21「家」
ティーパたちが、リカとケミーと共に、二人の住む家へと戻っていく途中で――
「これで、リカたちの家――お父さんとお母さんとお姉ちゃんと一緒に暮らした家に、戻れるの!」
――明るい顔でそう言うリカに、ケミーが微笑みながら頷いた。
「そうだね。雑草とか蜘蛛の巣とか凄そうだし、大分掃除が必要だろうけど、見に行ってみようか」
数年間放置しておいたのだ。
当然、ケミーが言う通り、荒れ放題になっているはずだった。
※―※―※
――が。
「……え? 何で……なの……?」
「……これは、一体……どういう事だい?」
生家に戻ってみると――建物の外壁が、綺麗に保たれていた。
建物だけでなく、庭に雑草も生えておらず、更には、花壇に植えられていた色とりどりの花さえも、綺麗に咲いている。
庭の中で、呆然とする姉妹の視界に現れたのは、偶然家の前を通り掛かった――
「「スティナお婆ちゃん!」」
「リカ! ケミー! お前さんたち……まさか……!?」
――目を瞠る老婆だった。
「そうなの! 病気、治ったの!」
小走りで駆け寄り、満面の笑みを浮かべるリカに、スティナは――
「そうじゃったか……それは良かった……良かったのう……」
思わず目を潤ませる。
その姿を見て、リカもつられて泣きそうになるが――
「スティナお婆ちゃん。あたいらの家が、この通り、綺麗なままなんだよ。何年も経ってるのに。何でか知らないかい?」
――妹の背後から、ケミーが聞くと――
「わ、儂は何も知らんのじゃ! 息子と孫たちに言って、お前さんたちの家の外壁と庭を、定期的に掃除して手入れするように指示したりはしておらんのじゃ!」
「誤魔化すの下手くそか!」
――慌てたスティナは、聞かれていない事まで喋り、アンに勢い良く突っ込まれた。
「そうだったんだね……。ありがとう、スティナお婆ちゃん!」
「スティナお婆ちゃん……ありがとうなの……!」
笑顔で礼を述べるケミーと、目に涙を浮かべるリカに、「ふん。別に感謝されるようなことは、何もしてはいないのじゃ」と言って、背を向けたスティナは――
「ただ、お前さんたちには、以前のように、笑顔でいて欲しいと思っただけじゃ」
――そう呟くと――
「はぁ~! これで、あの小屋に近付こうとする者に警告したり、息子と孫たちに他家の掃除と手入れの指示をする必要も無くなって、せいせいするのじゃ! 仕事が減って良かったのじゃ!」
――杖をつきながら、歩き出して――
「本当にありがとう!」
「本当にありがとうなの!」
――重ねて感謝を述べるリカとケミーに、背を向けたまま手の平をひらひらとさせながら、立ち去って行った。




