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12話

 ゾラが床上げしてから、半月が過ぎた。


 季節は春から夏に移り変わりつつある。四月の下旬に差し掛かっていた。テイラーは騎士団の職務があるため、週に一度会うくらいになっている。それでも、彼はゾラを心配して差し入れを持って来てくれていた。例えば、小さなブーケや珍しい茶葉、人気のお菓子などなど。今日もそうだった。


「……ゾラ、そろそろ体調も良くなってきたし。結婚式の事も考えたいんだが」


「あ、そうだったわね、わたくしとした事が。すっかり、忘れていたわ」


「まあ、いいんだが。君と婚約してからもう、二か月は過ぎたしな。気が早いかもしれないが」


 テイラーは苦笑いしながら、シュリが淹れたお茶を一口飲んだ。ちなみに、いつものストレートティーである。


「確かにね、母上や姉上とウェディングドレスとかの相談をしないと!」


「ああ、私もできるだけこちらに来るようにはするよ」


「ええ、お願いね」


 ゾラが笑うとテイラーも満面の笑みを浮かべた。部屋には誰もいない。シュリも気を使って、退室していた。テイラーはゾラに腕を伸ばす。左側の頬を軽く親指で撫でた。しばらくは熱く、見つめ合う二人だった。


 あれから、また一ヶ月が過ぎた。季節は初夏になり、日差しも強くなっている。五月の下旬になっていた。ゾラは本当にあの後、母や姉に結婚式の仕度について相談をした。すると、待ってましたとばかりに母は熱心に聞いてくれる。姉もだ。それからはゾラもてんてこ舞いの日々を送る。ウェディングドレスの採寸やヴェールなどの準備など、やる事は山程あった。

 現在、ウェディングドレスの注文を済ませ、ヴェールを母と姉に教えてもらいながら。ゾラは自身で手編みで作成していた。テイラーはレース編みのプロに頼んだらと言ったが。一つくらいは手作りしたいからと譲らなかった。こうして、ゾラは怒涛の一年を過ごしたのだった。


 翌年の五月中旬に、ゾラはテイラーとささやかな結婚式を挙げた。出席者は二人の両親、兄弟や親族、友人と少人数だが。二人共に「構わない」と、言っていた。まあ、ゾラはロランド公爵夫人になるから、もっと招待状を大人数に送ったらとは皆に言われたが。けど、テイラーはゾラのなるべく少人数にしたいと言う意見を尊重してくれた。

 ゾラはシンプルなスレンダーラインのウェディングドレスに身を包んでいた。ブーケには、夏に咲くピンクの薔薇やかすみ草が使われた物を選んだ。新婦の父であるリーランド侯爵と二人で、ヴァージンロードを歩く。その先には白のタキシードを身に纏うテイラーが待ち構えていた。彼が父から、ゾラの事を引き受けると一緒に壇上に上がった。二人して並び合う。


「では、まず。婚姻証明書にサインを」


 テイラーが先に、神官からペンを受け取り、サインをする。次にゾラが受け取って同じようにした。


「……はい、証明書はこれで完成です」 


 神官が頷きながら、婚姻証明書を確認した。そして、大きな声で宣言する。


「ここに、新たな夫妻が誕生しました。二人に幸多からむ事を!!」


「……テイラー、ゾラさん。おめでとう!!」


 誰かが二人に被さるように声を掛けた。テイラーはそちらに目を向ける。


「……あ、同僚のマークスだな。後、オスカーやシスティーナ殿も」


「本当ね」


 二人して、苦笑いし合う。拍手と歓声の中でテイラーはゾラの背中と膝裏に両手を差し入れた。


「……えっ?!」


 気がついたら、横抱きにされていた。テイラーのいきなりな行動に、騎士団の面々が「ヒュー、やるな!」とかひやかす。システィーナは「やっぱり、あの人はムッツリね」とか、のたまっている。ゾラは薄っすらと顔を赤らめながらも、さすがに暴れたりしない。しばらくは彼に身を委ねていたのだった。


 ――True end――




 

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