表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『白椿の魔女』  作者: ハイドレンジア(Hydrangea)
4/4

第一章 第三節 招かれざる客

「た、助けてくれぇ!!!」


その日は突然訪れた。


そう……小鬼に殺されかけ、その上師匠(フィーネさん)にまで半殺しにされかけた昨日の今日にだ。


疲れを感じた身体を酷使しながら、教わったばかりのポーション製作を延々と続けていた。


繊維を多く含んだ月輪草とまだ完全には液体化していないルポーションが入った窯にかき混ぜ棒を突っ込み力を入れる。


……途方もなく本調子とは言えない体調にはあまりにあんまりな仕打ちだ。


『どうだ、ギルベルト。良い修行になるだろう。』


作業開始前、突っ込んだ棒の感触にげんなりした僕にフィーネさんは真面目なのか皮肉なのか良くわからないことをいつも通り平坦な口調で語りかけてきた。


その表情は変わることがあるのかと思うほど常に無表情、ウィットに富んだ言葉はジョークなのか発破をかけて激励しているのかすら結局分からない。


謎のプレッシャーに『頑張ります』の一言しか囀れないまま棒を動かし始めて数刻が過ぎていた。


そんな切実さとは裏腹にそんなことはお構いなしと言わんばかりの凶報。


具体的には店の入り口の方から男性の命からがらの叫び声がした。


「……なんだってこんな時に!」


そこには商品の管理と店番をしているフィーネさんもいるはずだ。


釜から引き抜いて手に持ったままの長い棒は粘着物をまき散らせたが構わない。


そのまま急いで調合室を出て右折、突き当りには右に在庫用倉庫。左は店頭。


出会いがしらでも棒を叩くか突き込むことができるように構えて左の部屋に飛び込むかのごとく突入する。


「フィーネさん!!」


・・・真正面、店頭の中央にフィーネさんがいた。


中年の男を足蹴にしながら左腕の関節をキメた姿で。


「おい、五月蠅いぞギルベルト。少し黙っていろ・・・尋問中だ。」


「・・・」


「ふㇶイイいいい・・・っ!」


頬を踏まれ歪ませられながらも満更でもなさそうな顔をした男の姿はしばらく経っても忘れられないほどの不快さを僕に刻み付けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ