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42「アクセサリー」

「は!?」

「何考えてるまお!?」


 怪訝な表情を浮かべるアンと魔王だったが――


「これしかない。良いから、今から俺の言う通りにしろ」


 有無を言わせぬティーパの物言いに、アンは――


(そうよ! コイツは変態だけど、いつだって難しい局面を打開して来たじゃない!)


「分かったわ!」


 ――頷いた。


※―※―※


「お死になさいいいいいいいいいいいいいいいいい!」

「どわはははははははは!」

「きゃあ! なの!」


 ――ディクセアによる、天から降り注ぐ広範囲攻撃に対して、右往左往して逃げ惑いながらも――


「……それで、その名前は……?」

「……よく覚えていないが、多分……だ」

「……本当にそれで合ってるんでしょうね……?」

「……お前もあの場で聞いていただろうが……」

「……そんなの一々覚えてないわよ……!」

「……女なら、それくらい知っていて然るべきだろう……」

「……悪かったわね……! ……生憎とそんなの知らないわよ……! ……孤児院育ち舐めんじゃないわよ……!」


 ――何やら打ち合わせている様子のティーパとアンは――


「よし、それで行くぞ」

「いつもぶっつけ本番よね!」


 ――話が纏まったらしく、上空のディクセアを見据えると――


「後は頼んだ」

「まお!」


 ――頭上に魔王を乗せたティーパは、どこかへと走り出した。


 一方、アンは――


「ふぅ」

 

 ――息を一つして、思い切り空気を吸い込むと――


「あ! うっかり手を滑らせて、あたしの宝物である、新進気鋭職人〝()()()()()()()()()()()()()〟のアクセサリーを――」


 ――わざとらしい演技口調で叫ぶと、革袋から取り出した、〝王都クローズで、商店主から餞別に貰ったアクセサリー二点〟を――


「――落としてしまったわあああああああ! はあああああああああああ!!!」


 ――明後日の方向へと、全力で投げた。


(お願い!)


 アンが心の中で祈っていると――


 ――一瞬の間の後――


「新進気鋭職人〝()()()()()()()()()()〟のアクセサリーですって!!??」


(全然違うじゃないの!)


 ――心中でアンが盛大に突っ込む中――


「それはいけませんわ! パンパンアンティグー様あああああああああああ!」


(何でええええええええええええ!?)


 ――間違ったにも拘らず、何故かキーワードが通じたディクセアは、投げられたアクセサリーの方向へと高速で飛んで行き――


 ――地面に落ちたそれらを救わんとすべく、舞い降りた彼女は――


「パンパンアンティグー様、大丈夫ですの? お怪我はありませんの?」


(製作者の名前で、アクセサリーに語り掛けてるわ……。怖っ!)


 ――優しく拾い上げたイヤリングとペンダントを見て――


「――って、これ、パンパンアンティグー様じゃないじゃないですの!」


 ――漸く全てが〝狂言〟であった事に気付き――


「騙しましたわねええええええええええええええええええええええ! 絶対に許しませんわああああああああああああああああああああああああ!」

「ヒッ!」


 ――怒号を上げるディクセアが――


 ――大気を――


 ――震わせて――


 ――怒りに燃える瞳で――


 ――アンを睨み付けた――


 ――次の瞬間――


「――ッ!?」


 ――背後に気配を感じたディクセアが、攻撃回避のために身を翻そうとするが――


「遅い」

「!」


 ――密かに近付いていたティーパが、彼女の赤ドレスのスカートを一瞬で捲り上げると、短剣ダガーでパンツの両端を切断、強奪して口に放り込み――飲み込んだ。

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