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私の人生のように

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

訳あって、女の子に対する言葉が辛辣です。

もしかしたら不快に思われる事もあるかも知れません。

物静かな喫茶店。店内に充満する穏やかなクラシックが、店の雰囲気にニスを施す。時折聞こえる夫人達の話し声までもがささやかで、作業をするには格好の場所だった。

そこで女は珈琲を一杯だけ頼み、紙に向かって延々と筆を走らせていた。描き出すのはファンタジーの世界。下書きは既に終了しており、延々とペンを入れていた。しかし唐突に指を止めて、仄暗い目線を此方に向けた。

「死ぬ前までに、誰かの心に爪痕残せれば良いと思ってんだ。でもまぁ……。無理……なんだよね」

女はそれだけ言うと紙の上辺を握り込み、割くような仕草をして見せた。切れ込みが出来る。でもそれ以上侵食は起きる事無く手を止めた。不毛で無意味だと思ったのだろう。この、紙を割くという行為にさえ。

女は一息着くために目の前の珈琲に口を付け、静かに置いた。でも目の色だけは相変わらず仄暗かった。

「持ってる人はなんでも持ってるし。地味にやってきた努力って、意味あんのかなって時折思っちゃう」

「さぁな。分かんない」

彼女は何も持ち得なかった。類稀な才能も、技術も。抜きん出た構成力も無ければ、心を揺さぶる場面さえ書けなかった。ただ唯一あったのは、地道に物事を進める能力だけ。指にペンだこを作り、掌を墨で汚しても、諦めない心だけ。

でも、そんな奴が何かを勝ち得る話というのが、存外燃えるんだ。自分に出来ない願掛けを人に託すように。

「私の好きな作家さん。ずっと前にお亡くなりなっちゃって……。でもSNS覗くと、未だにコメント書いてる方がいて。私、そこまでやれんのかなって思って。人の心に残せないものに、意味なんかあんのかなって」

自暴自棄になったような言葉の割に。表情は客観的で、何処か俯瞰的だった。自分の限界を知った時、人間は思ったよりずっと冷静なのかも知れない。配られたカードに前々から気がついていて、そこである程度バリアを張っているのかも知れない。

「そこまで印象着けなくで良いだろうよ。地道に物事を進める様は、存外刺さる奴がいるもんだ」

見つめ合う事数秒。止まっていた指の動きが再開した。線をなぞり、陳腐な世界を構築していく。顔に失意は無く、ひたむきな顔があるだけだった。

「まぁ、それも私の人生という事で」

女はペンを走らせながら、そう呟いた。

書く物語は、この彼女のように抜きん出たものでは無いかも知れない。でも、それでも。

女の子

毎日地道に絵を描いている。でも評価は平行線。

自分の作品は誰の心にも残らないと思ってる。

自分よりも多く評価を貰っている、好きな作家さんが唐突にイラストを削除。惜しむ声を見る。

随分前にお亡くなりになった好きな作家さんに今でもコメントが届いている。

上記の事柄があって、やや自暴自棄になった。

此処まで惜しまれる作品を描けるのか。状態。


最後はしっかり達観した。地味でも良いと割り切った。


この子の描写が辛辣なのは、過度に誇示して下手な夢を見せたく無かったから。

抜きん出たところが全く無くて、それでも向き合っていたから。

持ってる人に嫉妬しない訳では無いけれど、でも嫉妬して上手くなる訳ではないから、向かい合うしかない。

そんな心情を表す為です。


派手さは無いけれど、こんな生き方してる人、好きですよ。

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