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第8話 ハウンドの最期

残虐描写が少しあります。


ようやく逃げ込んだマキシリアン様が治める辺境の地。

なんとか受け入れて貰う為に私はルドルフと屋敷を訪ねた。


「この役立たずが!」


「な!」


屋敷奥の別室に案内された私にマキシリアンが投げたグラスが襲う。

額から血が流れ視界を赤く染めた。


「何だその顔は?

文句があるなら貴様を王国に差し出しても構わんのだぞ」


「いいえ...それだけは...」


屈辱に堪えながら流れる血をハンカチで拭い、土下座をする。

悔しいがここを追い出されたら私には行くところが無い。


治めていた領地で一揆を起こされ、僅かな路銀しか持てないまま逃げ出した。

それも全て使い果たし、私にはもう何も残されていない。


「ルドルフ、貴様の主人は全くの無能だな」


嘲りながらマキシリアンが脇腹を蹴りあげる。

肥満体から繰り出された蹴りはにぶい、だが避ける事はせずおとなしく受ける。

...意外と強い、息が出来ない。


「ルドルフ...助けてくれ」


隣で私を見るルドルフにすがりついた。


「離して下さい」


「ル、ルドルフ?」


「その手を離せ寝取り公爵が!」


「ぐわ!」


ルドルフまでもが腹を蹴りあげる。

比べ物にならない鋭い衝撃に胃液が床を濡らした。


「女1人満足に抱けない情けない奴が」


「な?」


「ルドルフ、こいつは所詮は捨て駒よ、役に立たなかったがな」


「全くです」


ルドルフとマキシリアンは笑い続ける。

何故奴等は対等に話せるのだ?


「ルドルフ、貴様は...」


「ようやく気づいたか、ルドルフは私の命令で貴様の屋敷に居たのだ」


「何だと?」


「マキシリアン様、あなたの命令ではありません、帝国の命令です」


「まあどちらでも良いではないか」


ルドルフが帝国の?

それでは私が今までして来た事は?


「ルドルフ!!」


「やかましい!」


ルドルフに掴み掛かるが素早い動きで投げ飛ばされ床に叩きつけられた。


「戦い方1つ知らぬ屑め!」


息が詰まり動けない私にルドルフの蹴りが続く。


「死んだか?」


「意識を失っただけでしょう」


...気絶した振りをしよう。

これ以上やられては本当に死んでしまう...


「チューリス家からの反乱は失敗したがヒューゴを潰す事は成功したから、こいつも少しは役に立たっな」


「忌々しい治癒師め。10年前の恨み、忘れぬぞ」


...10年前の恨み?帝国との戦争の事か?

ヒューゴは何をしたのだ?

奴は単なる治癒師ではないのか?


「今回はヒューゴも帝国内で悪さも出来んさ。

それでは行くか」


「そうですな、そろそろ我が方(帝国軍)もこちらに来る頃です」


我が方とは帝国軍の事か?

何故こんな辺境の地に来るのだ?

帝国が王国に侵攻するのか!?


「マキシリアン様、わ、私も」


王国に捕まれば間違いなく処刑されてしまう。

帝国に亡命するしか道が残されていない。


「聞いていたのか...」


「最後まで馬鹿ですな」


ルドルフ薄い笑みを浮かべ、マキシリアンが剣に手を掛けた。


「え?」


這いつくばる私の背中に何かが当たる。

まさか...


「死ぬがよい」


「止めろ!」


必死で逃げるが身体が満足に動かない。


「ふん!」


「ぐわ!」


背中を貫く痛み、

私の胸に血だらけの剣先が見えた。


「お見事」


「その剣はくれてやる。駄賃代わりだ」


そう言い残し2人は部屋から出ていく。

マキシリアンの剣は急所を外れた様だ。

しかし痛みと出血に動けない。


「一足遅かったか」


しばらくすると1人の女が部屋に入ってきた。

この聞き覚えのある声は。


(...キャリー?)


それは冒険者の姿に身を包んだキャリーの姿。


(何故此処に?)


そんな事は良い、


(...助けてくれ)


もう声は出なかった。

キャリーは無言で私の身体を見た。


「手遅れね、王国に貴様を差し出せたら少しは役に立ったのに...」


(何だと?)


「この剣を引き抜けば直ぐに死ねるわ。

妻の手で楽にしてあげようか?」


(や、止めろ!)


キャリーは背中に刺さったままの剣に手を掛けた。


「安心して、全て終わったら私も逝くから、反逆者の妻、卑怯者の娘としてね」


(卑怯者の娘?何の事だ?)


「さようなら」


キャリーはそう言うと剣を引き抜いた。

途端に胸から吹き出す私の血...


無言で立ち去るキャリーの背中を見ながら私の意識は途絶えた。


...永遠に。



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[気になる点] 表題は「ハウンドの最後」ではなく「…最期」が適切ではありませんか。
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