表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/72

19「姉妹」

「ちょっとここで待ってなさい!」


 アンが六毛猫むけねこを抱えつつ、砂埃を上げながら、帝都の通りを爆走する。


 行方不明のペット捜索の依頼主に猫を届け、依頼主が持っていた書類にサインをして貰い、冒険者ギルドに持って行き、謝礼金を受け取り、その全てを数分で済ませたアンが、全速力で戻って来ると――


「待ってなさいって、言ったでしょおおおおおおおおおお!」


 ――ティーパに腕を絡ませたリカは、帰宅する為に、商業区域から住宅区域へと一緒に移動している最中だった。

 ぜぇぜぇと肩で息をするアンは、ティーパとリカの間に強引に身体を割り込ませると――


「離れなさい!」

「あっ。もう!」


 ――二人の肩を左右に押して、引き剥がした。


※―※―※


 リカの家に戻って来ると、彼女が寝ていた部屋に――


「ん~! ん~ん~! ん~ん~ん~!」


 ――幾多のパンツの端と端を結び合わせて、一本の紐にした『パンツロープ』によって、後ろ手に縛られ、御丁寧に足首も縛られて床に転がされているケミーがおり――


「女の子を縛って、パンツを口に突っ込んで床に転がすって、どんだけ鬼畜なのよッ!?」

「ぶぼはっ」


 ――口内に詰め込まれている物を目にして、アンがティーパに怒りの鉄拳を見舞った。


 アンが、「ごめんね」と言いながら、ケミーの身体の自由を奪っていた『パンツロープ』を外す。


 ケミーが、口の中のパンツを素早く取り出して――


 ――床に落ちていた二本の包丁を拾うと――


「殺す!」


 ――ティーパを睨み付け、明確な殺意と共に立ち上がった――


 ――直後――


「お姉ちゃん!」

「!」


 ――駆け寄って来たリカが、勢い良く抱き着いて来て――


 ――瞬時に包丁を床に落としつつ、全く躊躇せずにリカを抱き留めたケミーは――


「リカ……今、走って……? って、まさか!? あんた……!」

「うん……治ったの……! ……病気……!」

「!!!」


 少し顔を離して、じっと見詰めるリカの瞳から、血ではなく涙が流れるのを見たケミーは――


「本当なんだね! 良かった!! 本当に良かったよおおおおおおおお!!!」

「……うん……!! ありがとう、お姉ちゃん!!!」


 ――最愛の妹を、強く、強く抱き締めて――


 ――生家を追われ、社会から隔離され、そのまま誰にも知られず死ぬ運命にあった姉妹は――


 ――抱き合ったまま、暫く泣き続けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ