表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

2years summer~Kirara~

 出会う。

 

 消えかかる意識の中で、

「悔しいなあ」

 誾千代は床の中で嘆息し、右腕を天井にむける。

(なんて細い腕だ。これが私の手か)

「殿に・・・宗茂にもう一度会いたいなあ」

 彼女は呟いて、首を振った。

「いいや、これでいい、これで」

 ・・・・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・。

 


 〜2years〜

 ?

 誾千代は目を覚ました。

 ゆっくりと身体を起す。

「私、生きている?」

 右手を見る。

「・・・なんか違う」

 隣には用水路が流れている。

 その水面に自分の顔を映してみる。

「誰じゃ、こりゃ!」

 誾千代はしばらく蹲り、思考を駆け巡らせる。

 次第に夕暮れどきとなり、蛍が飛びはじめた。

「難儀じゃ」

 誾千代はスカートのポケットに何かが入っているのに気がついた。

「なんじゃ」

 それはこの身体の主の持ち物、ペンダントだった。

 じっとそれを見た瞬間、彼女の記憶が流れ込んできた。

「なるほどのう」

 悟った誾千代は流星綺羅々として、とりあえず生きてみる事にした。


 そして7月のある日、綺羅々は祭囃子の音色に誘われて、夏祭りへと迷い込んだ。

(ふむ。なかなか賑やかじゃ・・・この娘の記憶にも残っている今の祭りか・・・)

 雑踏の中、彼女は環と碧とすれ違う。

(なんじゃ・・・)

 綺羅々は振り返り、人混みにかき消される環の後姿を見る。

(ふむ・・・あの娘)

 彼女は踵を返し後を追った。

 ふたりは高台へと辿り着くと花火が打ちあがる。

 ひゅるるるる~。

 ドーン。

 打ち上げ花火が空一杯に広がると、一瞬、一面が輝く。

 じっと眺めるふたりの、背後に綺羅々はいた。

「ちょっといいですか」

(ちょっといいかの)

 誾千代の脳内で浮かぶ昔の言い回しが、綺羅々の言葉に変換される。

「はい」

 振り返った環と碧は訝し気に少女を見た。

「ここじゃなんですから・・・ね」

 綺羅々はじっとふたりを目で威嚇すると、背を向け歩きだした。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 顔を見合わせ、ふたりは律儀について行く。

「ここでいいかしら」

(このへんじゃな)

 ひと気のない所までいくと、少女は振り返り、ひとさし指を環へ突きたてる。

「化け物」

(物の怪め)

「え」

 と驚く環に、碧は彼女の前に立ち両手を広げた。

「あなた呪われてますよ」

「構わないっ!」

「アオちゃん」

「私が祓って・・・」

「祓ってなど欲しくない!」

「・・・なにを」

「俺はずっと、ずっと・・・ずっと」

 少女は碧の真剣な眼差しを見た。

(ふむ・・・これが盲愛というやつか・・・)

「そうですか。失礼、人違いでした」

 綺羅々は深々と頭を下げ、

「あなた方、面白いですね・・・ちょっと興味が湧いたかも・・・では、また」

 少女ははくるりと背を向けた。

 

 その翌日、環の働く実家の海苔屋へ綺羅々は赴いた。

「ここで働かせてください」

 外の油蝉のなき声がきこえる。




 環と綺羅々。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ