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フルコト!  作者: 﨑山翔
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第二十一話 怒り

割れた窓から、教室に突風が吹き込んできた。

何かに掴まっていなければ飛ばされそうだ。


凄まじい勢いで椅子や机をなぎ倒していく。



稲妻が光り、それと同時に、教室の真ん中に雷が落ちたかのような衝撃が起こった。


まさに青天の霹靂である。



クラス全員が恐怖におののき、喚き叫んでいた。




そんな中---。


翔だけは何も怖くなかった。

むしろ、助けにきてくれたような、守られているような感じだった。




再び烈風が吹き荒れ、翔は思わず目を閉じた。



風がおさまり、そっと目を開けると目の前にシナツヒコとホノイカヅチが立っていた。



後ろ姿のためその表情は見えないが、激しい感情のオーラのようなものをヒシヒシと感じる。



(シナくん…ホノくん…。……あ!!姿が見えてる!!)



翔はハッとしてあたりを見渡す。


だが、翔以外に二柱の姿は見えていないようだった。


(どうして…ぼくだけは見えるんだろう…)



普段、シナツヒコとホノイカヅチは意識的に姿を見えるようにしている。


今は当然、意識をしていない。


そうであれば、人間である翔にも姿は見えないはずだ。


(もしかして…。ヒルちゃん…?ヒルちゃんが…?)



シナツヒコのまわりには、竜巻のようなものが発生していた。

稲光がホノイカヅチの体を覆っている。



(だ、ダメだ…。これ以上は…)


すでに、教室中がめちゃくちゃになっている。


それでも、今のところ大きな怪我をしている人はいない。



「シナくん!!ホノくん!!やめて!!」


思い切り叫んだが、翔の声は届いていない。


(ど…どうしよう!!)




竜巻のようなものがどんどん膨れ上がり、そのまわりをバチバチと放電している。




それが爆発しそうになった----。



「ダメだよ!!!」



翔がもう一度叫んだ瞬間。




『シナくん!ホノくん!』


翔の胸のあたりから、桃色の物体が飛び出てきた。



「ぎゃっ!!?」


翔は心臓が飛び出るほどに驚いた。



「なっなっなっなっなっ…」


金魚のように口をパクパクさせ、自分の中から出てきた物体を見上げている。


「あっ!もしかして…ヒルちゃん!?」


翔はいつか見た記憶を思い出した。






『シナくん、ホノくん!落ち着いて!』


「ヒルちゃん!?」

「ヒルコ!」



突如現れたヒルコに、シナツヒコとホノイカヅチもかなり驚愕している。


『葦原の中つ国で…、こんな騒ぎはまずいよ!カケルは大丈夫だから落ち着いて!』



ヒルコの言葉に、シナツヒコとホノイカヅチの怒りが鎮まっていく。




「シナくん…ホノくん…。ぼくは大丈夫。大丈夫だから」



「カケルくん…」


シナツヒコの纏っといた激しい風と、ホノイカヅチの雷光が消えた。






教室が静寂に包まれた。

誰もが呆然とする中、生徒の一人が我に返る。


「おい!今のうちに逃げるぞ!!」



「早くして!そこどいてよ!!」


生徒達は、我先にと教室から出て行った。






「お…俺達も行くぞ……」



誰もいなくなった、惨たる教室を見てホノイカヅチは青ざめている。


窓ガラスは割れ、机や椅子は積み上げられていた。



「神様の力って凄いね…。でも…、片付けた方がいいよね…?」


シナツヒコが翔を車椅子に乗せる。


「ありがとう、シナくん」



「…うん…。…このままでいいよ。これは天罰なんだから」


「でも、神様がこんな事しちゃっていいの?神様は平等なんでしょ?」



翔が心配していると、ヒルコが翔の肩に乗ってきた。

(か、かわいい…)




「神の恩恵は平等だけど、天罰は個人的に下るんだよ」


ホノイカヅチは翔とヒルコの頭を交互に撫でながら言った。


「あ!ずるい、ホノ!僕もカケルくんとヒルちゃんを撫でる!」


シナツヒコも翔とヒルコの頭を交互に撫ではじめる。


「えっ、えっ、えっと…。そ、そうなんだ…」



「あっ。もちろん、素晴らしい人間には神様から個人的なギフトが贈られるよ。例えば…、運が良くなったりね」


幸せそうにヒルコの頭を撫でているシナツヒコは、そう言ったあとに首をかしげる。


「それにしても…。どうして今、カケルくんの中からヒルちゃんが現れたんだろ?」


ヒルコは少し考えてから答えた。


『だんだん目が覚めてきたんだ。ずっとカケルくんの中で眠っていたみたい。凄く長い夢から覚めた感じだよ。その時、カケルくんがシナくんとホノくんを止めたいって強く願ったんだ。だからぼくが出たんだと思う』







バタバタバタバタバタバタバタバタ…!!!

遠くの方から足音が聞こえてきた。


「早く!早く!」


生徒の一人が先生を急かしている。

生徒達が先生を連れて、この教室に向かっていた。





「とりあえず、ここから離れよう!」

「う、うん!」


シナツヒコは車椅子を押した。


めちゃくちゃになった教室をほったらかしにして逃げるのは気が引けるが、今は翔としてもクラスメイトと顔を合わせたくない。



ホノイカヅチが先導し、誰にも会わずに学校から出た。



「はぁ…、良かった…」




「ごめんね、カケルくん」

「ごめん…、カケル」


ホッと一息ついた翔に、シナツヒコとホノイカヅチが謝った。


「ううん…。びっくりしたけど…、助けてくれたんだよね。ありがとう…」





ニコニコして聞いていたヒルコは、すぅっと吸い込まれるように翔の中へと戻っていった。










































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