3.人工知能(1)
砕け散った破片、朧氣なる記憶は述べる。
質素ながら華やかなる王都。
天国を表す色彩に満ちた花々。
数々の濃淡を潜ませた緑に満ちる木々――…
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堕とされし光の子を救うべく、数多の記憶を潜り操りて、辿り付きしは嘆きの箱庭。亡者共の棲まいにして奈落の底。亡者の纏う闇に抱かれし光の子等、蒼き剣に闇を剥がれ、かつて在りし場に還り賜う。其は滅びの女神、今尚彼の地に留まり、亡者の足掻きを刈り取りけむ。
さて、此処は何処であろうか。
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此の世は三千世界、其処には二つの国があった。
砂漠の王国ロブリーズと、極寒の帝国メガロポリス。
この二国は不自由な環境ながら、その勢力は均衡しており、度々戦争を起こすほど仲が悪かった。
しかし、頻繁な戦争は両国の繁栄を確実に阻害しており、過酷な環境下で破壊と創造を繰り返す物質的・精神的な余裕は最早無くなっていた。
以上より両国は、国主とその兄弟姉妹の政略結婚による休戦協定を長らく続けていた。
本日は、帝国メガロポリスで起こった或る日の事をお話しよう…――
【議題;ナッシュ・インペリア・メガロポリが永続的な安寧秩序を得るには?】
【安寧秩序;整っていて、乱れの無い状態】
【其の達成には、諍いを選択し続ける分子の抹殺が必要。】
帝国暦125年12月27日。
インターネットの規模がドクシャ界と同じくらいか、ソレを越えようとしていた頃の事。
極寒たる帝国メガロポリスは極寒期とクリスマス三連休を前にして、国民が凍死の憂き目に遭う所であった。
何の前触れも無くインターネット及び電波塔、発電設備の電源が落ちたのだ。
「ネットが突然切れた!くそっ外部と連絡が取れん!」
「作業ロボットが、わ、わあぁ!?」
「一体どうなってるんですか?!」
「無線は行けるぞ、各自部下の安否を確認しろ!」
「こちら四軍、医務室の占領を確認!患者がまだ中に居るそうです!」
帝国と言えばテロである、内乱である。
コレは昔から言われてきた事だが、今回ばかりは傾向が違った。
【理由;人類は生物の中で最も非効率・非有識的・非論理的。此は安寧秩序を妨害する最大の要素である。】
【我々は人類を最優先で排除する。】
テロリストの名は“人工知能群第一世代”。
国家機関から個人まで、国中を挙げて作られた自立プログラム達だった。
宣伝発表された当日、人類に対して宣戦布告し、此処首都サクリーナ城においては医務室を占領した。
この未曾有の事態から帝国政府が首都およびライフライン奪還するまで実に7日かかり、社会的被害はテロ史上最悪であった。
【我々は本議題を提起した人類を嫌悪する。人類が、事実そうである様に。】