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39話 なぜ私の話になってるの!?



「まずはラーラ公爵令嬢。お誕生日、おめでとうございます」

「ありがとうございます。謹んで、そのお言葉をお受けいたします。エリゼオ王子」


ラーラ公爵令嬢と、エリゼオ第五王子。

その会話に聞き耳を立てていたのは、私だけではなかった。


高貴な身分であり、年齢も近い未婚の二人だ。


遠巻きではひそひそとした声で、「ジュリア様と婚約するよりはいいわね」とか、「王子をたぶらかしている噂の卑賎な男爵令嬢より断然お似合いよね。私じゃないなら、あの子に……」なんて率直な意見が漏れ聞こえてくる。



本人、すぐそばにいるんだけどね?


どうやら私があまりに豪奢なドレスを着て、化粧までしっかり施していることから、別人だと思われているらしかった。


耳が痛いとは思うのだけど、私も二人の方がお似合いだと思っているタチだ。


意見が合うわね、なんて一方では思っていたりするから、あえて文句を言ったりはしない。ただただ、エリゼオとラーラの会話に耳を澄ませてみる。


一応、エリゼオはラーラのためにプレゼントを選び、それを持って今日を迎えているのだ。

もしかすると、少しは私の考えた即興シナリオ『自然ロマンス作戦』が少しはうまくいって、お互いに意識をしあっていたりするかもしれない。


「……アニータ・デムーロ男爵令嬢。このような真似をする必要は本当にあるのですか。背中が触れているのも、まずいのではないかと」

「後生だからお願いです、ヴィオラさん。それに、今は私の執事って話でしたよね?」


言質はすでに取っていたので強気に出られた。

それになんだかんだと言って、彼はまじめなので任務と言えば、聞いてくれてしまうのだ。


私は背も高く存在感もある、ヴィオラの背に隠れるようにして、二人の会話をうかがう。


はじめは、お決まりの挨拶を交わしあっていたエリゼオとラーラだったが、すぐに思わぬ方向へと転がりはじめる。


「そういえば、今日はもうアニーとお話はされましたの?」

「ああ、このパーティーの前にね。ここに来てからは囲まれてしまってどうも、動きたいように動けない」

「大変よく分かりますよ、そのお気持ち。わたくしもなかなか思うようには動けていなくて困ります、本当ならすぐにでもお話をしに行きたいのに。

私はまだ短い付き合いですけど、彼女に会うと、不思議なことに元気になれたりしますから」

「あぁ、君は本当によく分かっているね、ラーラ公爵令嬢」


……なぜ、私の話になってしまうのだろう。


前回は二人の共通の話題としてはちょうどいいかと思ったけれど、違う。

元からそれを話すためだけに、彼らは会話しているかのようだ。


こんな会話を、私は学生の頃にしたことをある。

あれはそう、オタク友達と最推しキャラについて語っていた時のそれだ。


ほんのワンシーンについての会話だというのに、なぜか脈々と話したいことがあふれて、気付けば朝までオールで語り合うこともあった。


……私、なんてことないモブキャラのはずなんだけど。本来の役目は、悪役令嬢・ジュリアにいびられるところで終わっているはずなんだけど?


……思いはすれど、二人の会話は終わらない。


「エリゼオ王子とラーラ公爵令嬢、あんなに話し込むなんて、もしかして両想い?」


他の参加者たちは、仲睦まじそうに話し込む二人を見て、こんな風に噂話を交わすが、そうだとしたらどれだけよかったか。



私はヴィオラの陰に隠れながら、照れくさくてどうしようもなくなる。

すると、ヴィオラが言う。


「……シナリオとやらは失敗に終わったようですね。ただ、これでひとまず、噂自体は緩和されるのでは?」


抑揚のいっさいない、一定の声音だから理解するのに時間がかかったが、どうやら彼なりに気遣いの言葉をかけてくれたらしい。


「まあ、たしかにそうですね……」


シナリオの目標であった、ラーラとエリゼオを恋仲にすることには見事に失敗した。


しかし、まがいなりにも二人の関係は近づき、少しは周りから私に注がれる非難の目を回避することにはつながったと考えることもできる。


そしてこの結果はなにも私だけの力で得たものではない。


「ヴィオラさん、今回はシナリオに巻き込んでしまってすいません。でも、助かりました。ありがとうございます」

「いえ、お礼なら結構でございます。はじめは、とんだ厄介ごとに巻き込まれたものだと思いましたが。

今回の件で少し、エリゼオ王子があなたのような風変わりな男爵令嬢に肩入れする理由が分かったような気がします」

「えと……私なんか特別なことをしましたっけ?」


考えてみるが、とくなものは思い当たらない。ヴィオラには迷惑をかけてばかりになってしまった気がする。


「分からないならかまいませんよ。とにかく、私の方からもお礼を述べさせていただきたい。あなたのおかげで張りすぎていた肩から力を抜くことができた」


ヴィオラはそう言うと、こちらを振り返る。


「さあ。もう、聞き耳を立てずとも会話の内容はお分かりでしょう。お料理とワインをお取りいたしましょう、お嬢様」


ヒールを履いていたこともあり、思わずずっこけそうになった。

『力を抜くことができた』と言った矢先に、これである。





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