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奪原発論  作者: 日本のスターリン
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第6章 Don't asahi!(アサヒるな!)

 ついに、テレビ出演当日になった。原発推進派として浩志とロザが来ていた。そして脱原発派にはあの三留木ひろしと大泉純太郎が呼ばれていた。


ロザ「嫌な二人ね。」

浩志「それはお互い様かもしれないな。」


 そしていよいよ討論番組が始まった。傍聴席にいる観客が見守る中、MCと浩志・ロザと三留木・大泉の5人が座っている。


MC「『日本に原発は必要か、否か』生放送で完膚なきまでに討論していって貰います。」

浩志「……。」

大泉「分かりきった事だ。太陽光発電や風力発電などの自然エネルギー発電を推進すれば日本は原発を0にできる!」

浩志「……。太陽光発電は悪天候時や夜間は発電できないではありませんか。風力発電でも無風では発電できない!気象や時間帯によって出力が運任せで決まるような不安定な発電では到底原発の代わりには成りえない。」

大泉「私一人だけで完全な代案を出す事は不可能だ。しかし、原発即時0という方針を打ち出す事がまず重要だ。」

浩志「それでは根本的な解決になりません!火力依存回帰ありきの無責任な意見です!」

三留木「ドイツでは自然エネルギーの利用で脱原発に成功している。」

ロザ「ドイツは脱原発の実験的状態にあって『成功した』って言える状況ではありません!」

浩志「むしろドイツはエネルギー政策に失敗しているのでは?外国製の安いソーラーパネルが大量に輸入され、国内のソーラーパネルメーカーが壊滅的な打撃を受けています。国益が犠牲になるのは必須です。日本もメガソーラーを推進すれば必ずドイツの二の舞になります。日本は世界第三位の地熱大国なのだから太陽光発電よりも地熱発電に舵を切るべきです!」

大泉「ならば水力発電と地熱発電を原子力の代替エネルギーにすれば原発は0にできる!」

浩志「日本では地熱発電を初めとした自然エネルギーの開発はまだまだ未成熟であり、自然エネルギー開発にも膨大な電力が必要です。ならば原発で電力を補いつつ、自然エネルギー発電の開発を随時進めていくべきです。」

ロザ「地熱発電・水力発電と原子力発電の両立が日本の電源のベストミックスです。」

浩志「『原子力or自然エネルギー』の二択ではなく、『原子力&自然エネルギー』の両立が実現すべき目標なのです。」

ガヤA「BUUUUUUUU!!!!」

ガヤB「ファック・ユー!」


 原発に反対するガヤからブーイングとヤジが飛んだ。


浩志「そもそもドイツ以外の外国のエネルギー政策についてなぜ目を向けようとしないのですか。『原子力&自然エネルギー』の両立・共存が国際社会のスタンダードです。脱原発と言うのは世界的に見ても国際社会に逆行しています。」

三留木「原発依存こそが国際社会に逆行している。」

浩志「いいえ、火力依存回帰ありきの脱原発論こそが国際社会に逆行しています。原発推進によって世界をリードしようとしているのは中国です。2020年に原発設備容量を現在の3倍近い5800万kwまで引き上げ、3000万kw分の原発を着工済みにしようと中国は掲げています。それにより、中国の習国家主席はアメリカのオバマ大統領との会談で『30年ごろまでに非化石燃料の利用率を約20%まで引き上げる』とも宣言しています。これが国際スタンダードです。」

大泉「原発依存回帰で老朽化する原発を稼働させ続けようと言うのは暴挙としか言いようがない。」

浩志「いえいえ。元々日本の原発依存度は2009年の時点でたったの3割未満です。これでは、元から原発依存が高いとは言えません。それに、アメリカでは76基もの原発が既に60年までの運転延長を認められています。そして約30基もの原発が40年を超えて稼働しています。原発は40年では老朽しているとは言えない。それが国際スタンダードです。」

ロザ「アメリカでも中国でもフランスでもロシアでも韓国でも原発は推進されてます。脱原発こそが国際社会から乖離しているのです。」

大泉「核のごみの最終処分場の目処も立たないのに原発を稼働させるのは暴挙だ。」

浩志「核のごみの最終処分場が決まっていない事を理由に原発を廃絶しようという意見は杜撰だとしか言いようがない。核のごみの処分法は技術的にも学術的にも既に確立されています。」

大泉「あなたは核のごみの最終処分場の目処をつけられるとでも言うのか?どこの住民も反対するに決まっている。核のごみの最終処分場など誰も一つも見つける事は出来ない。」

浩志「技術的には核のごみの最終処分の安全性は確立されています。科学的根拠に基づかない反知性主義的な感情論で核のごみの最終処分場が反対されている現状が理不尽なだけです。」

ロザ「科学的根拠に基づいて安全性が保障されてる核のごみの最終処分場を科学的な根拠に基づかないエモーショナルな杞憂だけで反対するのは非科学的でおかしいわ。そういうエモーショナルな感情論に対して論理的に反論して説得しようとするのが政治家じゃありません?」

浩志「そもそも今ある原発を停止させ続けようが廃炉にしようが核のごみは排出されますよね?今すぐ全ての原発を廃絶し核のごみに変えろとでもいうのですか?」

大泉「中間貯蔵施設を造ればいい。」

浩志「それはただの問題の先送りに過ぎない。原発を無くそうが停止させようが核のごみの最終処分場は最終的には必要になりますよね?」

三留木「政府の枢軸に巣食うエゴイストが原発利権のために原発にしがみついている。」

ロザ「まぁ!」

ガヤC「そーだ!そうだ!ひっこめエゴイスト!」

ガヤ達Ⅰ「エゴイスト!!エゴイスト!!エゴイスト!!エゴイスト!!!」


 原発に反対するガヤ達からエゴイストコールが鳴った。


浩志「今度は、レッテル貼りですか。むしろ、脱原発利権ために良心を売り渡しているメディアや文化人・政治家こそがエゴイスト集団なのでは?」

三留木「なぜそうなるんだ?!」

ロザ「あらまっ、おとぼけになって!」

浩志「ガス会社や石油会社等の利権に巣食うメディアや文化人・政治家が脱原発を推進している。実際に複数のガス会社から『原発停止でオール電化住宅が見直されてきて助かっている』という裏付け証言を受けています。そうした脱原発利権に目が眩んで地球益を犠牲にしているメディアや文化人・政治家こそがエゴイストであると言っても過言ではないでしょう。」

ロザ「そうよ!地球温暖化が進めば地球益が損なわれるわ。自分たちの事しか考えてない自己中心的な人達が脱原発って言う地球温暖化政策を進めてるのです!」

三留木「二酸化炭素が地球温暖化を引き起こすという報告には否定的な学者も多い。」

浩志「しかし、それは国際スタンダードではない。国際社会では二酸化炭素の増加が地球温暖化を巻き起こしているという見方が不偏的です。現に国連世界気象機関は2014年5月26日に『大気中のCO2濃度が史上最高を更新し、4月は北半球で400pmを超える』と発表しており、『化石燃料の燃焼が温室効果ガスの増加が続いている原因だというさまざまな証拠を補強するものだ』と述べています。それが国際スタンダードです。」

ロザ「それに化石燃料の燃焼によって生じる問題は地球温暖化だけじゃありません!」

浩志「その通り。化石燃料の燃焼時には、二酸化炭素の他に硫黄酸化物や窒素酸化物も排出され、大気を汚染するのです。メディアは東日本大震災後、不自然なまでに地球温暖化以外の環境破壊・環境汚染問題を取り上げなくなりましたが、化石燃料依存で問題になるのは地球温暖化だけではないのです!硫黄酸化物や窒素酸化物による大気汚染・酸性雨、土壌汚染や水質汚染が起きる事を無視してはならない。」

大泉「原発事故が起きれば大地も水も放射線で汚染される!」

浩志「それはメルトダウンが起きたら前提の話でしょう?化石燃料依存は事故など起きなくとも大気や水質を汚染し続ける。それに原発事故をいかにして防ぐかが人類の科学力だ。」

ロザ「原発が稼働したらメルトダウンまっしぐらなんて極端なバッシングだわ!」

浩志「『原発事故=メルトダウン』という思い込みから卒業すべきだ。そもそも、『事故=被害』というのが大きな勘違いだ。事故が起きたからと言って被害が出るとは限らない。東日本大震災の福島第一原発事故以前から元々原発事故は起きていた。しかし、それまでの原発事故では深刻な被害は出ていなかった。事故が起きたからと言って被害が出るとは限らないからだ。そして、初めて過酷な被害が出たのが東日本大震災です。」

ロザ「飛行機がエンジントラブルを起こしても墜落するとは限らないのと一緒ですね。飛行機がちょっとしたエンジントラブルを起こしても無事に予定通りの運行をするっていう事はよくありますものね。」

三留木「飛行機と原発を一緒にしていいのか?原発事故は甚大な被害を齎す。」

ロザ「ですから、原発事故が起きたからといって被害が出るわけじゃあないんですって!」

浩志「それに飛行機だって墜落すれば甚大な被害が出ますよ?乗員乗客は死傷するし、墜落する場所によっては市街地の人間も多く巻添えになる。だからこそテロにも利用されるのです。」

ガヤ1「そーだ!そーだ!福島第一原発事故では死者は出ていないぞ!飛行機の墜落事故の方がよっぽど危険じゃないか!」


 今度は原発に賛成するガヤからヤジが飛んだ。


ガヤD「飛行機と原発を一緒にするな!!」

ガヤ2「事故が起きれば危険なのは飛行機だって同じだ!」

ガヤA「BUUUUUUUUUUUU!!!!」

ガヤ2「飛行機は飛ぶ凶器だ!飛行機が良くて原発が駄目だと言うのはダブスタだ!」

大泉「福島第一原発事故で死者は出ていない。それは確かに事実だ。しかし、甲状腺がんの人が急増している。」

浩志「福島第一原発事故と甲状腺がんとの因果関係を多くの学者や専門家が否定しています。」

ロザ「科学的根拠もなく悪戯に不安を煽るのはただ風評被害をまき散らすだけですね。」

浩志「原発の安全性・安全対策を争点にしようとせずに、杞憂や憶測だけで不安を煽る手口にはもううんざりです。」

大泉「原発に執着せずに、原発を即時0と決める事がまず大事だ。」

浩志「原発を即時に無くそうとすれば国内で原子力技術者も生まれ無くなるため、結局今ある原発を管理する事も廃炉する事も不可能になるだけです。原子力発電を即時に無くそうとすると言う事は原子力の技術者育成もなくなると言う事ですからな。」

ロザ「国内で原子力技術が衰退すれば技術者や学生たちは海外の原子力事業に逃げるでしょう。また外国に日本の技術者を流出させたいのですか?また国内の人材流出って言う過ちを繰り返したいのですか?」

浩志「無責任に『即時に原発0』と決めれば、国内の原子力技術者は居なくなり、廃炉や原発の管理は海外に依存する事になる。国益を損なう指針だ。」

ロザ「原発が無くなっても日本はやってけるって言うのが楽観的理想論だわ。原油の大量輸入で貿易赤字が膨れ上がって日本経済は大きなダメージを受けてるのよ。原発停止で原油輸出国に足元を見られて高値で原油を大量に輸入しないといけなくなってる原因を作ってる脱原発運動はただの国損行為よ!」

三留木「実は原発はコストが高い。」

浩志「仮に100歩譲って万が一、原発のコストが高くても地球温暖化や大気汚染・酸性雨等の環境問題を考えれば原発を使った方が良い。目先の事しか見ていない脱原発は未来の人類に果てない負担を背負わせる事になる。目先に事しか考えない火力依存回帰ありきの脱原発論こそ経済優先のエゴイズムでしかない。」

ガヤ達Ⅱ「エゴイスト!エゴイスト!!エゴイスト!!!エゴイスト!!!!」


 原発に賛成するガヤたちからエゴイストコールが沸いた。


浩志「メディアは日本のエネルギー自給率の低さを取り上げないが、日本のエネルギー自給率は日本の食糧自給率より遙かに低い!メディアは食糧自給率の低さは取り上げるのにエネルギー自給率の低さを一切報じない。だが、日本のエネルギー自給率の低さは深刻だ!」

ロザ「日本のエネルギー自給率が低いって言う深刻さを直視しないのは楽観的すぎるわ!」

大泉「福島第一原発の事故後でも、核のごみの最終処分場を見つけられると思っている方が楽観的すぎる!」

ロザ「原発の安全性と核のごみの処分方法は全く別の問題でしょう?エモーショナルな杞憂や憶測を払しょくして理論的・科学的に説得する事こそ政治の役割です!」

大泉「例え反対意見がエモーショナルな懸念だけであっても、福島第一原発事故後に説得するのは困難だ。」

浩志「原発の安全性と核のごみの処分方法は個々に考えるべき別々の問題であり、そして、核のごみを安全に処分する方法は技術的には確立されています。これは誰も反論ができない。」

三留木「どんなに理論上正しくても国民を納得させられなければ意味が無い。」

ロザ「民意が必ずしも正しいとは限らないわ!だからこそ民意が反対する事でも政治が説得する必要があるのよ!」

浩志「ただ民意に従うだけでは単なるポピュリズムだ。エモーショナルな民意は政府が論理的に説得する必要がある。」

ロザ「多数決や民意だけが全て正しいなんて事はないのです!60年安保が良い例だわ!」

浩志「それに、今のエモーショナルな民意は、原発停止で経営悪化した電力会社にとって代わって台頭してきたガス会社や石油会社と言った大手スポンサーの意向に従うメディアに扇動されているだけだ。」

ロザ「新聞やテレビだけが世論ではありません!マスコミが取り上げない声なき声や少数派の声にもきちんと耳を傾けるべきです!」

浩志「メディアは国民の代弁者ではない!メディアは国民を導く先導者ではなく、国民を煽る扇動者だ!」

ロザ「それに先の都知事選挙でも脱原発だけが民意じゃないって事が、はっきり表れたのではありません?」

大泉「マスコミ各社の世論調査では、東京都知事を選ぶ関心事として原発問題は第3位だった。都知事選挙で負けはしたが、それだけ脱原発を望む人が多かった証拠だ。」

浩志「なぜ原発に関心があると答えた人が全て脱原発を望んでいる人だと言い切れるのですか?都知事選で原発を第一争点として考えていた人の中には原発推進者も多くいたはず。だからこそ、原発の関心が高い中、原発を推進している現与党が支持する候補が選挙で圧勝した。違いますか?」

三留木「現都知事の後ろ盾となった与党は原発を推進していても、現都知事自体は原発推進者ではない。」

浩志「確かに、現都知事は将来的な原発依存脱却を掲げています。しかし、原発0か原発推進かが争点になった結果、原発0を掲げた候補が無残に惨敗したのは事実です。選挙の結果を真摯に受け止めるべきでは?」

大泉「選挙は必ずしも正しい方が勝つとは限らない。」

浩志「確かにその通りです。ですが大泉氏は総理時代、選挙結果に物を言わせて、郵政民営化を行いました。その信念にブレが無いのであれば、選挙結果を受け入れるべきです。」

ロザ「原発稼働・推進を望む多くの民意がある事も改めて直視し、エネルギー政策を議論するべきです。」

浩志「僕の取材では原発のある地元住民のほぼ全てが原発の稼働・存続を望んでいました。しかし、メディアはそれを取り上げません。」

三留木「しかし、脱原発を主張するデモが各地で起きている。声なき声よりも声を上げる声を重要視するべきなのでは?」

浩志「声だけでかい意見を参考にするのはナンセンスです。数より質を重視すべきです。」

ロザ「そうよね~。声だけ大きくても内容が正しくなきゃ意味ないわよね~。」

浩志「反原発デモは貧困層による単なるヘイトスピーチです。反原発デモの声は多くはただスローガンを唱えるだけか誹謗中傷・罵詈罵声などの怒号だ。そういったデモで科学的根拠が述べられる事は少ない。将来に展望できない困窮層が脱原発というアイデンティティーを見つけて不安のはけ口にしている。」

三留木「それこそただのレッテル貼りだ!」

浩志「裏付け取材は行っています。実際に反原発運動に参加していた若者に取材した所『すっきりした。かなり不満が溜まっていたんだな』と言っていました。反原発デモをはけ口にしている何よりの証拠です。困窮層が原発という憎悪のエンブレムに矛先を向けて電力会社に対してヘイトスピーチを行っているのです。」

大泉「脱原発デモを行っている全ての人がそう言う訳ではない。」

浩志「確かに全ての人がそうだとは言い切りませんが、そういう人が多いのは事実です。歪んだ正義感の暴走が反原発デモという独善的な反知性主義に結びついているのです。」

ロザ「60年安保の時のデモもそうでした。多くは歪んだ正義感の暴走で、反知性主義的なデモを行ってました。でも、どうでしょう?60年安保で反対デモを行ってた人達の意見が通らなかったからこそ今の日本があるんじゃありません?」


 ロザは自慢の長いサラサラヘアーを大きく掻き揚げた。


浩志「デモは議論ではない。むしろ、議論を無視して一方的に主張を行うのがデモだ。一方的なコミュニケートを行っているだけで独善的です。デモは議論やコミュニケーションを交そうとしない。だから正しい判断ができない・間違った判断でも気が付かない。」

ロザ「60年安保の時行われたデモも結局は間違った主張でした。だけれど、当時はデモを行ってる人は誰も気が付きませんでした。独善的な正義感が暴走して無意識のうちに反知性主義に走り、論理的思考も論争も行わなかったのです。」

浩志「60年安保の時は理論的には改定した方が正しかった。だが、そのロジックに耳を貸さず、エモーショナルな扇動を行った。その状況は今の反原発デモに似ている。」

大泉「60年安保の改定は正しかったが、現在の原子力政策は間違っている。原発は即時に0にすべきだ。」

浩志「原発の安全性・安全対策を一切語らず、原発の存廃の是非だけ決めようとするのは反知性主義だ。なぜ原発0ありきで、原発の安全性を一切議論しようとしないのか。原発の安全性をしっかり議論し、福島第一原発事故の教訓とノウハウを活かして、後世や国際社会と共有するべきです。」

ロザ「原発の存廃の是非だけが争点にされて、肝心の原発の安全性の議論が深まってないわ。原発の是非だけを争点にしようって言う空気が、原発の安全性の議論を妨げてるんだわ。」

浩志「原発0という極論によって原発の安全性が争点にされなくなり、原発事故の被害を防ぐための議論をかえって妨げてしまっている。これでは本末転倒だ。『念の過ぐるは無念』という言葉の悪い例だ。」

ロザ「原発の安全性を議論しない内に、原発の存廃だけを争点にするのは稚拙です!」

浩志「ひょっとして原発0の是非だけを争点にする事で、意図的に原発の安全性を議論させないようにしているのでは?なにしろ、原発の安全性を議論されると原発が安全なものである事がばれてしまうからな!」

三留木「福島第一原発事故で原発が危険な物であることは証明されている。」

浩志「福島第一原発事故は原発の危険性を証明するものではない。そもそも三留木氏はチェルノブイリ原発事故後も原発を推進する活動を行っていたではありませんか。」

三留木「それは旧ソ連の原発と日本の原発の型や構造が違ったからだ。」

浩志「その通り!そもそも原子力発電と一口に言っても、全ての原子力発電が福島第一原発と同じ構造な訳ではないのです。チェルノブイリで原発事故が起きた時は『構造が違う』と散々言ってきたのに、福島の原発事故が起きた時はなぜ『構造が違う』と言わないのですか。福島第一原発は沸騰水型軽水炉(BWR)であり、それと同じ型の原発は全国に29基しかない!チェルノブイリ原発事故の時に構造が違うから安全だと言われたように、福島第一原発と構造が違う原発は安全だと言える!」

三留木「ブイダブリューアール?」

ロザ「『ブイダブリューアール』じゃなくて『ビーダブリュアール』ですよ。」

浩志「一口に原発と言っても構造や種類の違いがあるのです。福島第一原発で事故が起きたからと言って一概に全ての原発が危険だとは言えない!原発は一枚岩ではない。多種多様な原発を一括りにして原発0と唱える事こそがそもそもの間違いだ!」

ロザ「福島第一原発と構造が違う原発も沢山あるのに、福島第一原発の事故を理由に全ての原発を非難するのは支離滅裂だわ!」

浩志「例えば飛行機で事故が起きたからと言って『脱飛行機』とか『飛行機即時0』とはならない。事故の理由を究明し、事故の経験と教訓を元に再発防止して安全確保を行いながら運用するのが普通だ。」

ガヤD「飛行機と原発を一緒にするなって言っているだろ!!」

ガヤ2「飛行機だって原発だって事故再発防止を徹底するのは当たり前だ!」

ガヤ3「安全性を議論する上では飛行機も原発も一緒だ!ちゃんと安全性を議論の争点にしろ!」

ガヤ4「安全性を議論せずに、スローガンだけの脱原発はおかしい!」

浩志「科学的根拠が無いスローガン政治にはうんざりです。」

大泉「福島第一原発の事故の収集もついて居ないのに原発を運用する事はできない!」

三留木「福島第一原発事故の惨状を忘れたのか。福島第一原発事故の惨状を目の当たりにしたら原発など恐ろしいだけだ。」

浩志「チェルノブイリ原発事故の惨状を目の当たりにしても、三留木氏は原発を推進し続けていましたよね?」

三留木「…………………。」

大泉「福島の被災者たちは今もなお苦しんでいるのに、それでも原発が安全だと言えるのか!」

ガヤC「この人でなし!」

ガヤD「そんなに原発を稼働したきゃ、福島第一原発の事故を収束させてみろよ!」

ガヤE「福島第一原発の事故の収集が未だにつかないんだぞ!」

浩志「原発の安全性と福島の原発事故の収束は個々に考えるべき別問題です。福島の被災者が苦労しているからと言って原発を止めろと言う理由にはならない。なぜなら、原発を止めたからといって原発事故の収集がつくわけじゃないからだ。」

ガヤ2「そうだ!福島の原発事故が収束しなくても原発の安全性は確保できる!」

ガヤ3「福島原発事故の収束がつかない事は原発の危険性を示すものではない!」

ガヤ1「そーだ!そーだ!例え福島第一原発事故で何人癌になっていようが、何人死んでいようが、他の原発の安全性を確保する上では全く問題ない事だ!!」

ガヤC「なに言っていやがる!この冷酷人間ども!」

浩志「僕は冷酷なのではなく冷徹なのですよ。センセーショナルな扇動や反知性主義的な感情論には、感情論抜きの論理的な反論が必要なのです。」

大泉「人間はマシーンではない。政治にも感情が必要だ。そのような非情な考えは納得できない。」

浩志「僕には感情が無いわけではなく、感情論が無いだけです。政治にも感情は必要ですが、政治には感情論は全く必要ない。」

三留木「人間は口で言うほど簡単に割り切れない。それではただの政治マシーンだ。」

浩志「感情論抜きの議論を行うためにはマシーンにだってなってみせますよ。人間はマシーンではないが、マシーンのようになる事は出来る。マシーンのように冷静に論理的に考える事はできる。」

三留木「例え原発が安全な物であっても、原発依存から脱却する事が理想的だ。」

浩志「『原発=悪』と言うレッテル貼りから卒業しなければならない。もし『原発=悪』なら世界中どこの国も原発を稼働させられない。だが、多くの国々が原発を稼働させている。日本も原発を稼働させるべきだ。」

三留木「海外でも原発に否定的な文化人は大勢いる。」

浩志「そもそも核の平和利用は学界的にも国際的にも認められています。」

ロザ「本当に脱原発を考えるなら国連に文句を言うべきです。日本は国際基準に基づいて核の平和利用をしてるだけなのですから。」

浩志「日本だけが原発を使ってはいけない理由などどこにもない。あなた方が言っているのは『脱原発』ではなく『奪原発』だ。日本から原発を奪おうと言うのが反原発運動の真髄だ。」


 浩志はフリップボードに《奪原発》と書いて皆に見せた。


大泉「それはレッテル貼りだ。」

浩志「ではなぜ日本でしか脱原発と言わないのか。原子力による発電は国際的にも認められている。その当然の権利を批判するならば国連にそう言うべきだ。」

大泉「それは各国の各々の問題だ。日本から原発を無くすと言うのが大事なんだ。」

浩志「それでは、やはり奪原発ではないですか。唯一の原爆被爆国の日本だからこそ核の本来あるべき姿を世界に示すべきではないのか?原子力発電こそが核の本来あるべき正しい使い方だ!それを奪う権限が誰にあるのか。」

ロザ「ガス会社や石油会社、そしてそれらから膨大な広告費を受けてるマスコミ各社が自分たちの利益のために日本から原発を奪おうって言う魂胆なのよね。」

浩志「あなた方がやっている事はかつて中国にいた買弁人そっくりだ。我田引水のために国損行為を平気で行っている。まさに買弁人だ。」

大泉「レッテルを貼り議論を矮小化させようとしている!」

浩志「福島第一原発の事故を槍玉に挙げてセンセーショナルに不安を煽り、議論を矮小化していたのはあなた方の方です!」

大泉「世論は脱原発を望んでいるし、今の世論では最終処分場の場所も見つけられない!」

浩志「それはガス会社・石油会社から広告費と言う合法賄賂を受け取っているメディアが奪原発に世論を扇動しているからですよ。原発が再稼動し、電力会社が再びガス会社や石油会社よりメディアに影響力を持つようになれば、メディアもまた原発を推進しだしますよ。『メディアの沙汰も金次第』です。電力会社がスポンサーとしてガス会社や石油会社以上に影響力を持つようになれば、メディアも再び原発を推進しだす。そして、メディアが原発を推進して、そのまま10年もすれば大半の人々が『原発は必要』と感じるでしょう。そうなれば最終処分場を決めるのはいとも容易い。」

ロザ「『メディアクラシー』ですね。」

浩志「吉田調書の誤報を記者の想像だけで嘯くメディアが存在するのに、メディア言う事をやすやすと鵜呑みにする方がおかしい。」

ロザ「奪原発のためなら何をしても良い、奪原発のためなら事実を捻じ曲げても良い。そういう空気が日本のマスコミにはあるんじゃないかしら?」

浩志「Don't asahi!(アサヒるな!)」

ガヤ2「Don't asahi! Don't asahi!! Don't asahi!!!」

ガヤ達Ⅱ「Don't♪Don't♪Don't♪Don't asahi~♪」


原発に賛成するガヤ達は音頭をとって歌いだした。


浩志「Don't asahi!No comprador!(買弁するな!)Don't alter dishonestly!(捏造するな!)」

ガヤ達Ⅱ「Do not asahi~♪No comprador♪No asahi♪Don't alter dishonestly♪Don't asahi~♪」


 ガヤ達は即興で歌詞を作って歌った。


浩志「民主主義ってこれだ!」


 原発に反対するガヤが反発した。


ガヤA「BUUUUUUUUUUU!!!!!」

ガヤB「ぶっ飛ばすぞー!!!!」

浩志「脅迫には屈さない!いくら脅されても真実は覆らない!」

スタッフが賛成派・反対派両方のガヤ達を静めた。

三留木「例え、原発を奪うためと言われても、日本に原発はいらない。」

大泉「脱原発は日本から原発を奪うためのものではない!」

浩志「例え脅迫されても、原発が安全だという事実を言い続けます!」

三留木「例え国益を犠牲にしてでも、日本に原発は要らない。電力が足りなければ日本の経済活動を縮小すれば良い。」

大泉「LEDを使う家庭・企業が増えている。国民や企業の省エネ化が進んでいるから原発が無くても電力は足りる。」

ロザ「原発を無くす事は地球益を犠牲にする事です!地球そのものを汚す選択です!」

三留木「多少環境を汚す火力発電を使ってでも原発は無くすべきだ。」

大泉「自然エネルギー発電を使えば環境は汚さない。」

MC「ここでお時間の方がやって参りました。」


 MCが議論を締めた。


MC「視聴者からの意見はこうなりました。」

 原発は必要が49%で原発反対が49%、その他が2%という結果になった。


 MCはまず必要派の意見を読み上げた。


MC「必要派の意見です。『日本から原発を奪おうという買弁人の言いなりになるべきではない。』」

大泉「単なるレッテル貼りだ。」

MC「『福島第一原発と違う型の原発だけでも再稼動するべきです。』」

三留木「原発は一つも必要ない。」

MC「『原子力と自然エネルギーの両立を目指してこそ、真のエコロジーな社会だ。』」

ロザ「その通りね。」


 MCは次に反対派の意見を読み上げた。


MC「反対派の意見です。『放射能が怖いので原発は必要ないと思います。』」

浩志「事故が起きなければ放射線は漏れないよ。」

MC「『原発が無くても日本はやっていけると思います。』」

浩志「地球はどうなるんだ。地球温暖化や大気汚染・酸性雨があるのに。」

MC「『国連に訴えて原発が無い世界を目指すべきだと思います。』」

浩志「ははは、ばかげている。」


 そして、番組が終了した。

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