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第十三話  怒り  ※注意!挿絵が有ります

男は、大声で笑いながら、


「約束通り解放してやったぞ。ハハハ・・・!」

「貴方!それでも人間なの?!」


大粒の涙を流しながら睨みつける千歳に冷徹な顔で近づき、


「こうなりたくなかったら・・・、大人しくするんだな・・・。」


銃を千歳の額に突き付けたまま、男は、再び大きい声で笑った・・・その時、白い毛に覆われた大きな手が横から伸びてきて、男の持つ銃と一緒に右手ごと握りつぶした。

あまりの激痛に男は、悲鳴を上げて後へよろめき、その場で座り込んだ


そこには、死んだはずの白夜が立っていたが・・・、その体とは、あまりにも不釣り合いな腕だった。その場に居た男達は銃を構えて、異形な姿の少女に向けて容赦無く発砲した。

挿絵(By みてみん)

弾が切れるまで撃ち続け・・・立ち上る煙幕の中から、逃げ遅れた男の死体が投げ飛ばされてきた。

発砲した男達は、投げられた男の死体を避けきれずにぶつかり、そのまま倒れた。


「戦乱の世も・・・、現代も・・・、物騒なのは変わらないか・・・。」


煙幕が晴れると・・・千歳の前で壁になっていた白夜の両腕は、大きな獣の手に変化していた。


「びゃ、白夜・・・ちゃん?」


恐る恐る千歳が尋ねると、白夜は、前に居る男達から視線を外さずに、千歳に語りかけた。


「大丈夫か?」

「え、えぇ・・・よかった・・・。」


異様な姿にはなってるが・・・いつもの白夜の声に、涙ながらも安堵した声で答えた。

白夜は、倒れている男達を睨みつけて、


「事を穏便に済ませようと思ったが・・・服に穴を空けただけで無く、ワシの友人を泣かせたむくい・・・しっかりと受けてもらうぞ!」


そう言うと・・・服は破れ、巨大な人狼の姿へと変化させて大きな咆哮をあげた。

あまりの恐怖にその場に居た男達は、気を失った。


そして、外で待機していた男達が全員がその咆哮に驚き、慌てて集まって来ると・・中に居た化け物を見て更に驚き、恐怖のあまり全員で発砲した。


弾切れになるまで凄まじい銃声が鳴り響いた。やがて、撃ち尽くした後・・・男の一人が呟いた。


「殺ったか?」


銃声が止み・・・静寂の中、立ちのぼる煙幕の中から突然、白夜が飛び出してきた。

白夜の容赦無い一撃が、次々と男達を襲った。

戦意を失った一部の男達は、武器と仲間を捨てて逃げ出した。

それを見届けた白夜は、倒した男達を一カ所に集めて動けないように、工場内で破棄されていた細いワイヤーで縛り上げ、武器を回収し・・・使用出来ないよう破壊した。


銃撃の中、安全な場所へ移していた千歳の元へ向かうと・・・最初に手を潰した男が、千歳にナイフを突き付けて人質に取っていた。


「動くなよ化け物!動いたらこのガキの命はないぞ!」


流石の白夜も動きを止めた。しかし・・・人質になってる千歳は、落ち着いた声で、


「そう言えば・・・貴方には、お礼をしていませんでしたわね?」

「何?!」


そう言った瞬間、千歳は、ナイフを持つ手を掴んだと同時に足の甲を思いっきり踏みつけた。あまりの痛さで、緩んだ男の腕をすり抜け、ナイフを持つ手首を両手で掴んで引っ張り・・・バランスを崩させてから、180度背転させて両手で斬り下ろすように投げ倒した。

男は、受け身も取れずに勢いよく床にぶつかり、その衝撃で気絶した。


「オォ・・・ヤルデハナイカ。」


白夜は、思わず感心してしまった。千歳は、両手を叩いて払うと、気絶した男に向かって、


「私の白夜ちゃんを傷つけるからよ。」


凛とした表情で語った。白夜は、指で頬を掻きながら・・・、


(何時、お主のモノになったのだ?)


と、口に出さずに心の中で思った。

安全を確認した後、千歳は、自分の携帯を見つけて、壊れてないかを確認していた。

一方、白夜も人狼から少女の姿に戻った・・・が流石に裸はまずいので、建物内にあったボロボロのカーテンを外して体に巻いた。


千歳は、家に無事を報告して、用事も伝え・・・迎えに着てもらうように頼んだ。

電話を切り、携帯をポケットにしまい・・・大きくタメ息をした時、


「もういいのか?」


と、いきなり後ろから声をかけられて、ビックリして振り向いた。


「白夜ちゃん?!嗚呼・・・驚いた。・・・あら?どうしたの。その格好?」


心もとない布を身につけてる白夜に問いかけた。


「いや・・・流石に裸だとマズイと思ってな。ところで・・・お主はワシのあの姿、怖くなかったのか?騙すつもりはなかったのだが・・・」


深刻そうな顔で尋ねる白夜に、千歳は、微笑んだ。


「確かに・・・・最初は驚いたけど・・・姿が変わっても白夜ちゃんは、白夜ちゃんでしょ?」

「ま、まぁ・・・そうだが・・・そう言ってもらえると助かる。」


白夜は少し照れながら答えて…ふと、肝心なことを思い出した。


「あっ!しまった!夕飯買うの忘れてた!」


慌てる白夜を横目にクスクスと笑う千歳の姿が見えた。


「ぬ?何を笑ってるのだ?」


ちょっと不服そうに見る白夜に、千歳は慌てて謝った。


「ご、ごめんなさいね。心配しないで。ちゃんと・・・迎えに着てもらうついでに、食材の方も頼んだから問題ないわ。・・・本当はゆっくり、白夜ちゃんとお買い物したかったけど・・・仕方ないわね。」


残念そうな顔で見る千歳に、一息入れて白夜は、微笑みながら、


「何、心配することはない。また、日を改めて行くとしよう。」


それを聞いた千歳の顔は明るくなり、白夜の手を取った。


「本当?嬉しいわぁ!いつが良いかしら…。」

「ま、まぁ・・・ここから無事帰ってから考えるとしよう。」

「・・・・それもそうね。」


上機嫌な千歳をなだめて、白夜は、建物の外を出ようとした。その時、


「ちょ、ちょっと待って!白夜ちゃん!」

「ん?」


千歳が慌てて白夜を呼び止めた。

白夜が振り返ると、駆け寄ってきた千歳が肩を掴み、建物内に連れ戻した。


「ど、どうしたのだ?」


驚く白夜に千歳は、血相を変えて、


「ダメよ。白夜ちゃん。そんな格好で外に出ちゃ!」

「す、すまぬ。」


千歳の迫力に、思わず謝ってしまった白夜だった。


「もう少しで迎えが来る筈だから、着替えも頼んだから、二人で・・・・。」


千歳は、話してる途中で考え込んでしまった。不思議そうな顔で白夜が尋ねた。


「どうしたんだ?急に黙り込んで・・・?」

「あっ!い、いいえ。何でもありませんわ。」

「ふむ・・・なら良いのだが。」


心配そうに見てる白夜の目を・・・千歳は、直視することが出来なかった。

――落ち着くのよ。千歳!いくら、白夜ちゃんと二人っきりだからって・・・、本能に負けちゃダメ!――千歳は、自分に言い聞かせながら、


「ちょ、ちょっと、外へ出て様子を見てくるわね。中で待っててね?白夜ちゃん。」


そう言って、頭を冷やすつもりで、外に出ようとした時、


「痛っ!」


と、後方から声がしたので振り向いてみると・・・、身にまとっていたボロ布の端を踏みつけて、前のめりに倒れてる白夜の姿があった。


千歳は、慌てて駆けつけて、白夜を起こした。


「だ、大丈夫?」


そう声をかけると、白夜は無言でうなずいて、鼻の先をなでながら目を潤ませ、上目づかいで、


「だいじょうぶ・・・。」


と、答えた。その時、千歳の中で何かが切れる音がした・・・。


「白夜ちゃん!」


そう叫んで、白夜を押し倒した瞬間、


「お嬢様!ご無事ですか?!迎えに参りましたぞ!!」


と、心配そうな顔で執事の人が駆け込んできた。・・・その場面で三人は、一瞬硬直した。



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