何でもないわよ。」
「そうね。大した事じゃないのよ。それより急がないと遅れるわよ?」
「ふ~ん。まぁいいわ。遅刻はイヤだもんね。」
三人は、少し駆け足で学校に向かった。校門を抜けると、千歳が何かを思い出したかのように立ち止まった。
「あっ!ごめん。二人とも・・・私、役員の打ち合わせが有ったから、先に教室行ってて。」
「生徒会長の仕事も大変ね。」
「まぁね。変わってあげましょうか?夕紀。」
「無理無理。私がこなせる訳無いって。」
「フフフ・・・冗談よ。じゃぁ、また後でね。」
「またね。」
千歳と夕紀は、手を振りながら別れた。二人の様子を見ていたヒロミは、笑いながら、
「貴方達、本当に仲がいいのね。うらやましいわ。」
「まぁね。もう、親友通り越して、姉妹の様なものかな?ハハハ・・・。」
「いいなぁ・・・。」
ヒロミは、本当にうらやましそうな顔で夕紀を見ていた。
「あっ!そうだ!」
突然、何かを思い出したかのように、ヒロミは大きな声を出して、それに、夕紀は驚いた。
「ちょっ?!何大きな声出してるのよ?ビックリしたじゃない。」
「ごめんごめん。凄い情報思い出したんだぁ。」
「凄い情報?」
「そ!まぁ、教室で話すよ。急がないとホームルーム間に合わないよ。」
「そうだった!急ごう!」
壁には『廊下を走るな!』のポスターがあったが、教室へ向けて二人が駆け抜けた後、その役割を果たせないまま、虚しく地面へと剥がれ落ちたのだった。
「ふぅ・・・。間に合ったぁ。」
「ギリギリだったね。」
「だね。・・・あれ?まだ千歳が来てない。」
それを聞いた夕紀も、千歳の姿を探した。
「ホントだ。会議が長引いてるのかな?」
「かもね。あ!先生が着ちゃった。」
「やばっ!」
夕紀達は、慌てて席に着いた。
「えー・・・今、学校行事の打ち合わせの為、生徒会役員は遅れますので、このままホームルームを始めます。」
――そっか・・・もう、学祭か・・・白夜を連れてこようかなぁ。喜ぶかなぁ?――そんなことを考えながら、夕紀は窓の外を眺めていた。
――――同時刻・・・碑宮家・・・
白夜は、洗濯物を干して布団を片付けた後、黙々と部屋の掃除をしていた。
「ふぅ・・・。なかなか、掃除のしがいがある家だ。」
子供一人で生活していると、やはり掃除の行き届いてないところが多々あった。
夕紀の性格上、面倒くさくなって、掃除してないのもあるのだろう。
白夜は、手慣れた手つきでドンドンと掃除を進めていた。
気がつくと結構な時間が経っていて、ふと外を見てみると雨雲が広がってきていた。
「おっと。洗濯物取り込まないと・・・。」
白夜は掃除を途中で切り上げ、庭で干していた服とかをカゴに詰めて急いで家の中へ戻った。
そして、乾いてない洗濯物を部屋で干し始めたときに、雨が降り出した。
「なんとか、降る前に取り込めたな。」
一安心して、干し終えると今度は乾いている服をたたみ始めた。
「そう言えば・・・夕紀のヤツ、傘持って行ってないな。持って行ってやるか。」
白夜はたたみ終えてから、スクッと立ち上がると、夕紀があらかじめ出してくれていた、お下がりで白のワンピースを出してきて着替えた。
そして、玄関に掛けてあった帽子を手に取ると、髪が見えないように被って二本の傘を手に取り、玄関を出て白い傘を差した。
家を出て行く白夜の後ろ姿を確認して、物陰から一人の男が出てきたのだった。




