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2「町娘たちとティーパ」

 不穏な空気を感じ取り、アンが少女たちに語り掛ける。


「ちょ、ちょっと待って! コイツは、そんなに悪い奴じゃないのよ!」


 殺伐とした雰囲気を纏う彼女らから感じ取れるのは――

 良くて、私刑リンチ

 悪いと、衛兵に引き渡されて、牢獄行き。


 そのどちらも防ぐために、アンが必死に弁護する。

 

 ――が。

 

「コイツは、ただ単に、女の子の穿いているパンツを脱がして――」


 ――庇おうとして――


「脱ぎたてパンツを好んで食べるだけの――」


「食べるだけの――」


「食べる……だけの……」


 ――語っている内に――


「――ええ、ただの変態よ! 今すぐ衛兵に引き渡して、牢屋にぶち込んで貰いましょう!」

「おい」


 ――こんな時でさえ、胸元から取り出したパンツを黙々と食べているティーパを目にして、弁護している自分が馬鹿らしくなったアンが手の平を返し、思わずティーパが抗議の声を上げる。


 その間にも、少女たちは、その包囲網を狭めていき――


「「「「「フー、フー、フー、フー、フー!」」」」」


 ――鼻息荒く、近寄って来た彼女らは――


 ――とうとう、手の届く距離まで接近すると――


 ――一斉に――


「「「「「会いたかったわ! パンツ男!」」」」」

「……へ?」


 満面の笑みを浮かべ、明るく告げた。 

 愕然とするアン。


「いつも、目的の場所まで一直線で、すごいスピードで移動しちゃうんだから!」

「何か、今日は珍しいわね!」

「本当! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」


「!」


 それを聞いたアンは――


(もしかして……自分よりも背が低いあたしのために、今日は特別に、歩調を合わせてくれてたって事……?)


 ――たった今牢屋にぶち込もうとした少年に――今も尚新たなパンツを食べ続ける男に、図らずも、ときめいてしまい、頬を紅潮させた。


「って、そう言えば、貴方たち、何で怒ってないの? 変態――コイツの被害者じゃないの?」


 今更ながら、何故かティーパに対して親し気な様子の少女たちに対して、アンは疑問を呈する。

 すると、彼女たちは、口々に答えた。


「そりゃ、最初はビックリしたけどね」

「だって、街中で会っていきなり、『古くなったパンツをくれ』だもん」

「ただの変質者だと思ったし」


「いや、それで合ってるわよ?」


 思わず途中で、口を挟むアン。


「でもね、パンツ男は、とっても優しかったの!」

「そうそう! 重い物を持ってくれたり!」

「迷子になったペットの子猫を、一緒に探してくれたり!」

「お母さんのお気に入りの壺を割っちゃって怒らせた時に、一緒に謝ってくれたり!」


「いや、それは一人で謝りなさいよ」


「だから――」

「「「「「私たちは、パンツ男が大好きなの!」」」」」

「!」


 今まで疑問だった〝大量のパンツの出所〟である彼女たちは、意外にも、ティーパに好感を持っていた。


「ほら、探したらまだあったから! お古のパンツ!」

「これ、妹が大きくなって、穿けなくなったパンツ!」

「こないだ、お店で食べやすそうなパンツがあったから、買っておいたの! あげる!」


「いや、食べやすそうなて」


 彼女たちは、次々とティーパに色取り取りのパンツを渡して行く。


 「助かる。感謝する」と謝辞を述べるティーパに、「良いのよ!」「また持って来るわね!」と、少女たちは応じると――


「「「「「じゃあ、またね!」」」」」


 笑顔で別れを告げ、去って行った。


「……なんか、すごかったわね……」


 まるで嵐のような一時が過ぎ去り、アンはポツリと呟く。

 

 仕切り直すかのように、「コホン」と咳払いをしたアンは、町娘たちから貰ったパンツによって、パンパンに膨れ上がった革袋を手にするティーパを見た。


「でも、少し安心したわ。そりゃ、流石のあんたも、見ず知らずの女の子のパンツを無理矢理脱がして食べたりはしないわよね」

「いや、何人かしたぞ? ちゃんと」

「してるんかいッ! 何が〝ちゃんと〟じゃあああああああ!」

「ぼべはっ」


 も当然のようにのたまうティーパを、アンの拳が襲った。


 尚、〝何人か〟の〝町娘たち〟の〝パンツを無理矢理脱がして食べた〟事に関して――

 ――後に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだが、この時の彼らには知る由も無かった。


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