14「脱衣」
思ってもみなかった言葉に、リカは瞠目する。
「……じゃあ……あなたが……〝聖魔石〟を……手に入れたい……理由って……もしかして……?」
「………………」
その問いにティーパは答えない。
それ以上踏み込む事は、躊躇われた。
代わりに、リカは、天井を見上げる。
「……ねぇ……死ぬって……どんな感じ……なの……?」
「………………」
「……リカも……死んだら……転生……出来るの……?」
「期待はしない方が良い。恐らく、俺のはレアケースだ」
「……そっか……。……じゃあ……やっぱり……死んじゃったら……そこで……終わりなの……」
まるで、天井の上――屋根をも通り越して、天に思いを馳せているかのような、穏やかな瞳が――
――突如、苦し気に細められ――血とは違う、透明な雫が溢れ出る。
「……死にたく……ない……の……!」
ここ数日間の対話で、ティーパに心を許した結果か、はたまた、〝死〟を経験しているティーパの言葉が刺激となったのか。
或いは、必死に隠そうと押し殺して来た感情が、限界を迎えたのだろうか。
一度溢れ出した激情は、もう止める事は出来なかった。
「……死んだら……お姉ちゃんに……恩返し……出来なく……なるの……。……リカは……今まで……お姉ちゃんから……貰って……ばかり……だったの……。……何も……返せない……まま……死ぬのは……絶対に……嫌なの……!」
対照的に、先刻感情の欠片が感じられたティーパの顔からは表情が消え、いつもの仏頂面に戻っている。
リカは、辛そうに上体を起こすと――
「……ドアを……閉めるの……」
ティーパの背後――開けっ放しの扉を指し示す。
言われた通り、ティーパが扉を閉めると、リカは、上目遣いで告げた。
「……しょうがないから……リカの……パンツ……あげるの……」
「感謝する」
ベッドの上で膝立ちになると、リカは、自らの血で真っ赤に染まったスカートの裾を摘まみ、少しずつたくし上げて――
「……後ろ……向いてるの……」
「分かった」
――凝視しているティーパに対して、頬を朱に染めながら、そう呟いた。
ティーパが背を向けると、背後から、微かな衣擦れ音が聞こえて来る。
そのまま――
――暫く――
――待って――
――待って――
――待ち続けた――
――が――
「……ああ……もう……! ……やっぱり……無理なの……! ……こんなの……恥ずかしくて……出来ないの……!」
リカは、半狂乱になって髪を振り乱す。
すると――
「じゃあ、俺が手伝ってやる」
「……え?」
――ベッドの上にペタンと座り込んでいるリカに、ティーパが近付き――
「きゃあああああああ!」
――押し倒すと、スカートの中に頭を突っ込んで――
「やめてええええええ!」
――素早くリカのパンツを脱がして、自分の口の中に放り込むと――
「……この……変態……!」
「ごぶはっ」
――ティーパは、寝転んだ状態のリカに顔を蹴られ――
「……変態……変態……変態……変態……変態……!」
――生まれて初めて〝男に下着を脱がされた〟がために、女の本能が〝危険〟を察知し、よろよろとベッドから降りたリカは――
「リカ、どうしたんだい!?」
――悲鳴を聞き付けて部屋に入って来たケミーと入れ替わりに――
「犯されるのおおおおおおおおおおおおおお!」
――部屋を出ていき――
――ケミーは――
「世界一可愛いあたいの妹に、何やってんだいあんた!」
――背後から包丁を二本取り出して――
「違う。誤解――でもないが、誤解だ」
「うるさい! 死ねえええええええええええええええ!」
――妹のパンツを咀嚼する男に、襲い掛かった。




