第二十一話 登校
二人が顔を洗ってる内に白夜は、焦がした部分を取り除いて、綺麗に盛りつけをしていた。
そこへ、サッパリした顔で二人が帰ってきた。
「お?戻ったか?」
「う~ん・・・。おいしそう!」
「本当、お腹空いたわ。」
二人は、吸い寄せられるように食卓の椅子に座って、料理のニオイをかいだ。
「こんなに食べられるかしら?」
心配する千歳に夕紀は笑いながら、
「残しても大丈夫よ!私が食べるから。むしろ残しなさい!」
「残すことを命令?!イヤよ!折角の白夜ちゃんの手料理残すわけないじゃない!」
睨み合う二人の間を白夜が割って入ってきた。
「ケンカもそこまでだ!早く食べないと料理が冷めるぞ?」
「は~い。いただきます!」
「クスッ・・・頂くわね。白夜ちゃん。」
二人は会話も忘れて、食事に集中してた。
食事が食べ終わる頃に、白夜がテレビをつけた。
テレビのニュースで、丁度、情報提供を呼びかける話が出ていた。
「あっ・・・コレって白夜の事じゃない?」
「あの、銀行強盗の事件?やっぱり、アレ白夜ちゃんだったの?」
「うむ・・・まさか、此処までするとは・・・。」
「しばらく。外には出られないわね。」
夕紀の一言に、白夜の表情が少し寂しそうな顔だった。
そんな白夜を気遣うように、千歳が
「大丈夫よ。白夜ちゃん・・・時期的なモノだから、しばらくすれば落ち着くわ。」
「でも・・・話題になるからって、こんなに放送しなくても・・・」
ちょっと不満そうな顔の夕紀に、千歳は意外そうな顔で答えた。
「あら?知らなかったの?白夜ちゃんが捕まえた犯人は、国際指名強盗団メンバーの一人だったみたいよ。」
「へ?マジで?」
「えぇ。本当よ。」
二人が話してるとき、白夜はテレビに表示されてる時刻を見た。
「あ!お主等、時間大丈夫なのか?」
白夜に言われて、二人もテレビの方を見て、慌てだした。
「やっば!まだ何も準備出来てなかった!!」
「急ぎましょう!」
「うん!・・・白夜!ご馳走様!!」
「美味しかったわ。白夜ちゃん。」
走って二階へ駆け上がる夕紀の後ろを、千歳は歩いて追いかけた。
その光景を見送りながら、白夜は一人笑っていた。
「クックックッ・・・。騒がしい娘達だ・・・見てるだけでも、退屈はしないな。」
そう言って、二人が綺麗に平らげた食器を、流し台へと運び始めた。
―――しばらくして、食器を綺麗に洗い終えた白夜が、昨日の衣類を洗濯機に入れ、スタートボタンを押したときに、二人が制服に着替えて二階から話しながら降りてくるのが聞こえた。
「ヤッバイ!ヤバイ!準備に時間がかかったぁ!!」
「もう!髪整えるの時間かかり過ぎよ。夕紀。」
「だって、直らないんだもん!」
慌てる二人の声に、白夜は顔を覗かせた。
「忘れ物とかないのか?」
「アッ!」
白夜の問いに夕紀は、持ってたカバンの中を確認した。
「うん!大丈夫。千歳は?」
「私は、大丈夫よ。誰かさんと違って、前もって準備してるもの。」
「ぬぐぅぅぅ・・・。」
千歳の台詞に言い返せず、握り拳を作り、悔しそうな顔をしていた。
それを見て、クスクス笑う千歳は、すれ違い様に夕紀の肩を軽く叩き、
「ほら。遅刻するわよ?」
と、夕紀を促した。
「じゃぁ、白夜ちゃん。今回は、とても楽しかったわ。今度は、私の家に遊びに来てね。」
「うむ。近いうちに寄らせて貰う。」
そう言って、白夜は頷いて微笑んだ。その微笑みに釣られるように千歳も微笑み返した。そして、夕紀と千歳が玄関を出て白夜の方へ振り向き、手を振りながら
「またね。白夜ちゃん。」
「白夜!行ってきま~す!」
「うむ。行ってらっしゃい。」
白夜は二人を見送りながら、軽く手を振った。夕紀は手を振りながら駆けだし、千歳は、深々とお辞儀して歩いて夕紀の後を追った。
二人のを見送った後、手を腰に当ててから一息つくと、家の中へと戻っていった。
―――その一部始終の光景を、遠くから厳しい目で見つめている人影があった。