第二十話 早朝
「ん・・・?もう朝?」
窓の外が明るく白んできた。
「ふぁぁぁ・・・。結局、寝られなかった。」
夕紀は、はだけたままの服装で大きくアクビをして体を伸ばした。
「結局、寝付けなかったわね。」
そう言って、千歳は白夜の方を見つめながらゆっくりと、体を起こした。
一方、白夜の方は、着ていた筈の服がいつの間にか、ほぼ下着の状態になっており、伏せたまま動かなかった。
「お主等・・・。服を脱がす必要性は何処にあったのだ?」
白夜は顔を上げずに二人に問いかけた。
二人は、顔を見合わせてから、声を揃えて
「脱がしたかったから。」
「この・・・変態共め!!」
二人の答えに白夜は、勢いよく顔を上げて怒鳴った。
「もう!そんなに怒鳴らないでよ。白夜が余りにも可愛すぎたから、ちょっとイタズラしたくなっただけなんだし・・・ネッ。」
そう言って、夕紀は座り込んでふくれっ面の白夜の頭を優しく撫でた。
白夜は顔を振って、撫でる手を払ってから、スクッと立ち上がって、
「御飯作ってくる!」
そう言い残し、スタスタと部屋を出てドアを閉めた。
「あちゃぁ・・・。怒っちゃったかな?」
夕紀は苦笑いしながらボサボサの頭を掻いた。しかし、千歳はクスクスと笑っていた。
「何笑ってるのよ?半分くらいは、あなたにも責任有るのよ?」
ちょっと、不機嫌そうに問いかける夕紀に千歳は笑いながら、
「大丈夫よ。さっき、出て行くまで顔を見ていたけど・・・、本気で怒ってる訳じゃないみたいよ。」
「へ?そうなの?」
「えぇ・・・部屋を出る前に少し微笑んでたから・・・本当に、白夜ちゃんは可愛いわ。」
「白夜もイヤって訳じゃないんだ。」
「・・・でも、やり過ぎには注意しないとね。」
「だね。」
二人は微笑しながら、時計を見た。
「まだ時間有るね。でも、寝るわけにも行かないし・・・顔洗ってこようかな。」
「そうね。白夜ちゃんの料理が出来るまで時間もあるだろうし、髪も解かないと。」
「髪が一番時間かかるよねぇ。」
「あなたのはまだ短いからマシよ。私のは長いから、なかなか戻らないのよ?」
夕紀は、自分の髪を撫でながら、千歳の髪を見て
「私も、髪伸ばそうかなぁ?」
そう言って勉強机に置いてあったクシを取りに行った。
「あら?また昔みたいに伸ばすの?でも・・・今の方が似合ってるわよ。」
「んー・・・。まぁ、癖毛だし、短い方が慣れたら楽だしねぇ。千歳。ちょっと後ろ向いて。」
言われた通り千歳が後ろを向くと、千歳の髪を持って夕紀がクシを通し始めた。
「いいなぁ・・・あなたの髪、サラサラで。クシも引っかからないよ。」
「そんなこと無いわ。あなただって、ちゃんと手入れしてればサラサラになるわよ。」 「あはは・・・。面倒くさがりの私には無理かなぁ・・・やっぱり。」
「うふふ・・・。やっぱり、短い方があなたらしくていいかもね。」
「かなぁ・・・。はい!終了!!クシ通すだけで直るからいいわね。」
「ありがとう。次は、私がしてあげるから、クシ渡して後ろ向いて。」
「はーい。」
夕紀は、千歳にクシを渡して後ろを向いた。受け取ったクシで夕紀のボサボサの髪を解き始めた。
「夕紀・・・髪がすごく痛んでるわよ?一度水で濡らした方がいいかも・・・。」
「あっ!やっぱり?たまに手入れ怠ってるからなぁ。」
「今まで一人だったから、面倒くさかったんでしょ?」
「バレた?」
「髪は正直よ。白夜ちゃんに頼んでみたら?髪ぐらいなら解いてくれるわよ。」
「かもね。んー・・・今度頼んでみる。」
「取りあえず。下に降りて、髪を濡らしてからクシ通しましょう。」
「ついでに顔も洗おうかな。」
「そうね。」
二人は、体を伸ばした後、立ち上がって部屋を後にした。
下に降りると、台所からいいニオイが漂ってきた。
「ふわぁ・・・。いいニオイ・・・。」
「本当・・・美味しそうなニオイね。」
二人揃って、顔を洗う前に台所を覗いた。
淡い朝日で白夜の白い髪がより一層輝き、その姿はとても幻想的だった。
「綺麗・・・。」
二人は思わずそう呟き、息を呑んだ。
のぞき込んで見てる二人に気がついた白夜が振り向いた。
「何、二人して馬鹿面並べてるのだ?さっさと顔洗ってこい。もうすぐ朝ご飯出来るぞ。」
と、あきれ顔で正面を向いた。慌てる夕紀は白夜の姿に指をさして、
「やだ!白夜エロイ!襲いたい!」
「ハァ?!」
「本当・・・。白夜ちゃん・・・その格好での作業は、夕紀が喜ぶわよ?」
駆け寄ろうとする夕紀を背後から押さえてる千歳の指摘に、白夜は改めて自分の姿を確認した。
「コノ格好か?お主等が脱がしたんだろ?」
「そう。でも、何か着た方がいいわよ。夕紀を押さえている内に・・・。」
興奮状態の夕紀の姿を見た白夜は、少し寒気を感じた。
「う、うむ。確かに、お主の言う通りだな・・・。ちょっと着てくるから、魚が焦げないように見ていてくれるか?」
「えぇ。いいわよ。早く行ってらっしゃい。」
「ちょっと!千歳離して!白夜襲えない!!」
「落ち着いて。夕紀。」
千歳が押さえている内に白夜は夕紀との間合いを取りながら、駆け足で夕紀の部屋に戻っていった。
それを見届けて、千歳は一息ついて夕紀を離した。
「ちょっと!暴走しすぎよ。夕紀。」
「ご、ごめん!つい自分の欲望に従っちゃった。」
二人が話をしていると、コンロから黒い煙が上がり始めた。
「あっ!やばっ!魚が焦げる!!」
「大変!」
二人は慌ててコンロの火を消した。それと同時に後ろから白夜が服を着て降りてきた。
「ふぅ・・・。何しておるのだ?お主達は?」
ヤレヤレっと言った顔で腰に手を当てて二人を見ていた。二人は、申し訳なさそうな顔をしていた。