表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/72

65「孤高の存在」

「お兄ちゃんが〝生首アンデッド〟になっちゃったの!」

「ティーにぃ、痛くないのか、それ? っていうか、生きてるのか、それ?」


 衝撃的な光景に、顔面蒼白になるリカと、戸惑いを隠せないマーサに、ティーパが反応する。


「何を言っているんだ、二人とも。生首アンデッドだなんて、そんな冗談……冗……談……を……」


 と、そこまで言った後、ティーパは――


「首から下が無い」

「今気付いたの!?」


 ――漸く自分の身体の変化に気が付いた。


 ――直後――


「うっ」

「お兄ちゃん、どうしたの!?」

「ティーにぃ、大丈夫か!?」


 呻き声を上げるティーパに、二人が心配して駆け寄ると、彼は――


「首の切断面が地面と触れて、冷たくてちょっと気持ち良い」

「変な所で、快感を感じないで欲しいの!」

「心配して損したぞ!」


 ――いつもの無表情でそう呟き、リカたちに突っ込まれた。


 ――次の瞬間――


「ぐはっ」

「きゃああああああ!」

「うわああああああ!」


 ――突如、ティーパが、大量に吐血して――


「お兄ちゃん!」

「ティーにぃ!」


 リカとマーサが、悲痛な叫び声を上げた。


 ――が。


「あれ?」

「え?」

「へ?」


 ――気付くと――


「元に戻ってる……?」


 ――ティーパは、元の状態――五体満足に戻っていた。


 首を触ってみるティーパだったが、斬首されたのが嘘であったかのように、そこには傷一つ無く――


「一体何が……?」


 ティーパが、そう呟くと――


「テッテレー! ()()()()()()()!」


 ――陽気な叫び声が聞こえて――


 ――リカとマーサが振り向くと、そこには――


 物体創造魔法で創った〝ドッキリ大成功!〟と書かれた看板を掲げながら笑みを浮かべるシャウルがいた。


「フッ。驚いたか? この我が仕掛けた美しいサプライズに! 首を切断されたように見えたのは、全てこの我の美しい幻覚(イリュージョン)魔法(・マジック)だ!」


 指をパチンと鳴らして看板を消したシャウルは、大仰な身振り手振りで説明を続ける。


「フッ。ティーパによってパンツを食べられた我は、魔力を取り戻し、魔法を使えるようになった。そして、目に見える形で魔力を操って、あたかも〝聖魔石〟が再起動したかのように見せ掛けたのだ! 本当は、この通り、休眠状態のままにも拘らず!」


 そう言ってシャウルがこれ見よがしに見せ付けた、その手中にある〝聖魔石〟は、確かに全く輝いておらず、ティーパの身体を縛めていた漆黒の光も消えている。


 天を仰ぎながら、滔々と語るシャウルは――


「フッ。勇者として異世界転生して四百年間余り。元ヒキニート――もとい、〝孤高の存在〟だった我だが、存外、寂しがり屋でもあったらしくてな。長い間誰とも話していなかったため、どうしても、ちょっぴり御茶目なコミュニケーションを取ってみたくなってしまったのだ。そのため、サプライズを仕掛けた。まぁ、貴様らにとっても、良い刺激になったであろう。フハハハハハ! フハハハハハ! フハハハハハボブベッ!」


 ――無言で近付いて来たマーサに殴られて、吹っ飛んだ。


「何をする武闘家幼女ぶぼはっ!? ……いやいや、膨張した闘気を纏っての殴打は、本気で死にかねんから止めて欲しぎがぼっ! ……あと、ローブ少女よ、杖の尖った方で人の顔面を突くのは危ないから止めでぐぶっ!」


 怒り心頭のマーサとリカによって、シャウルは、ボコボコにされて――


「うるさい!」

「死ぬの!」

「ああッ! この美しい我が、このような責苦を味わう事になろうとは! ああッ! ああッ!! あああああああああああああああああああッ!!!」


 ――その嬌声が、グロモラージ平野に響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ