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第十一話  お見舞い  ※注意!挿絵が有ります

玄関から呼び鈴の鳴る音が聞こえて、夕紀は、その音に気づいて目を覚ました。

白夜は、急いで玄関の扉を開けると・・・そこには、笑顔で立っている千歳が居た。


「こんにちわ。白夜ちゅん!夕紀のお見舞いに来たわよ。」


そう言いながら、白夜に抱きついてきた。


「ぬを?!わ、わざわざすまぬな。と、取りあえず・・・離れて中に入らんか?」


突然のハグに慌てながら千歳をなだめて、家の中へ導いた。

白夜は千歳を連れて夕紀の部屋まで行き、ドアをノックした。


「夕紀。起きてるか?一之宮さんが見舞いに来てくれたぞ。」

「ん?あっ、ありがとう。入って良いよ。」


白夜はドアを開けて、千歳を中に進めた。


「じゃぁ、ゆっくりして行ってくれ。お茶でも持ってくる。」

「あっ!ありがとう。白夜ちゃん。」


千歳は、笑顔で答えて白夜も笑顔で応じた。

白夜が部屋を出るまで見送ると、夕紀の近くまで寄ってきた。


「ねぇ・・夕紀・・・やっぱり白夜ちゃんを・・・。」

「却下するわ。」

「ちょ、まだ終わって・・・。」

「あなたの言いたいことが解るもの。」


千歳の交渉に夕紀は、有無も言わず無表情で断った。

タメ息をもらして、千歳は、夕紀に今日配られたプリントを鞄から取り出して手渡すと同時に、


「私は諦めないわよ!」

「諦めなさいよ!」


とにらみ合う二人だったが、途中で吹き出した。

賑やかに笑う部屋に、茶菓子をもって白夜が入ってきた。


「賑やかだな。」

「あ!白夜おかえり。」

「あら・・・ありがとう白夜ちゃん。近くに来て一緒に座りましょう。」


そう言って、千歳は、自分の隣に白夜を招いた。そして、白夜からお茶を受け取ると、一口飲んだ。


「あら?このお茶・・・美味しいわ。」


不思議そうに飲んでいる千歳に、得意気に夕紀が答えた。


「ふっふ~ん♪いいでしょう。白夜の作る物はすべて美味しいのよ!」

「・・・・なぜ、お主が得意気なんだ?」


あきれる白夜に、千歳が目を輝かして抱きついてきた。


「うわっ!」


勢いのあまり、千歳と白夜は倒れてしまった。


「ちょっと!何してるの?千歳!!」


慌てて起き上がる夕紀に、千歳は訴える目で見ていた。


「ダメだからね!」

「ちょっと!まだ何も言ってないわよ。」

「言って無くても解るわよ!その目を見たら!とにかく・・・、は・な・れ・な・さ・い・よ!」


夕紀は、覆いかぶさる様に抱きついてる千歳を白夜から引き離した。


「まったく・・・油断も隙もない。」


夕紀は、ベットに戻ると額を腕でぬぐった。


「ねぇ?白夜ちゃん?」

「ぬ?な、何だ?」


ちょっと落ち着くためにお茶を飲んでいた白夜に、千歳が問いかけた。


「白夜ちゃんの料理・・・私にも食べさせてくれないかしら?」

「な、何言ってるの?あんた?」


その質問に、夕紀は再び取り乱した。


「あら?いいじゃない。あなただけ白夜ちゃんの手料理食べるなんて不公平でしょ?」

「でも・・・あなた、仮にもお嬢様でしょ?門限とか大丈夫なの?」


夕紀の質問に千歳は笑顔で、


「大丈夫よ。あなたの家で夕食頂いてくるっと言ったら、お許しが出たもの。」

「あなた・・・最初っから計画してたのね」

「うふふ・・・何の事かしら?」


意図のある笑顔に、不信感を持つ夕紀だった。


「ね?いいでしょ?白夜ちゃん」

「うむ、問題ないぞ。」

「やったぁ!ありがとう白夜ちゃん。」

「ちょ!白夜ぁ・・・。」


千歳の申し出にあっさり承諾した白夜に、夕紀は落ち込んでいた。


「まぁ・・・いいではないか。食卓は多い方が楽しい。」

「そうそう。」


なだめる白夜と上機嫌の千歳に、タメ息をもらしながらも夕紀は微笑んで、


「まぁいいか。じゃぁ・・・白夜、夕飯お願いね。」

「うむ・・・っとその前に、夕飯の材料を買い出しに行かないと・・・。」


そう言って、白夜が立ち上がると・・・


「それなら、私もお手伝いしますわ」


と白夜に続いて千歳も立ち上がった。


「ちょっと・・・なんであんたまで・・・。」

「あら?だって・・・白夜ちゃんだけじゃ大変でしょ?」

「うっ!そ、そりゃ・・そうだけど・・・。」

「そ・れ・に・・・あなたは病人ですもの。大人しく留守番しててね。」

「千歳!あなた・・・謀ったわね!」

「うふふ・・・何の事かしら?」

挿絵(By みてみん)

悔しがる夕紀に背を向けて・・・何かを企む黒い微笑みを浮かべて、白夜の後を追った。千歳が出て閉まったドアだが・・・すぐ開き、中から白夜が顔を出して


「すまぬが・・・留守番を頼む。何か欲しいモノがあれば買ってくるが?」


落ち込んでる夕紀にとって白夜の言葉が救いになった。

夕紀は、輝くような笑みで、


「白夜がいい!」


その瞬間・・・少しの静寂が訪れ・・・白夜は無言でゆっくりとドアを閉めた。


「ツッコミは?!」


夕紀の切なる願いは、虚しく部屋に響いただけだった。




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