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ライラ、大失態をする。あるいはパラダイムシフトの瞬間。

 きらびやかなシャンデリアが輝く広間。

 年に数度ある強制参加である夜会の会場にライラはいた。

 華やかな場で麗しき乙女たちがひらひらと泳ぐようだった。ライラはその場でため息をついた。


 服がとても心もとない。流行りの服だけはお願いだからと両親に懇願されて着たが、もう帰りたい。

 もう誰にも見られず壁と同化したいとぴったり背中を張り付けても消えはしない。仕方ないので壁の隙間にちょっと身を押し込んで私壁ですと偽ったところで何も変わらない。

 わかってる。怪奇な行動をとっている令嬢として目立っちゃったのも。

 そのせいで余計な人を引き寄せてしまったことも。


「ごきげんよう。なにをしてらっしゃるの?」


 きらびやかなシャンデリアにも負けない美少女。この国の二番目のお姫様で、今日の夜会の主催者でもある。彼女はやや幼げな顔立ちでスタイルもその顔に合わせた感じ。周囲の女騎士は古い表現かもしれないがぼんきゅぼんのわがままボディ。

 前世の自分ならもげろと言ったなと思いを馳せる。今のライラはかなりのものだと自認しているので胸を張って立ちなおした。


「ロレッタ殿下にご挨拶申し上げます」


 そう言ってライラは淑女の礼をとった。この国の作法なのだが、なんか、後ろの足の筋を伸ばす運動みたいな動きをする。右足を前に左足は後ろに伸ばして腰を落とす。さらにスカート部分にをつまんで床に広がらないようにする。地味に体幹が鍛えられる。


「直答を許可する」


「特に意味ない行動です」


 なにをしていたか、という下問に答えよということだとライラは判断して正直に述べた。恥ずかしい恰好の自分消えたいという衝動に駆られてというのは理解されない。

 ほんとうになんてところに異世界転生したんだろうかとライラは思う。


 ライラの回答に困惑している女騎士はビキニアーマーだ。

 お姫様は肌を覆っている布は多いもののスケスケでおへそと太ももが半ばまでちらっと見えている。


 かくいうライラは上半身は可愛い系スポーツブラ、下は下着が見えそうなミニスカート。頑張って五分丈スパッツを着ている。その上から薄いシフォンっぽいロングスカートを着ている。どういう原理化はわからないが、半分透ける。

 下半身はともかく、上半身の防御力皆無である。


「あら、恥ずかしくて隠れているのかと思ったわ」


 ロレッタは扇で口元を隠しながらそういって可愛らしく笑い声をあげた。

 ライラは最悪だという気分を表に出さず、頭を垂れた。無用なトラブルは親に迷惑がかかる。それだけは避けておきたいのだ。ただでさえ、変わり者の一人娘がいてかわいそうにと言われているのだから。


「そんなみっともないものをつけて、来ないで頂戴」


 冷ややかな声にライラは顔をあげそうになった。


「品位が落ちるわ。あなた、ちゃんとした格好すれば縁談もすぐ決まるでしょうに」


 続く言葉に、ライラは無だ、無。と言い聞かせる。縁談いらんという話はもっとまずいのは理解している。ライラは一人娘で婿を絶賛募集中ということになっているのだから。


「ほんと、美しさを誇ればいいのに。

 着替えてらっしゃい」


 そう言って、踵を返すロレッタ。


「それは捨てておしまいなさい」


 ライラは顔をあげた。


「でも、胸が揺れると垂れるって言いますよ」


 ライラの小さい呟きは、思ったより響き渡り、会場はしんと静まり返った。


「どういうことかしら?」


 そういってロレッタはライラへ視線を向けた。

 優雅に微笑むお姫様が、全く笑っていないことをライラは察した。


 やっちまった。

 異世界転生して二十年とちょっと。ライラは今までにないピンチを迎えた。

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