43「巨大炎槍」
「変態ですわあああああああああああああああああああ!」
至極真っ当な指摘と共に、ディクセアが両腕を交差させる形で、炎槍と雷槍をティーパに投げ付ける。
――が。
「ふっ」
――それを読んでいたらしい彼は、頭上の魔王を掴んで胸元に引き寄せつつ、素早くダッキング――屈んで回避しながら前進、ディクセアの脇を通り抜けて――アンたちの下へと戻った。
「ただいま」
「お兄ちゃん! 無事で良かったの! でも、ただいまのチューが無いのはちょっと不満なの!」
「どわはははははははは! さすがティー兄! 面白い!」
「お帰り……じゃないわよ! 無茶ばっかして! あと、無茶ばっかさせて!」
二度目の〝パンツ〟を食べられたディクセアは――
――わなわなと震え出したかと思うと――
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「「「「!」」」」
――天を仰ぎ、咆哮――
――魔力が膨張していき――
――それが〝紅蓮の炎〟という形で、彼女の全身を包み――
――〝飛行魔法〟ではなく、〝膨れ上がる猛炎〟により、空へと舞い上がり――
「一度ならず、二度までも! 私のおパンツを奪って食べるだなんて! 灰にしてやりますわああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
――天に掲げた両手から膨大な量の炎が噴き出したかと思うと――
――みるみるうちに、巨大な炎槍へと形を変えていく。
「今ノーパンなのに、よく上空に行けるな」
「それはあたしもちょっと思ったわ――じゃなくて! ここからどうするのよ? あの子、見るからにヤバいわよ!」
大規模魔法の影響により、周囲が瞬時に砂漠地帯へと変貌したかのような熱気の中、流れる汗もそのままに、アンが訊ねる。
「まずは、大規模魔法で攻撃させる」
「それで?」
「避ける」
「どうやって?」
「気合いで」
「気合いで何とかなるかあああああああああああああああ!!!」
そうこうする内に――
――ディクセアの頭上の炎槍は、更に巨大化していき――
――都市――どころか、一国を滅ぼす事も可能な程の威力を誇る、それを見て――
「マーサ」
ティーパが、マーサに何事かを耳打ちすると――
「分かった! 僕に任せとけ! どわはははははははは!」
――豪快に笑いつつ、マーサは頷いて――
「死ぬのですわあああああああああああああああああああ!!!」
――ディクセアが叫びながら仰け反り、炎槍が一際大きく膨らんだ瞬間――
「今だ」
ティーパの合図で――
「今度こそ、〝パンパンアンティグー〟のアクセサリーを落としちゃったあああああああああああ! たああああああああああああああああああ!!!」
――マーサは、先程密かにティーパから渡されていた、〝ティーパが王都クローズで餞別に貰っていたネックレス〟を、光の壁に沿うようにして、遠くに向かって投げた。
すると――
「パンパンアンティグー様! ……って、それも偽物じゃないですのおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
パンツを再び食べられた事で、魔力のみならず、視力も上がっているのだろうか、近付く事なく見抜いたディクセアは、だが――
「あ」
――先程、魔法を放つモーションに入ってしまっていた事から――
――気付いた時には、既に、巨大炎槍が、飛んで行ってしまっており――
――視線と意識をネックレスに誘導されていた事で――
――ティーパたちから狙いが逸れて――
――凄まじい衝撃、轟音と共に、光の壁にぶつかって――
――大猛炎が、光の壁を焼き尽くそうとして――
――際限なく広がろうとするそれを、光の壁が抑え込もうとして――
――一進一退を数度、繰り返した後に――
――最強防御を誇っていた光の壁が――
「「「「「!」」」」」
――崩壊した。




