38「VSレインボードラゴン」
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!」
「ド、ドラゴンまお! ヤバいまお!」
「いやいや。自分で配置した守護者だろうが」
「魔王、あんなの配置したまお?」
「知らんがな」
頭に魔王を乗せつつ、雄叫びを上げるドラゴンから一旦距離を取るティーパと仲間たち。
頼みの綱である最大戦力のマーサは、アンが抱き上げて運び、入口付近で床に下ろすと、「……あり……がとう……。どわは……はは……は……!」と、まだかなり辛そうだ。
「マーサ抜きで何とかしないとな」
ティーパは、頭上の魔王に語り掛けた。
「魔王、あのドラゴンを大人しくさせられないか、試してみろ」
「やってみるまお!」
魔王は、ティーパの頭の上に立つと、その見た目とは裏腹な、厳然とした声色と表情で、言葉を紡ぐ。
「虹色ドラゴンよ。この魔王の眷族として、あるべき姿を示すまお! 頭を垂れ、跪くまお!」
厳かな魔王の声に、虹色ドラゴンは――
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!」
――怒号を上げて、全身が赤色に変化、その巨躯が炎に包まれた。
「全然言うこと聞いてくれないまお!」
「まぁ、そうだろうな。期待はしていなかった」
「酷いまお! じゃあ、何でやらせたまお!? 鬼畜まお!」
「ああ、不憫なまーちゃん、本当に可愛いわ!」
リカが、「で、どうするの、お兄ちゃん? マーサが戦えないんじゃ、勝ち目がないの!」と聞くと、ティーパは素早く思考し、魔王に質問した。
「魔王。〝黒魔石〟に触れれば、ある程度力を取り戻せるのか?」
「そうまお!」
「直ぐにか?」
「直ぐまお!」
「そしたら、あのドラゴンも倒せるか?」
「当たり前まお! デコピン一発でノックアウトまお!」
デコピンはともかく、戦力が大幅に増強されるなら、そこに賭けるしかなかった。
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!」
見ると、ドラゴンの周囲――虚空に無数の炎が出現しており――
「俺が、奴の攻撃を何とかする。リカは、マーサの横で待機」
「分かったの!」
「で、アンは――」
「あたしは、どうする? ドラゴン相手でも、注意を引いたりするくらいは出来るわよ!」
「――俺を、応援しとけ」
「え? 応援?」
「ああ」
「……分かったわ!」
戸惑うアンだったが、そこは躊躇が許されぬ戦場、ともかく頷いて――
――ティーパは――
「行くぞ。ドラゴン」
――一歩前へ歩み出て、ドラゴンを真っ直ぐに見据えると――
「『乱れパンツ』」
――革袋から、幾多のパンツを空中に投げ始めた。
すると、ドラゴンは――
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!」
――大量の的が出現したことで、本能的に――
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!」
「よし、良い子だ」
――空中のパンツ群を、数多の炎で撃ち始めた。
「魔王。今の内だ。〝黒魔石〟をゲットして来い」
「分かったまお!」
魔王が、そろ~りと、ティーパの頭上から離れて、ドラゴン近くの危険区域を迂回せんと、玉座の間の左隅の方へと飛んで行く。
「どんどん行くぞ。『乱れパンツ』」
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!」
炎を飛ばしてパンツ群を撃ち抜き、燃やしていたドラゴンは――
――暫くすると――
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!」
――青色に身体を変化させて、氷柱を飛翔させて、パンツ群を貫通して――
――更に――
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!」
――金色になったかと思うと、雷撃で的を貫いていった。
心做しか、ドラゴンの表情が、楽しそうに見える。
「って、そんな訳ないわよね! それよりも――」
アンは、目の前で奮闘するティーパを見て――
(何か、恥ずかしいわね……)
(でも、約束しちゃったし……)
――頬を朱に染めつつ、躊躇いがちに叫んだ。
「ティ、ティーパ! が、頑張れええええ!」
それを聞いたティーパは、振り返ると――
「何やってるんだ、お前?」
「あんたがやれって言ったんでしょうが! 殺すわよ!」
――怪訝そうな表情で問い掛け、アンは顔を真っ赤にして吼えた。
その間に、魔王は着実に玉座の間の最奥――台座に近付いて――
「やっと、辿り着いたまお!」
――とうとう、黒く輝く〝黒魔石〟に触れた。
――直後――
「来たまおおおおおおおおおおおおおおお!」
――膨大な魔力が、〝黒魔石〟から魔王の体内へと流れ込んでいき――
「これこれこれこれ! これまお!! これまお!!!」
――興奮の余り、瞳孔が開きっ放しの魔王は、振り返ると――
「食らうまお! 『魔王ビーム』!!!」
――人差し指と中指の二本を、背を向けるドラゴンに対して突き出して――
「ヤバい。避けろ」
「分かったわ!」
「分かったの!」
――ティーパの声に反応して、マーサを抱き上げたアンとリカが、部屋の隅へと、素早く駆けていき――
――魔王の指先から、漆黒の光線が猛スピードで飛び――
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
――胴体を貫かれたドラゴンは――爆ぜて、死亡し――
――入口の扉を貫通した漆黒光線は――
――勢い余って、魔王城自体をも貫き――
「いや、やり過ぎだろ」
――魔王城そのものが、爆発した。




