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第十話  休み


騒がしかった夜も明け、寝静まり返った朝・・・白夜は夕紀が寝ている部屋へと向かった。


「夕紀・・・朝だぞ!起きろ!」


ドンドンドンっと部屋の扉を数回叩いた。しかし、起きる気配がない。


「まだ寝てるのか?起きろ!」


更にドアを叩くと、部屋の中からうめき声が聞こえてきた。


「どうした?・・・・中に入るぞ?」


白夜はそう言って、部屋のドアを開けてゆっくりと中に入った。

すると・・・ベットの中でうずくまって苦しんでる夕紀の姿があった。


「どうしたんだ?!苦しいのか?」


心配して駆け寄ってきた白夜に、夕紀は訴えた。


「お、お腹が・・ものすごく痛いの・・・。」


白夜はすぐに、思い当たる節があった。


「ハァ・・・・ただの食あたりだ・・・待ってろ。薬を取ってきてやる。」


そう言って微笑んでから夕紀の頭を優しく撫でると、部屋を出て一階へと向かった。しばらくして・・・白夜は薬と水をもって帰ってきた。


「ホレ!薬を持ってきたぞ。起きれるか?」


白夜は苦しそうにしている夕紀に問いかけたが・・・夕紀は首をゆっくり横に振り、


「無・・理。口移しで飲ませて・・・。」

「よし!わかった。」


白夜が薬と水を口に含み…口移しをしようと夕紀の頭を持ち上げた時、少し微笑みながら待ち構えてる夕紀の顔を見て白夜は我に返った。


「・・・って!何でじゃ!」


思わず口移しをしそうになっていた白夜は、慌てて夕紀の頭を突き放した。


「いったぁい!病人に対して酷いじゃない!」

「やかましい!危うく乗せられる所だった。」


そう言って、赤面の白夜は自分の口を手でぬぐった。


「もう一度薬を持ってくる。今度は自分で飲めよ。」

「えぇ?!良いじゃない・・・減るモノじゃないんだし・・・。」


残念そうにしてる夕紀を無視して、白夜は再び薬を取りに部屋を出た。

薬をもって、部屋に戻ってきた白夜は、夕紀に薬と水を差しだして、


「ほれ!起きて自分で飲め!」

「えっ?口移しはぁ?」

「やかましい!」


白夜に一喝されて・・・渋々、体を起こして、白夜から薬と水を受け取ると一気に飲んでニガそうな顔をした。


「で?学校の方はどうするのだ?休むのか?」


白夜の問いに、お腹をさすりながら夕紀は悩み・・・。


「んー・・・今日は、休むことにする。千歳に連絡して先生に言ってもらうよ。」


そう言って、夕紀は近くで充電していた携帯を手に取り、千歳に連絡した。


「うん・・うん・・お願い。・・・え?し、してないわよ!まだ・・・・うん、じゃぁね。お願い。バイバイ。」

「何て言ってた?」

「うん。『伝えとく』って。後・・・白夜ちゃんにイタズラしちゃダメって言われた。」

「流石、友人だな。よく理解してる。」


あきれ顔の白夜に対して照れてる夕紀の顔を見て、タメ息をついた。


「まぁいい・・・どうせ、腹痛で動けまい。掃除済ませたら胃に優しい何かを作ってきてやる。」


白夜が離れようとすると、寂しそうな声で


「えぇ~?!側に居てくれないの?」


そう言って白夜を呼び止めると、足を止めて苦笑いしながら


「襲われそうだから遠慮しておく。」


と言って部屋を出てドアを閉めた。

白夜が出て行ったドアの方向を見ながら、夕紀はちょっとふくれっ面になったが、再び寝転がり頭まで布団を被ると、自分の頬がゆるむのを感じていた。

困った時に、近くに人が居る・・・それが、たまらなく嬉しかったのだと思う。


「暇だなぁ・・・。」


薬が効いて、少し楽になったのか、寝てはいるが暇を持て余していた。

すると、おかゆを持って、白夜が部屋に入ってきた。


「お主の事だ。暇してるのではないか?」


ベットの横に座り微笑みながら白夜が尋ね、図星を突かれた夕紀は苦笑いをした。


「ほれ。起きれるか?」

「うん。」


上半身をゆっくり起こして白夜からおかゆの乗ったお盆を受け取った。


「なんだか・・・久しぶりのような気がするなぁ。」

「何がだ?」

「んー・・・こうやって、誰かに看病してもらうの。」

「そうか・・・。」


――なんだかんだ言っても…まだ、親が恋しい年頃。一人で居るのは寂しかったのだろう――と、白夜は思い。横で嬉しそうに食べてる夕紀を顔を眺めていた。


「ごっちそうさまー!」

「だいぶ元気になったんじゃないか?」


綺麗におかゆをたいらげ、満足そうにしている夕紀に問いかけた。


「んー・・・白夜のお陰かな。」


夕紀は体を伸ばして、満面の笑みで答えた。

白夜も少し照れながら、微笑み返して、


「じゃぁ・・・食器を片付けるかな。」


そう言って、お盆に手をかけた時


「ありがとうね。白夜。」


夕紀の口から自然とこぼれた言葉に、白夜は頬を赤らめてお盆を持ち、部屋を出る際に軽く手を振ってドアを閉めた。

夕紀は、再び布団に潜り込むと白夜の暖かさを感じて、うれしさで少し目頭が熱くなった。

やがて・・・満腹と安心感で眠気が出てきたのか、夕紀は深い眠りについた。


「夕紀・・・?」


白夜がドアを開けて、部屋をのぞき込むと…寝息を立てながら寝ている夕紀の姿に、安心し音を立てないようにドアを閉めた。



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