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フルコト!  作者: 﨑山翔
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第四話 剣の神

ヒルコ、シナツヒコ、ホノイカヅチは、時に口喧嘩をしながらも(ほぼほぼ、シナツヒコとホノイカヅチ)仲良く一緒に暮らしていた。



ヒルコは口がないため、食事をする時は、神様なだけに神がかった力で食べ物をスムージー状にして、体の真ん中あたりから吸収している。


それを見たシナツヒコとホノイカヅチは、凄い!と感嘆した。


国土になれなかったとはいえ、さすが一番最初の神様だ。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ある日のこと。




空が急に暗くなり、遠くで雷が鳴っている音が聞こえた。


『あ。雨が降るかなぁ?』


ヒルコはそう言いながら振り向いた時。

ホノイカヅチの体が光った。


『ホノくん!体が光ってる!』


ゴロゴロと雷の音が近付いてくると、ホノイカヅチの体がさらに反応した。


「くっ…!」


特に左足に圧を感じ、ホノイカヅチは立っていられなくなった。


「ホノは…雷の神かもしれないね。でも、そんなに反応するのは不思議だけど…」


自分が司るものに対して、ホノイカヅチは何故か拒絶反応を起こしているように見えた。

シナツヒコは疑問に思った。

だか、雷がまったく関係ないわけでもないだろう。


ゴロゴロと雷は唸り、空を稲妻が切り裂いた。


「ぐわ……!!」


身体中に雷鳴が轟いているかのような衝撃を、ホノイカヅチは感じていた。


『ホノくん!!大丈夫?しっかりして!』


「ヒルちゃん!危ない!今のホノに触ったら感電する!」


ホノイカヅチの体は、バチバチバチバチと電流が走っているようだった。


『シナくん!どうしたらいいの!?』


「いや、どうしたらって…。どうしたらいいのか…。司っているものを押さえる事をどう説明していいのか…」


シナツヒコは風の神で、呼吸をするように風を司っているため、それを言葉にする事が出来ない。


「と、とにかく、ホノ!全身に力を入れて…。た、多分そうすればいいと思われる!」


「ぐっ…ぐっ…ぐああああ!!!」


シナツヒコの声がかき消されるように、ホノイカヅチが叫んだ。

あたりは雷光で白くなり、一瞬見えなくなった。


『ホノくん!!』

「ホノ!!」



シナツヒコとヒルコは目が開けられなかった。





「ホノイカヅチよ。胸に手を当て集中するのだ。雷を押さえ込むように集中せよ」




不意に、上から重低音の声がした。



「くっ…!!!」


言われたように、ホノイカヅチは胸に手を当て集中した。


「くっ!…あっ…」


すると、体から発していた電流は消え、雷の圧力も消えた。



「はぁ…はぁ…はぁ…」


ホノイカヅチは荒い呼吸の中、声の発する方を見上げる。


そこには、髭をたくわえた、剣士のような出で立ちの男神がいた。


「あ、あなたは…」


ヒルコとシナツヒコも驚いて、その男神を見ている。


「我の名はタケミカヅチ。剣の神だ。

ホノイカヅチよ。そなたは雷の神。さらにその胸には火も宿っている。もし、また押さえられぬ事が起きたら、胸に手を当て集中せよ」


力強い声は、とても安心感があった。


ホノイカヅチは、何故かとても懐かしい感覚を覚えていた。


「あ、あの…。俺…」


聞きたい事があるはずなのに、聞きたい言葉が出てこない。


ホノイカヅチは、すがるようにタケミカヅチを見ていた。


『ホノくん…』


ヒルコは心配そうに呟いた。




「また…会おう」



タケミカヅチは短く言うと、煙のように消えた。


「………」


辛そうにうなだれるホノイカヅチに、ヒルコは何と言えば良いのかわからない。




そんな重い雰囲気を、シナツヒコの軽やかな声が終わらせた。


「まあ…。良かったよね?何の神かわかって。ホノは雷の神で、しかも火の神でもあるんだよね。急にチートになって凄いよね?」


あははと笑いながら、ホノイカヅチの背中をバシバシ叩いた。



「お…お前な…。そんなあっさり…」


「さっきのタケミカヅチって神も、かっこよかったよね?ホノは知らないの?」


「あ、ああ…。知らなかった」


『でも、ホノくんの事は知ってたよね』


ヒルコも不思議に思っていたので、すんなり会話に入る。


「また会おうって言ってたし。次に会ったら色々聞けばいいんじゃない?」


『あ、そうだね!そうしよう!ホノくん』


名案だね!と、ヒルコとシナツヒコは笑っていた。




ホノイカヅチは、のほほんとしたそんな光景を見て、安心したようにため息をついた。


本当は、自分が何の神かわからず、とても不安だった。



まさか自分が雷の神で、しかも火も宿っているとは思いもしなかったが、とりあえず何者かがわかってホッとしていた。





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